MGCから学ぶ当日のコンディションに合わせた走り方

MGCが行われ、多くのランナーが手に汗握る展開に盛り上がったことと思います。レース結果については、多くのメディアが取り上げていますので、そちらにお任せするとして、ここではわたしたち市民ランナーが学ぶべきことをお話していきます。

テーマになるのはやはり「設楽選手の飛び出し」です。

MGCというのは初めての試みであり、どう走るのが正解なのかは誰にもわからない状態にありました。そのなかで設楽選手は「逃げ」を選びました。これに関しては作戦ですので、結果論だけで「間違っていた」というわけにはいきません。

ただ、結果から私たちが学ぶことがあります。今回のレースをどう捉えて、自分のレースに活かすべきかについて考えてきましょう。

気温が高い日にはスピードを落とす

RUNNING STREET 365のコラムでも何度かお伝えしていますが、夏レースや秋レースの気温が高いときには、冬レースと同じスピードで走れるなんてことは絶対にありません。

マラソンのベストコンディションは10℃前後です。MGCはスタート時点ですでに25℃の気温がありました。気温が高いということは、それだけ体を冷やしにくくなります。

10℃の空気と25℃の空気のどちらが体を冷やせるかを考えたとき、10℃の空気のほうが冷やせるという理屈は小学生でも分かるかと思います。体が冷やせないので、体温が上昇していき、それが心拍数の上昇に繋がります。

人間はそれぞれに最大心拍数というものがあり、マラソンを走るときに最適な心拍数というものもあります。最大心拍数の70〜80%がそれにあたり、例えば最大心拍数が190の人なら、133〜152ということになります。

仮に152が理想の心拍数だったとしましょう。気温が10℃のときにキロ3分で心拍数152に達するとしたなら、気温が25℃なら当然キロ3分よりも、遅いスピードで心拍数が152に達します。

これは生理現象ですので、設楽選手のように気温が高いのにキロ3分で飛び出したら、当然理想の心拍数を超えてしまって、後半に必ず失速します。

だから、気温が高いレースでは自己ベストのペースよりも、遅いペースで走り始める必要があります。今回はスローペースと言われていましたが、あれは数字だけ見ればスローペースですが、25〜30℃の気温においてはベストのペースだったわけです。

ただ、トップの選手にとってのベストなペースであり、フルマラソンが2時間10分台の選手にはオーバーペースです。でも出せないスピードではないから、ついてくことができて集団になってしまいました。

設楽選手だけがオーバーペースだと思われがちですが、結局最後に残った3人以外はあの集団のペースでもオーバーペースだったわけです。もっとも一発勝負なので、ついていくという選択肢しかなかったわけですが。

私たち市民ランナーが学ばなければいけないのは、気温はその日のペースに大きく影響するということです。私たちは過去のレースから目標タイムを決めて、その日のペースを計算するわけですが、その過程でレースコンディションが無視されがちです。

その日のために練習を積み重ねてきたのに、記録が出ないのを受け入れてペースを落とすのは勇気のいることです。でも、それをできるのが大人の走りであり、マラソンを走る上で求められる適応力ということになります。

マラソンは自己ベスト更新を狙うスポーツではない

マラソンにおいてタイムというのは、最も分かりやすい評価基準になります。フルマラソンを3時間と3時間10分とでは、優れているのはもちろん3時間です。では、3時間で走ったのが東京マラソンで、3時間10分が北海道マラソンならどうでしょう?

気温が10℃前後になる東京マラソンと、気温が30℃を超えることもある北海道マラソンでのレース結果を、単純に比較することに意味はありません。同じ東京マラソンでも2018年と2019年はコンディションが違います。

ですので、マラソンにおいてタイムというのは結果を表したものであり、それ以上でもそれ以下でもありません。目標として、過去の自分を超えていくために「自己ベスト更新」を掲げるのは分かりやすくていいことです。

でも、それと実際に走るレースの設定タイムに直接の関係はありません。マラソンは自己ベスト更新を狙って走るスポーツではなく、その日のコンディションの中でベストを尽くすスポーツです。

この考え方ができるかどうか。

それによって、マラソンとの向き合い方がまったく違ったものになります。自己ベスト更新ばかり頭にあると、どこかで必ず行き止まりになります。そうではなく、自分の想定通りの走りができたことを評価するようになれば、マラソンは生涯スポーツとして楽しめます。

そして、意外とこの考え方を受け入れたほうが、自己ベスト更新に近づけたりするものです。根拠のないタイム設定ではなく、自分の積み重ねてきた練習やその日のコンディションによって決めたタイム設定で走れば、後半の失速を防ぐこともできます。

もっともマラソンは失敗も含めて学びであり、そこから何を得るのかが大事だったりします。レースで失敗をしても、同じミスを繰り返さなければいいだけです。

だから、後半の失速を繰り返しているというランナーさんは、今回のMGCで起きたことを、しっかりと自分なりに消化してみてください。前半に飛ばして後半に失速の典型的な例を私たちは目にしました。

日本を代表するレベルでも、上手く走るのは難しいのがマラソンです。

まずは目標とする大会が決まったら、現状から自分なりの目標設定を立ててトレーニングを積み重ねること。そして、レースが近づいてきたら、トレーニングの進捗に合わせて目標の微調整を行ってトレーニングにフィードバックする。

そして、最終的に天気予報などから、コンディションを考えたペース設定を考えて、それに合わせてベストを尽くす。そういう大人のマラソンができるようになると、マラソンをもっと深く楽しめるようになるはずです。