世界のウルトラマラソン界のレジェンド、スコット・ジュレクが来日しています。
スコット・ジュレクはアメリカでもっとも難しいと言われるアパラチアントレイル3500kmを世界記録となる46日8時間7分で走破したばかりです。その走破を記念して彼の所属しているシューズメーカーBROOKS協賛で渋谷にてトークショーが行われました。その内容を簡単にレポートしたいと思います。
走破と言ってもこれはレースではありません。FKT(Fastest Known Time)と言っていまアメリカで流行っている新しい形のランニングです。誰もやったことがないことではなく、誰かがすでに走った決めれたルートを誰よりも早く駆け抜けることを目的として、それぞれが自分のタイミングで走り始めます。
忙しい日本のランナーの間でも流行りそうですね。誰が一番早く東海道53次を走破できるかとか。
そのアパラチアントレイルを従来の記録よりも3時間早く走ったのですが、映像を見せてもらったところ、まず間違いなくもっと早く完走できる気がします。彼のファンと一緒に走ったりしている時間もあるので、すべてが自分のペースというわけではなかったかと本人も言っています。
それに加え、スタート直後の一週間で膝の調子が悪くなり、それを庇うことで逆足の太ももも故障。完走は無理かと思ったそうですが、それらの痛みは走りながら治しました。彼は「リビルド」という表現を使っていました。痛みをテクニックで回避できないかといろいろ調整しながら走ったという話はすべてのウルトラランナーにとって参考になります。
最初のうちは1日4,5時間睡眠確保できていたが、徐々に睡眠時間が減らさざるを得なくなり最終日は1時間の睡眠でスタート。この眠れない状態が一番厳しかったと言っています。
そして彼は完全な菜食主義者、ヴィーガンでもあります。速く走るのに肉は必要ないどころか不要だと主張し、しかも結果を出しています。ただこの冒険(彼はレースではなく冒険と呼んでいた)では野菜そのものを食べることは少なかったようです。とにかく1日7000kcalを摂取しなければ収支が合わなくなるからです。
とにかくカロリーを摂取すること。彼はこれに比重をおいて46日と8時間7分を過ごしました。
それを支えたのが妻であるジェニーです。彼女はスコットが走っている間、バンを運転しサポートもするし、食事の準備も買い出しもする。とにかくハードな生活だったようです。バンにスコットを閉じ込めて戻ってしまおうかと思ったこともあったほど。
でも、そういうサポートが合ったからスコットも最後まで諦めずに走れきれたのだと言います。ジェニーだけでなく、仲間もそう、応援に来てくれた人もそう。彼は自分のためだけに走っているわけではなく、多くの人の夢や希望を背負いながらアパラチアントレイルを走り切ったのです。
質問に答えているスコットはほんとうにどこにでもいそうな、知らない人が見たら一般人にしか見えません。逆にサプライズで壇上に上がった石川弘樹さんはギラギラしてて、攻撃的なオーラのようなものがあったのと対照的です。ただそのギラギラしたオーラすら包み込んでしまうスコットの大きさは1日経ったいま思い出すと身震いするものがあります。
「自分は自分が思っている以上に強い」
彼が最後に私たちに送ってくれたメッセージです。これはスコット自身のことだけでなくあなたたちもそうなのだから、自分の限界を勝手に決めずに挑戦しなさいという思いも込められたものです。
彼が言葉にすると出来そうな気がしてくるのが不思議です。きっと会場に来たランナーのほとんどが彼に魔法をかけられ、それぞれが新たなる冒険を始めるのでしょう。
もしスコット・ジュレクをこれまで知らずに、興味が湧いたと言う人がいれば、まずは彼の著書『EAT&RUN』を読んでみてください。そして次回彼が来日するときはぜひトークショーに参加してみるといいですよ。あなたもスコットの魔法にかけられて冒険となるランを始めることになりますが。
完全菜食主義者にしてウルトラマラソンの王者スコット・ジュレクの強さの秘密がここにある。走ること、食べることをもっと追求したい人へ贈る1冊。
【楽天ブックスならいつでも送料無料】EAT&RUN [ スコット・ジュレク ]
amazonで購入