10月1日に東京臨海広域防災公園で開催された「クリールシューズトライアル2016」。小雨もぱらつく中での開催になりましたが、今年も個性豊かなシューズメーカーが集まり、思い思いにシューズトライアルを楽しんでいました。
今日は、その「クリールシューズトライアル2016」の内容をレポートします。
シューズトライアル参加メーカー
アルトラ | ブルックス | イノベイト | カルフ |
MBT | メレル | ニュートン | オン |
プーマ | レイドライト | セムコ | アンダーアーマー |
ビブラム | ヨネックス | ズート |
今年の「クリールシューズトライアル2016」にはアディダスや、ミズノといった昨年参加していた大手シューズメーカーは参加していません。
多くのランナーが、ナイキ、アディダス、アシックス、ミズノのランニングシューズを履いていることを考えると、大手が参加していないために参加を見合わせたランナーさんも多いのではないでしょうか。
それらのシューズは各メーカーのランステなどで試履できるので、わざわざシューズトライアルに参加するメリットがあまりないのかもしれません。
ただ、集まったランナーたちは「大手がないから新しい発見がある」と今回の参加メーカーで、特に初めて履くシューズを楽しんでいました。
今年のトレンドは安定感と体の構造の活用
すべてのメーカーのシューズを試すことができませんでしたが、4時間で24足履いた結果、感じたのはシューズに新しいムーブメントが起こっているということです。
ランニングシューズを履くことで膝を傷めるランナーが多く、裸足になれば膝の痛みから解放されるということで、裸足系シューズに注目が集まったのが数年前までのトレンドでした。
ところが、ビブラム社がアメリカで訴訟を受けたことを受けて、各メーカーが一気に裸足系シューズの販売から手を引きました。
一部のシューズメーカーはそれでもまだ裸足系シューズの開発販売を行っていましたが、多くのメーカーは違う角度から膝を守るシューズの開発を行ってきました。
今年はその開発結果が各社揃い踏みしたようで、足裏全体で安定した着地ができ、ランニングにより膝のネジレが発生しにくいシューズが増えています。
その中でもヨネックスは特に、「膝を守る」ことに注力し、セーフランSHR800XM/Lでは、シューズによって膝のブレを完全に押さえつけることに成功しています。
そしてもうひとつのトレンドは、地面を蹴って速く走るのではなく、体をいかにして上手に動かして速く走るのかを追求しているシューズが目立ちました。
わたしが試したシューズの中でソールにチップを付けていたのは、イノベイトのロードエクストリーム220とロードエクストリーム250だけでした。
大手メーカーのサブ3モデルは、もれなくソールにチップを配置していますが、新興勢力のシューズたちはシューズからチップを取り除き、人間の体の動きを最大限に活かすことで、推進力を生み出すことに成功しています。
このため、地面を蹴って走る必要がなくなるため、エネルギーロスを最小に抑えて走り、レース終盤に体力を温存することが可能になります。今年はそんな、速く走ろうとしなくてもスピードが出るシューズが目立っています。
ただし、それらはBOOSTのような不自然な加速ではなく、非常にナチュラルな加速になっているため、足への負担も少なくなっています。
クッションを意識したシューズも増加
インソールを柔らかくするのも、今年のトレンドのようでした。裸足系シューズで人気のあるイノベイトですら、今年のモデルはクッションを導入し、これまでのユーザーからは「イノベイトらしくない」という声も。
同じく裸足系シューズのアルトラのシューズもサブ4よりも遅いシューズは柔らかめのソールを採用して、着地時のショックをクッションで吸収しています。
これは上記の膝を守るということに関係しているのかもしれませんが、スピードランナーにしてみると、この柔らかさはなかなかの曲者で、スピードを出したくても力が地面に伝わらず、空振りするような感覚になってしまいます。
反対にゆっくり走るランナーにしてみると、このクッション性の高さが長く走ることに適したシューズとして受け入れられそうなことは容易に想像できます。
またフィット感を意識したシューズも多く、シューズは硬いものから柔らかく足を包み込むものが今後の主流になっていくのかもしれません。
ただし一定のトレンドはあるものの、そのアプローチ方向は各メーカーで違い、結果的にかなり個性的なシューズが増えている感じを受けました。
個々のシューズについて、気になったものが今後、個別にレポートしていきます。
シューズトライアルでシューズを選ぶという意味
多くのランナーが集まって入るものの、これだけのシューズを試履できるイベントですから、もっと参加者が殺到しても良さそうなものですが、実際のところ、非常に活気があるとは言えない参加人数でもありました。
実際にシューズを履いて好きなだけ走ることができるなんてこと、なかなかチャンスがありません。しかもシューズメーカーの開発を行っていた人や、シューズに対しての知識が高い人に直接話を聞け、指導を受けることもできます。
こんなシューズトライアルに、参加希望者が殺到しない現状。これは日本のランニング業界にとって、大きな問題のひとつです。
日本人のスマホのほとんどがiPhoneで、日本人のランニングシューズのほとんどがナイキかアディダス、アシックスというのは、日本特有の現象です。
ブランド品に弱いというか、ブランド品だから大丈夫・安心という思い込みが強すぎて、聞いたことのないようなメーカーのシューズなんて眼中にないというのが現実なのでしょう。
大手メーカーのシューズが悪いとは言いませんが、大手メーカーのシューズを店舗で試履して、数m歩いて「いい感じ」なんて判断してシューズを購入。
本当にそれでいいのでしょうか?
実際に走ってみて、体がどのような反応をするのかチェックしなくていいのでしょうか。正直、実際に走らずに購入するシューズはギャンブルのようなもの。
24足のシューズを試してみて、同じサブ3用シューズでもメーカーによって方向性がまったく違い、自分にあうシューズもあれば、あわないシューズもありました。どういうシューズが自分にあうかというのも、何足も一度に試履できるシューズトライアルだから気づけたりします。
できることなら、来年の「クリールシューズトライアル2017」では、もっと多くのランナーが参加してくれることを期待しています。
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