レビューのためにアディダスから提供いただいたアディダス「ADISTAR(アディスター)」。足慣らしにと10km走って決めました。「これを持って旅ランに出よう」と。私は自分の足で移動する旅ランをするのが好きで、国内のあちこちを走って旅しています。
どこがアディスターのイメージに合うだろうかと考えて、選んだのは四国の遍路道。ちょうど愛媛マラソンを兼ねての帰省の予定が入っており、実家のすぐ近くに遍路道が通っているのもあって、第50番札所繁多寺から第53番札所圓明寺までの約20kmを走ってみました。
ADISTAR(アディスター)は重さが武器になるLSD専用シューズ
まずADISTAR(アディスター)について、簡単にご紹介しておきます。アディスターはアディゼロとはまったく違ったコンセプトで開発された厚底シューズで、アディゼロの多くはスピードを出すことを前提にしているのでフォアフットを意識した作りになっていますが、アディスターは踵着地。
最近トレンドになりつつあるロッカー構造を採用しており、踵で着地して足裏を転がすようにして重心を前足部に移していく走り方に適した1足となっています。この構造を採用したことで、地面を蹴ることなく推進力を生み出せるようになりました。
ただし、地面を蹴ることがないのでスピードは出せません。ゆっくりペースでどこまでも走り続けられる。すなわちLSDに最適な1足となっています。その走りを支えるのが、ソフトで軽いREPETITORフォームを使ったベースに、より硬いREPETITOR +フォームを重ねた2層のミッドソールです。
これらの組み合わせと幅広形状によって、驚くほどの安定化を生み出します。幅広というのもあって、見た目がボテッとしていますが、見た目ほどには重たくなく、27cm片足で320g。提供いただいた25.5cmで実測値が299gでした。決して軽くはありませんが、実はこの重さも安定感を高めるのに役立っています。
さらにこの重みが振り子のように働き、走り出したらシューズの重みで勝手に足が動きます。重さが300g前後のシューズは重さが走るモチベーションを下げてしまいますが、アディスターは重たいから走れます。ただ重たくしただけでなく、徹底したチューニングを行ったであろうことが伝わってきます。
環境問題に力を入れているアディダスらしく、アッパーは50%以上がパーレイ・オーシャン・プラスチック製の糸、残りの50%がリサイクルポリエステル製の糸を採用。こだわりは女性と男性で分けた靴型。解剖学に基づいて制作されており、男女問わず優しいフィット感で足を包み込んでもらえます。
踵のスイートスポットで着地すれば前に進む
理屈はともかく、気になるのは実際に走った感覚ですよね。LSDに適した1足というのがADISTAR(アディスター)の特徴ということで、今回テストをしたのは四国の遍路道。もちろん遍路をすべて走るわけにもいきませんので、第50番札所繁多寺から第53番札所圓明寺までの約20kmの区間だけ。
まずは、いろいろな走り方をアディスターで試して見ました。その中でしっくりきたのが、ロッカー構造を活かした足裏で転がすような走り。これはシューズの形状を考えれば当然で、ソールが反っているわけですから、踵から着地してつま先に抜けるように走れば、気持ちのいいライド感を与えてくれます。
ただし、この走りだとスピードはそこまで出ません。私の場合はキロ5分30秒からキロ6分程度。LSDとしてはこれでもいいのですが、少しキレのある走りをしたいときには少し物足りません。そういうときに走り方を少し変えるだけで、キロ30秒程度上げることができるのがアディスターの面白いところ。
アディスターには踵部やや前方にスイートスポットがあり、そこから着地することで強い反発力を得られます。あとは反発力を活かして足裏を転がせば、普通に足裏を転がすよりもペースが上がる構造になっています。言葉で説明するのが少し難しいですね。
通常は踵から重心の前側で滑らかに着地。スピードを出したいときは重心よりやや後ろ側で、垂直方向から踵を押し付ける(落とす)ように着地。足裏を転がすのは同じです。この2つの走り方を使い分けることで、のんびりランもキビキビしたランも楽しめます。
圧倒的な安定感でトレイルでも快適に走れる
遍路道はすべてがアスファルトではなく、ちょっとしたトレイルになっている場所もあります。今回のコースでは第51番札所の石手寺から抜ける道がトレイルになっていて、積もった落ち葉を踏みながら走りました。ややテクニカルなコースですが、オーバースピードになりにくいので走りは快適。
薄底の軽量シューズだとついついスピードを出しすぎて、曲がりきれずに危ない思いをすることがありますが、ADISTAR(アディスター)は淡々と走れるので、コースアウトすることも息があがりすぎることもありません。グリップもかなりしっかり。
物理的にシューズが重たいので、階段がある場所ではもう少しストレスを感じるかと思ったのですが、フィット感が高くて追従性に優れているからか、思い通りにコントロールできたのは意外でした。里山程度のトレランなら問題なく走れそうな気がします。
鮮やかなブルーのシューズを砂や泥で汚したくはないのですが。ちなみに、アディスターのデザインは好みが分かれるかもしれません。アディゼロシリーズのような洗練さではなく、ボテッとしたボディはファッションアイテムのようでもあります。
原宿あたりに行けば、ストリートファッションを身にまとった若者がおしゃれに履きこなしてそうです。そう、アディスターのデザインから若々しさを感じるので、おじさんランナーとしては少し気後れ。これをタウンユースとしても違和感なく履ける、かっこいいおじさんになりたい……。
いつも使わない筋肉に刺激が入ってベースアップに
遍路道20kmとそこからプラス3km走って、トータル23kmのプチ旅ラン。途中で伊佐爾波神社の階段を駆け上がったり、道後温泉前のカフェでもぐもぐタイムをしたり。写真や動画も撮りながら5時間かけてのゆるランなのに、走り終えたときには足がガクガク。
シューズに合わせて普段とは違う走り方をしたのもありますが、いつもは使わない筋肉に刺激が入ったのでしょう。ゆっくりと長く走るということで、負荷のかかりかたが違うのも影響したのかもしれません。いずれにしてもトレーニングと考えれば好反応です。
使っていない筋肉に刺激が入って、そこが使えるようになったら走りの安定が期待できます。これまで使っていた大きな筋肉をサポートするわけですから、大きな筋肉が疲れにくくなって後半の失速を防げる可能性もあります。LSDが大事だということを感じた1日でした。
マラソンで結果を出すには、速く走る練習だけをすればいいというわけではなく、長く走り続けるというスキルも身につけなくてはいけません。アディスターはそのトレーニングに最適な1足。ライド感を楽しんでいるだけで、気がつけば長い距離を走れているので、単独でのロング走が苦手という人にもおすすめです。
結論:2022年の旅ランはADISTAR(アディスター)を連れて行く
コロナ禍になりマラソン大会がなくなったことで、旅ランをする機会が増えました。1日に20〜40kmを走って移動し、翌日もまた20〜40kmを走る。それもただ走るだけでなく観光もグルメも満喫することで、マラソン大会とは違った満足感を得られます。
ただ、そのときに「何を履くか」というのは難しい問題で、速く走れるシューズは不向きだというのが最近になって感じていたこと。そこに登場したのがADISTAR(アディスター)です。このシューズはランニングシューズなのに「速く走る」をバッサリと切り捨てています。
その代わり「長く走る」に特化。これはアディダスの新しい挑戦であり、ランナーへの提案でもあります。マラソン大会だけがランニングじゃない。自己ベスト更新をするだけがランニングじゃない。ゆっくりと長く景色を楽しみながら走ろう。そんなメッセージが聞こえてきそうです。
そして面白いことに、速さを追求しない走りを取り入れることが、結果的にマラソン大会でのタイムにつながります。急がば回れではありませんが、一見すると遠回りのように見えて実は近道になっているのがLSDというトレーニング。
でも、どうせ長くゆっくり走るなら旅ランはとてもおすすめです。ウルトラマラソンなどにも良さそうです。私は2022年の旅ランの相棒として全国各地を走ろうかと思います。その前にアディスターを普段履きできるファッションを身につけなくては。
価格 | 15,000円(税込) |
サイズ | メンズ:24.5-30.0cm レディース:22.0-26.0cm |
重量 | 320g/27.0cm |
カラー | メンズ ・コアブラック/フットウェアホワイト/グレーファイブ ・ブルーラッシュ/ターボ/レガシーインディゴ ・グレーシックス/シルバーメタリック/ターボ レディース ・グレーシックス/サンディーベージュメタリック/ヘイジースカイ ・ピンク×ペールブルー(アルペン・スポーツデポ限定) |
URL | メンズ:https://shop.adidas.jp/products/GX3000/ レディース:https://shop.adidas.jp/products/H01166/ |