普段はトレランのレースには出場しないのですが、年末に「第1回 Fun Trails Round 韋駄天 in 飯能」に招待していただいたのもあって、5年ぶりにトレランシューズを新調しました。せっかくなので大会スポンサーでもあるアディダスのトレランシューズということで「TERREX AGRAVIC 3」を購入。
トレランの世界では、アウトドアブランドのトレランシューズが人気で、アディダスのような大手スポーツブランドを選ぶ人は少数派。だからこそ、アディダスのトレランシューズってどうなの?と、ずっと気になっていたので、同じく購入を検討している人のために、ありなのかなしなのかロードをメインで走っているランナーの視点でレビューしていきます。
TERREX AGRAVIC 3は王道のトレランシューズ
今回は時間がなかったということもあり、Amazonで「TERREX AGRAVIC 3」を購入しました。デザインがかっこいい「TERREX AGRAVIC SPEED ULTRA」も気になったのですが、そちらはロングトレイル用でなおかつ予算オーバーということで断念しました。
Amazonから届いた「TERREX AGRAVIC 3」を手にしたファーストインプレッションは、「重くて硬い」でした。25.5cmで280gという重量のトレランシューズに対して「重い」とするのは、正しい評価なのかわかりませんが、最近のトレランシューズはロードシューズと変わらない重さのものも増えています。
ただ、重さよりも気になったのはソールの硬さ。「TERREX AGRAVIC 3」にはランニングシューズにも使われているLightstrikeミッドソールを採用していますが、ロードのシューズのようにねじって変形することもなく、これで本当に衝撃を吸収できるのだろうかと不安になりました。
ただ、正しくトレランシューズを作ろうとすると、こうなるんだろうなというのは理解できます。
まずアウトソールにはグリップが求められるので、どうしてもラグの分だけゴムを多めに使うことになります。それでいてトレランは路面がやわらかいので、ミッドソールを柔らかくしすぎると反応速度がワンテンポ遅れてしまいます。だから変形しにくい硬いミッドソールを採用しているのでしょう。
アディダスが作った王道のトレランシューズ。「TERREX AGRAVIC 3」はまさにそんなイメージのシューズに仕上がっていました。この表現をどう受け取るかは人によって違うかもしれませんが、私にとって「優等生」という評価がしっくりきます。
耐久性重視で長く使えるTERREX AGRAVIC 3
「TERREX AGRAVIC 3」を履いて近所のトレイルに向かいましたが、トレランそのものが数年ぶりで、山を走る感覚が久しぶりすぎたのですが、「山ってこんなにあたり前に走れるもの?」というのが、走り出して最初に感じたこと。
トレランシューズだからあたり前なのですが、とにかく足元が安定しています。落ち葉によって、かなりすべりやすい路面になっているはずなのに、アウトソールがしっかり地面を掴んでくれるので、安心して着地できます。これは実際のレースでも同様でした。
レース中に足がすべったのは、気を抜いていた1回だけ。落ち葉が敷き詰められた下り坂で、踵に重心を乗せて立ってしまい、「それはすべるだろう」とはっきりわかるような姿勢をとっていたので、「TERREX AGRAVIC 3」に問題があるわけではありません。
トレランシューズといえばビブラムソールが重宝されがちですが、Continental™ラバーアウトソールでもまったく問題ありません。ただ、トップレベルのトレイルランナーになると、このあたりの評価がどうなるのかはわかりません。
アウトソールのグリップ力が高いのもあって、強引に着地できてしまうのも、年に数回しかトレランをしない私にとって魅力的。本来は着地の技術などを磨いていくべきなのかもしれませんが、本格的にトレランをしているわけではないので、下りは重力を使ってガツガツ走りたい。
そんな要望ごと、Lightstrikeミッドソールが受け止めてくれるので、安心して着地できます。しかも着地した勢いを推進力に変えることもできるので、恐怖心がなければどんどん加速できてしまいます。
そして、さらに嬉しいのはアッパーの強度が強いこと。アッパーの強度はそのままトレランシューズの寿命にも影響する重要な要素です。トレイルですので、どうしても木の枝などがアッパーに引っ掛かりますが、それによってアッパーが破けてしまうようなことがありません。
ロードシューズなら簡単に穴が空いてしまうようなケースでも、アッパーはまったくの無傷。レース中も何度が「やらかした」というシーンがありましたが、バランスを崩すようなしっかりとした引っ掛かりでも、破けることはありませんでした。
トレランシューズならあたり前なのかもしれませんが、強度の高さはシューズの重さに影響するため、最近の軽量なトレランシューズだと、私のような技術のないランナーは心もとないというのが正直なところ。重いシューズはあまり好きではありませんが、この耐久性とのトレードオフなら快く受け入れます。
トレイルランニングを楽しみたい人におすすめの1足
結論としては「TERREX AGRAVIC 3はスタンダードなトレランシューズとして優秀」というのが、私の評価になります。尖ったところはなく、あたり前のようにトレイルを走ることができます。突き上げもありませんし、しっかりグリップもしてくれます。
そして、販売価格も1.3万円前後とお手頃になっているのも嬉しいところ。
最近のトレランシューズは2万円くらいするのがスタンダードになりつつあり、TERREX AGRAVIC 3も定価は税込み18,700円と決して安くありませんが、アディダスの公式サイトでも現在は約1.5万円。Amazonなら1.3万円程度で買えてしまいます。
アウトドアブランドのトレランシューズと比べると遊び心もなく、個性もあまりありませんが、トレイルを走るのが年数回ならまったく問題ありません。デザイン性も優れていて、ファッションアイテムによっては街履きシューズとしても使えてしまいます。
本気でトレランレースと向き合ったり、100kmを超えるようなロングトレイルを走ったりするなら、それに適した1足を選ぶことをおすすめしますが、ランニングのひとつとしてトレイルも楽しみたいという人には、価格とデザイン、性能のバランスが優れている「TERREX AGRAVIC 3」はかなり魅力的。
何よりも私はカラーリングがかなりお気に入りです。そして、トレイルをしっかり走れるシューズだとわかったので、2025年はもうちょっと山に走りに行くことになりそうです。そこでステップアップしたいと考えれば、もう少し軽いモデルを検討しますが、おそらく2〜3年は「TERREX AGRAVIC 3」で満足していると思います。
そういう意味でも「迷っているなら買い」というのが結論。あとはどれくらいトレランにハマるか次第ですが、トレイルランニングの入門シューズとしてはかなり優秀ですので、ワンランク上のトレランシューズは「TERREX AGRAVIC 3」を履き潰してから考えてみてはいかがでしょう。