
人類史上発のフルマラソン2時間切りをサポートするなど、勢いがずっと右肩上がりのアディダス。「HYPERBOOST EDGE」はそんなアディダスから発売された、異色のランニングシューズです。まるでバスケシューズやスニーカーのようなデザインでありながらも、弾む感覚で走れる軽量シューズ。
アディダスから「HYPERBOOST EDGE」を提供していただいたときに、「これはどうレビューすべきか」と悩みましたが、ちょうど北海道旅行の予定が入っており、このスニーカーのようなランニングシューズを旅の相棒として選ぶことにしました。
1日2万歩以上歩き、そして夕方や朝のスキマ時間にランニング。その結果、わかったことは「HYPERBOOST EDGE」は暮らしに馴染むランニングシューズだということです。
アディダスのDNAを受け継ぎつつも革新的なフィット感を実現

これまで「HYPERBOOST EDGE」のレビューを読んだことのある人は、その弾むような感覚について何度も目にしたことでしょう。確かに「HYPERBOOST EDGE」の特長は、クッション性と反発性の高さにあります。
でも、アディダスが大切にしてきたシューズ哲学がきちんとDNAとして引き継がれている。私はまずそのことを伝えなくてはと感じました。

最近のランニングシューズは、足の指の自由度を高くする傾向にあるのですが、アディダスのランニングシューズの多くは指先をアッパーで包み込んで固定することで、より高い出力を生み出す構造になっています。これはアディゼロでも同じで、好みが分かれる「アディダスらしさ」でもあります。
きっとトレンドに合わせた自由度の高いデザインも検討されたはずです。「それはアディダスではない」となったかどうかはわかりませんが、とにかくアディダスのランニングシューズを愛用してきた人にとって、「HYPERBOOST EDGE」はこんなデザインなのに紛れもなく「アディダス」です。

そして、旅のあいだずっと感じていたのは中足部からヒールにかけてのフィット感。ここはアディダスらしさというよりはこれまでのアディダスのランニングシューズにはなかった感覚です。いや、Adizero Adios Pro 4の「LIGHTLOCK」のように、肌に貼り付く感覚があります。
ただ「LIGHTLOCK」のように、存在しないかのような薄さではなく、厚みをしっかり感じます。なので、飛行機では脱いでしまいました。ただ、車やバス移動では脱ぎたくなるほどではありませんでした。涼しい北海道だったらなのかもしれません。

実際に成田空港に向かうまでは、シューズ内の蒸れが少しだけ気になります。秋から春にかけては快適さがありそうですが、夏の30℃を超えるような環境でのランニングだと、少し熱がこもってしまうのでストレスを感じるかもしれません。
それでも街を歩く私は、どう見てもどこにでもいる観光者であり、Tシャツライクなランニングウェアと長ズボンを履けば誰もランニング中とは思わないはずです。ランニング途中で美味しそうな回転寿司屋さんに入ったのですが、それができたのは「HYPERBOOST EDGE」のデザインが普段履きを演出してくれたからです。
ランニングのある旅にぴったりな「HYPERBOOST EDGE」

また、宿について荷物をおいたらそのまま走り出せるというのも「HYPERBOOST EDGE」の魅力的なポイントです。レーシングシューズのようにアッパーのシューレースを締め直さなくても足にしっかりフィットしてくれます。フィットしすぎるから、シューレースを緩めないで履くということができませんが、フィッティングのやり直しは必要ありません。
旅でランニングをするときには、このようにノータイムで走りに出かけられるというのは、かなり重要なポイントになります。移動で疲れた体をベッドに沈めたら、もうそこから動きたくなくなりますが、「HYPERBOOST EDGE」はその隙を与えてくれません。

駅からホテルまでの移動がアップであり、チェックインを済ませたらもう準備完了。気の向くままに走り出すことができます。私は札幌でお気に入りの場所のひとつ、3.5km先の中央図書館まで走り出しました。その後、500mで割引販売している魚系スーパーが気になって、おにぎりを買ってしまったのはここだけの話。
ただ、旅先でランニングができると、これまで知らなかったお店に出会える可能性が高くなります。だから、歩くことも走ることも自由自在な「HYPERBOOST EDGE」は旅ランにぴったりな存在ともいえます。

翌日は、街の目覚めよりも少し早くに走り出し、夏とは思えない涼しい空気を肌に感じてきました。そして、そのあと富良野に移動して、沿道の最前線でへそ祭りを観覧。2日間でしっかり動いているのに、足が疲れた感覚はまったくありません。
ただ、足がむくむ時間になると、アッパーの圧迫が強くなったように感じます。そもそも長い時間、長い距離を走ることを想定していないからかもしれません。生地としては多少伸びはするものの、補強部分がしっかりしているからか、足のむくみの影響は強く受けます。ただ、疲れにくいこととのトレードオフなら許容できます。

ちなみに走り心地ですが、詳しくは後ほどデータを使って解説しますが、25.5cmで226gという軽さもあって、とにかく気持ちよく走れます。札幌の涼しい気温というのもあるのですが、強く弾む感覚が楽しくて、あっという間に目的地に到達できました。
もちろんジョグペースではありますが、ダラダラとした走りではなく、キレのあるジョグになります。「HYPERBOOST EDGE」はデザインから「走りにくそう」というイメージを持つかもしれませんが、きちんと体重をかけることができれば、間違いなく「走りやすい」ランニングシューズです。
「HYPERBOOST EDGE」をRunmetrixで分析してみた

ランニングのある旅の相棒としての「HYPERBOOST EDGE」は、想像を遥かに上回る存在感を示してくれましたが、ここではランニングシューズとしての特性について、もう少し深堀りしていきます。
「HYPERBOOST EDGE」を初めて履いたときに、「ヒールストライク・ミッドフット・フォアフット」それぞれの走り方をしてみたところ、それぞれ反応は違うものの、走り方に応じた反応を見せてくれた。
基本的にはどのランニングシューズも1つの着地方法に最適化されているのですが、「HYPERBOOST EDGE」はどの走り方にも最適化されている感じがあったので、、それぞれRunmetrixを使って分析してみました。



なかなか興味深い結果となりました。フォアフットとミッドフットではペースが24秒/kmも違うのに、ランニングフォーム解析の結果がまったく同じに。フォアフットはさらにペースが28秒/km上がっていますが、総合評価は誤差の範囲。六角形もほぼ同じ傾向にあります。
このことからわかるのは、どのように着地しようと、足首から上の動きはほとんど変わらないということ。理論的にそんなことが可能なのかはわかりませんが、少なくともRunmetrixの答えがそうなっています。ただ、ライド感はそれぞれ大きくことなります。

ヒールストライクはシューズに乗る感覚が強く、ミッドフットは最大反発力を受け取ることができます。フォアフットも反発を受けられますが、ジョグペースでは十分に変化させることができないため、走りが不安定になります。
フォアフットで走るなら、しっかりスピードに乗ることが条件になります。スピードに乗って、ミッドソールをきちんと潰すことができれば、フォアフットでも楽しく走れるのが「HYPERBOOST EDGE」の魅力です。

また、全体的に共通しているのが姿勢が安定しているということと、左右対称性が高いということ。そして骨盤の動きが制限されているという点です。実際に走っていて気になったのは、骨盤を使えていないということです。骨盤がロックされたかのように動かなくなるので、どしてもストライドが小さくなります。
これは膝のねじれを解消するためだと考えられますが、ある程度のスピードを出そうとすると、どうしても骨盤を動かす必要が出てきます。そんなことはアディダスもわかっていることなので、ここから読み取れるのは「速さを求めるシューズではない」ということです。

気持ちいいペースまで上げることはできますが、基本的には弾ませながらゆっくり走るシューズです。だから「HYPERBOOST EDGE」でスピードの壁を感じたなら、そこからADIZEROに移行が必要になります。
ただ、幸いなことに、「HYPERBOOST EDGE」もADIZEROシリーズもおそらく木型のベースとなる部分は同じなので、「HYPERBOOST EDGE」からADIZEROシリーズへの移行は比較的スムーズに行なえます。

HYPERBOOST EDGE Q&A
- HYPERBOOST EDGEにはカーボンプレートが搭載されていますか?
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HYPERBOOST EDGEにはカーボンプレートが搭載されていません。ソールの素材だけで着地のエネルギーを吸収し、推進力へと変えてくれます。このため、ピッチを上げすぎると反発が間に合わなくなり、空回りしてランニング効率が落ちてしまう可能性があります。
- HYPERBOOST EDGEはどのような用途に適していますか?
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最も適しているのはジョグですが、ゆっくり長く走るというよりは、弾む感覚を楽しみながら、少し風を感じながら気持ちよく走りたいときにおすすめです。
- 何kmくらいの距離が適切ですか?
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その気になればフルマラソンも走れますが、シューズのコンセプトや機能を考えれば10km以下のランニングにおすすめです。それよりも長い距離を走ると、通気性不足を感じるかもしれません。
- ランニング以外のスポーツのトレーニングシューズに使えますか?
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推進力が前にしか発生しない構造になっているため、左右の動きが必要なトレーニングには適していません。トレーニング用途でシューズが必要な場合には、「ADIZERO Dropset Pro」がおすすめです。
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ポチップ
- ランニング初心者が気をつける点はありますか?
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大きく弾み続けると膝への負担が大きくなります。筋肉がつくまでは膝に違和感が出た時点で弾まない走り方に切り替えてください。
- HYPERBOOST EDGEでフルマラソンを走れますか?
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ある程度の脚力がついてくれば、HYPERBOOST EDGEでもフルマラソンを走れます。ただし、ソール厚さが45mmあり、競技規則には違反することになります。大会によってはNGとされることもありますので、マラソン大会に出るなら、ソール厚さが40mm以下のシューズがおすすめです。
詳しくは下記記事をご参照ください。
RUNNING STREET 365
ソール厚さ40mmを超えるランニングシューズとランナーはどう向き合うべきか | RUNNING STREET 365 2024年あたりから、ソール厚さが40mmを超える厚底のランニングシューズをメーカーが次々と発売しはじめました。当初は初心者向けモデルが中心でしたが、最近ではアシックス…
マラソンも視野に入れるなら「HYPERBOOST RUN」がおすすめ

今回提供していただいたのはHYPERBOOSTシリーズの最高峰「HYPERBOOST EDGE」ですが、8月1日からマラソン大会にも対応するモデル「HYPERBOOST RUN」が発売開始になります。
「HYPERBOOST EDGE」を履いて旅ランをしたわけですが、階段などで少し不安定さを感じることがあり、さらに北海道でも熱のこもりが気になったので、それらの課題を解決した「HYPERBOOST RUN」が私にとっての最適な旅ランシューズなのではないかと感じています。

ソール厚も38mmですので不安手になることもなく、それでいてデザインは「HYPERBOOST EDGE」を踏襲しており、ソールのグリップ力も上がっています。弾む感覚は弱まっていますが、それでも他のシューズにはないクッション性と反発性です。
だから、これからHYPERBOOSTシリーズを購入する場合、そう遠くない将来にマラソン大会を走るなら選ぶべきは「HYPERBOOST RUN」です。マラソン大会は興味もなく、より楽しく自由に走りたいなら「HYPERBOOST EDGE」が最適。

もちろん「HYPERBOOST EDGE」でもマラソン大会を走れなくはありません。しかしながら、マラソンをルールのあるスポーツとして楽しみたいなら、ソール厚さは40mm以下のシューズを選ぶ必要があります(ルールは気にならないなら、ソール厚さが45mmの「HYPERBOOST EDGE」でもOK)。
ただ、いずれを選んだとしても、マラソン大会で「自己ベスト更新」という考えが頭をよぎったなら、そこからはADIZEROの領域です。あくまでもHYPERBOOSTはジョグを楽しむための1足です。軽さも備わっていて、そこそこ走れてしまいますが、すでにお伝えしましたように骨盤を使うのが難しい設計になっています。

そう考えると、「HYPERBOOST EDGE」は最初の1足。もしくは普段履きも兼ねたジョグシューズという位置づけがおすすめです。特にランニングと旅が好きな人であれば、きっと最高の相棒になってくれるはずです。ただ、夏は足が蒸れないように注意が必要ですが。
なので、迷ったら「HYPERBOOST RUN」も選択肢に入れてみてください。もっとも最初の1足ならデザインで選べばいいんですけどね。もしランニングが続かなくても普段履きに使えるので、自分の普段着に合う1足をお選びください。

