ランニングシューズと他のスポーツシューズの違う点として挙げられるのが「直進性」です。ランニングシューズはまっすぐ進むことに特化して作られています。ところが他のスポーツシューズの多くは、左右の動きやストップアンドゴーに対応しています。
これは競技の特性の違いによるものです。ランニングは前に進むだけですので、それでいいじゃないかと思うかもしれません。もちろんレースにおいては前にだけ進めばいいのですが、マラソン練習で重要な補強のためのトレーニングには適していません。
筋肉は使ったものしか鍛えられないため、ランナーは走る筋肉だけが発達します。このため、横の動きに対する筋肉はとても弱く、ちょっとひねってしまっただけでも大ケガにつながってしまいます。
ランニングでケガをする理由のひとつとして、このねじれの動きに対する筋力不足が考えられます。このため、ケガをせずに長く走り続けたいのであれば、足首周りや膝周り、股関節などの関節を守るための筋力を鍛える必要があります。
でも、すでに説明しましたように、ランニングシューズはまっすぐ走るためだけに作られていますので、そのような補強のためのトレーニングには向いていません。
ランニングシューズでケガをしないために補強トレーニングを行っているはずなのに、その補強トレーニングのせいでケガをするという本末転倒なことが起こってしまうわけです。
だから、補強トレーニングは横の動きに耐えられるシューズを履かなくてはいけません。
前置きが長くなりました。
今日ご紹介するのは、7月27日に発売開始となる、横の動きを意識して作られたリーボックのランニングシューズ「FAST FLEXWEAVE®」と「FUSION FLEXWEAVE®」の2つのFLEXWEAVEです。ただ、この2足をランニングシューズと呼ぶべきかどうかはとても難しいところです。
正確にはランニングにも対応したトレーニングシューズという表現をすべきかもしれません。FAST FLEXWEAVE®は5kmまでのラン、FUSION FLEXWEAVE®は20kmまでのランを想定しています。
もちろん、5kmや20kmを走ったらシューズがバラバラになって壊れてしまうわけではありません。単純に、それ以上の距離を走るなら、ランニング専用のシューズを履いたほうがいいよというだけのことです。
ちなみにFLEXWEAVE®はリーボックオリジナルのアッパー素材で繊維を8の字に織り込んで作られた1枚布のことで、この素材で作られたシューズをFLEXWEAVE®シリーズとして販売しています。
この「FAST FLEXWEAVE®」と「FUSION FLEXWEAVE®」を実際に履く機会をリーボックさんに用意していただきましたので、それぞれがどのようなシューズなのかレビューしていきます。
高いフィット感と瞬発力のFAST FLEXWEAVE®
FAST FLEXWEAVE®はスピードトレーニングやアジリティトレーニングに適したトレーニングシューズです。ランニングばかりしている人にはあまり馴染みのないトレーニングかもしれませんが、いずれもランニング時の補強効果を期待できます。
まず履いてみて感じるのは、ランニングシューズにはないフィット感です。横の動きを重視しますので、足がブレないようにしっかりと足をホールドしてくれます。今回の FLEXWEAVE®は伸縮性を意識したものとなっているため、きつく締め付けるのではなく、優しく包み込んでくれます。
これによりしっかりと横の動きに……と言いたいところですが、正直言えば私はシューズ内での足の滑りに悩まされました。おそらくインソールとわたしのソックスの相性が良くなかったことが原因です。
FAST FLEXWEAVE®のインソールはとても滑りやすい素材でできています。これは想定でしかありませんが、そもそもFAST FLEXWEAVE®は裸足で履くように作られたのではないかと考えられます。ある程度汗をかいた状態で使用することを考えた結果、この素材を選定したのでしょう。
その素材と私のソックスが噛み合わなかったため、シューズ内で滑ってしまったのだと考えられます。ただ、これは他の人でも起こりうる現象です。FAST FLEXWEAVE®を履く場合は、できれば裸足で履くか、滑り止めのあるソックスを選びましょう。
リーボックのシューズは基本的に前足部にクッション性の高い素材を使っています。このため基本的な着地は前足部で行います。ジャンプやターンなどはすべて前足部で行いますが、このシューズのソール材はクッション性があっても反発力がありません。
このため、着地した勢いを使って前に進むということができません。これが5kmくらいの走りまで対応という理由です。自分の足で蹴らないと加速できませんので、レースなどで履くと疲労が溜まります。
ただ、トレーニングとして足を鍛えるには反発力は不要です。シューズの反発力に頼りすぎると足の筋力が低下しますので、鍛えるという意味ではこれくらいが最適です。
それよりも着地時の安定性が重要です。FAST FLEXWEAVE®はシューズの中心部がやや高く、クッション性も高いため、最初は着地の瞬間にブレを感じるかもしれませんは、シューズの外側にとても安定した素材を使っていますので、すぐに安定してくれます。
左右の動きでもしっかりグリップしてくれます。私の場合はソックスとインソールの間でズレができましたが、それもグリップが高いからこそ起こったことです。ラダートレーニングのような横の動きを徹底したいときはFAST FLEXWEAVE®はかなりおすすめの1足です。
発売日 | 2018年7月27日(金) |
価格 | 9,900円(税抜) |
全方向に推進力を得られるFUSION FLEXWEAVE®
FUSION FLEXWEAVE®は20kmまでのランニングをサポートしてくれるランニングシューズです。ただ、こちらもベースはフィットネスシューズです。左右の動きができることを重視するために、アウトソールには2本の深い溝が配置されています。
悩ましいのはこの2本の溝があるところに、FUSION FLEXWEAVE®の特徴でもあるフロートライドフォームを搭載しているというところにあります。きれいに前足部で着地できれば問題ないのですが、人はみんなそれぞれに癖がありますので、人によっては接地するポイントが違います。
このため、ランニング中に前足部から着地すると3つの面がバラバラに接地して不安定な状態になります。このため、FUSION FLEXWEAVE®で走る場合には踵からローリングするように接地していくのが理想です。
この方法であれば足や膝がブレることなく、きれいに真っ直ぐに進めますが、フロートライドフォームを活かしきれていないような感覚もあります。
また、FAST FLEXWEAVE®ほどのフィット感がありません。これは長い距離を走るときの足のむくみなどを考慮したのだと思いますが、せっかく伸縮性のある素材を使っているのですから、もう少し思い切ってフィット感を追求しても良かった気がします。
ちなみにFUSION FLEXWEAVE®にはFUSION FLEXWEAVE® CAGEというモデルもあり、こちらはアッパーにFLEXWEAVEではなくウルトラニット素材と呼ばれる、伸縮性がとても高い素材を使用しています。履き心地の良さを求める場合はFUSION FLEXWEAVE® CAGEがおすすめです。
こちらも裸足での着用をおすすめしたいのですが、踵のホールド感を高めるためにトップライン(履き口)が高い位置まで来ているため、くるぶしがダイレクトにあたってしまう人もいます。この場合は裸足ではなくソックスを着用しましょう。
こちらはFAST FLEXWEAVE®ほど滑りませんので、ソックスでも大丈夫です。ただ、微妙な着地の感覚などを掴みづらいため、くるぶしが当たらないなら裸足での着用のほうがおすすめです。
こちらのほうがより、高強度なトレーニングに適していて、フロートライドフォームにより疲れずに走ることができますが、やはりこれは走れるフィットネスシューズであって、記録を狙うようなランニングシューズではありません。
補強トレーニングもランニング練習も1足でまかないたい。そういうランナーさんに履いてもらいたいランニングシューズです。
発売日 | 2018年7月27日(金) |
価格 | 14,000円(税抜) |
FLEXWEAVE®は街履きでこそ映えるシューズ
「FAST FLEXWEAVE®」と「FUSION FLEXWEAVE®」はいずれもトレーニングをメインに考えられたシューズですが、このシューズの最大の魅力は普段履き出来るということにあります。
ファッションブランドとしても人気の高いリーボックですので、この2つのシューズはデザイン性も重視しています。いつも履いているシューズですぐにトレーニングできるというのが最近のトレンドになりつつありますが、この2つのシューズも間違いなくそのトレンドに合わせた1足です。
フィットネスにもランニングにも街履きにも使える1足。なんでもスマホ1つでこなしてしまう、現代人にぴったりなシューズです。本格的なランニングには向いていませんが、本格的なランニングができる体になるためのトレーニングには最適なシューズです。
これ以上ランニングシューズを増やしたくないという人もいるかもしれませんが、普段履きを1つ増やすくらいの感覚で、自分の体を鍛えられるFLEXWEAVE®の購入をぜひご検討ください。
もちろん買うだけでなく、きっちりと補強トレーニングもしてくださいね。
ちなみに自分で補強トレーニングの仕方が分からないという人は、Marunouchi Bike&Runで開催されるトレーニングセッションがおすすめです。曜日ごとに様々なトレーニングを受けることができますので都内で働いているランナーさんは要チェックです!