今年のノーベル医学生理学賞に「細胞の低酸素応答の仕組みの発見」をした、米国と英国の3人の研究者が選ばれました。あまりランニングに関係なさそうに思えますが、実はこの「細胞の低酸素応答の仕組みの発見」はマラソンにおいてとても重要な発見になります。
これまで、トップアスリートは重要なレース前に高地トレーニングをすることが多く、ボルダーや昆明などの高地でキャンプを行い、オリンピックや世界陸上などの大会に備えていました。
標高の高い場所は酸素濃度が低く、体を低酸素状態にすることを目的としています。体が低酸素状態になると、腎臓の働きにより赤血球の数が増え、より多くの酸素を運搬できるようになります。
この低酸素状態になると赤血球が増えるということは、これまでの研究ではっきりとしていましたが、なぜそうなるのかが分かっていませんでした。その仕組を解明したのが「細胞の低酸素応答の仕組みの発見」というわけです。
これにより、高地トレーニング・低酸素トレーニングの科学的裏付けがさらに強固なものとなり、これからさらに重要視されるようになると考えられています。
でもそれってトップアスリートだけの話では?と思いますよね。実際に私たち市民ランナーが、ボルダーや昆明で合宿するのは現実的ではありません。
ところが、低酸素トレーニングができる施設が徐々に増えつつあり、この秋には世界最大級の低酸素トレーニングジム「ASICS Sports Complex TOKYO BAY」が東京の豊洲にオープンします(2019年11月1日グランドオープン)。
そこで、ここでは低酸素トレーニングのメリットや、「ASICS Sports Complex TOKYO BAY」の施設概要についてご紹介していきます。
低酸素トレーニングのメリット
そもそも低酸素トレーニングにはどのようなメリットがあるのかについて、簡単にご紹介していきます。
血中の赤血球の数が増えて運搬できる酸素量が増える
ランナーにとって魅力的なのは、低酸素トレーニングをすることで、赤血球の数が増えるということです。赤血球は酸素を細胞に届ける役割があり、その数が増えればより多くの酸素を運搬できるようになります。
そうなると、疲労しにくくなり回復力もアップするため、より負荷の高いトレーニングを行えるようになります。
関節や筋肉への負担を軽減できる
ランナーにとっての悩みはオーバートレーニングによるケガですが、低酸素トレーニングを行う場合には、低負荷でも平地の高負荷と同じだけの効果を得られるため、関節などに負担を減らしながら心肺機能を高めることができます。
負荷が少なくなりますので、ケガのリスクが大幅に減ります。もちろん、低酸素トレーニングでもオーバートレーニングになる可能性はありますが、関節よりも先に心肺機能が苦しくなるので、平地よりは安全にトレーニングできます。
トレーニング時間を短くできる
低酸素トレーニングは心肺機能への負担が大きくなりますので、通常よりも短い時間でトレーニングが終わります。このため忙しくて時間が取りにくいという人でも、短時間でしっかりと追い込むことができます。
トレーニング時間が短いということは、回復に使える時間が長くなりますので、短期間でのリカバリーも期待できます。
生活習慣病の予防・改善に効果がある
ランナーにはあまり関係のない話かもしれませんが、低酸素環境下でのトレーニングでは体脂肪量がより低下しやすく、肥満や糖尿病といった生活習慣病を改善しやすいという調査結果があります。
「ASICS Sports Complex TOKYO BAY」施設概要
〇トレーニングルーム(2階)
筋力向上や心肺機能向上などさまざまなニーズに対応できる各種トレーニングマシンを取り揃えたマシンエリア、ストレッチや各トレーニング(サーキット、アジリティ、ファンクショナルなど)を行える場所として人工芝を設置した多目的エリア、国際大会が行われるスタジアムと同仕様のタータンを使用した50メートルのランニングレーン(2レーン)などを設置しています。
主にアスリートの使用を想定した小規模なトレーニングルームも別途設けられています。
〇スタジオ(2階)
縦5メートル×横15メートルのプロジェクションマッピングを投影可能で、壮大な映像と音楽によって生み出される非日常的な空間でヨガなどのプログラムを体験できます。
〇コンディショニングルーム(2階)
施術用のベッドを常備しており、トレーニング後のリカバリーなどで利用できます。室内は高酸素状態に設定することも可能で、鍼灸やマッサージなどのサービス(有料)も実施される予定。
〇プールエリア(3階)
50メートルレーン×4本のプールと、25メートルレーン×3本のプールがあり、それぞれで酸素濃度を変更することができます。アクアプログラムなども実施される予定。
〇「ASICS Sports Complex LAB」(3階)
アシックススポーツ工学研究所分室として活用し、学校法人立命館との共同研究の一環として低酸素環境下トレーニングに期待されるさまざまな実証実験を実施されます。また、利用者それぞれの低酸素環境下における身体の応答などを定期的に測定し、個々の能力に応じた的確なトレーニングを提供してもらえる予定。
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世界最大級約3,000㎡のトレーニングエリアが標高2,000m~4,000m相当の低酸素濃度になります。ランニングやマシントレーニングだけでなく、水泳なども行えますので、クロストレーニングにも利用できます。
月会費が2万円とかなり高額ですが、実際に高地トレーニングを海外で行うよりは費用を抑えることができます。限界まで自分を高めてみたいというシリアスランナーの方は、1年間24万円の投資として検討してみてはいかがでしょう。
住所 | 東京都江東区豊洲6-4-20 Dタワー豊洲 2階・3階 |
営業時間 | 月~金:7~22時 土祝:8~20時 |
定休日 | 日曜日 |
体験 | 4,950円/1回(税込) |
入会金 | 33,000円(税込) |
月会費 | 22,000円(税込) |
ビジター利用 | 11,000円/1回(税込) |