ナイキ ズームエックス ヴェイパーフライ 4%が発売になったとき、多くのマラソン関係者が疑いの目を持ち、そしてドーピングシューズとまで揶揄されました。そして2年前に非常識だったシューズは、世界の常識になっています。
勝ちたければ履くしかない。そんなシューズになったナイキ ズームエックス ヴェイパーフライ 4%は、次世代モデル「ナイキ ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%」へと進化して、MGCでは注目の的になりました。
すでにRUNNING STREET 365でも、ナイキ ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%をご紹介していますが、ここでは改めて4%からどう進化したのかも含めて、そのすごさをご紹介していきます。
MGC男子上位10人中8人が着用
マラソンでヴェイパーフライを履くのは、もはや常識となっています。実際にMGCでは男子30名のうち16人がナイキ ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%を選びました。
そして驚くことに、上位10人中8人がナイキ ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%を履いていました。選手のレベルにそれほど大きな差がないことを考えると、そのすごさが分かるはずです。
しかもトップ3を独占し、女子も2位で東京オリンピック出場を内定した鈴木選手が履いています。代表に選ばれば4人のうち3人がピンクのシューズを履いていたことになります。
大迫選手をはじめ、ヴェイパーフライを履く多くのトップランナーが口を揃えて言うのは「シューズが走るわけではない」ということですが、この結果からも分かりますように、ヴェイパーフライを履かないと勝負の土俵にも上がれないのが現実です。
MGCに出場するレベルの選手の場合、すでにスポンサー契約しているメーカーがあるので、履きたくても履けないという人もいます。自分には必要ないという選手もいるでしょう。ただ、この世界は結果がすべてです。
ネクスト%は4%と何が違うのか
品薄で入手困難な状態が続いたヴェイパーフライ 4%。すでに世界記録を更新するなど、現状維持でも売れるランニングシューズでしたが、ナイキが選んだのは「さらなる革新」でした。
すでに伸び代がないように思われたヴェイパーフライ 4%は、2019年にネクスト%としてフルモデルチェンジが行われました。いったいどのような進化を遂げたのでしょう。ヴェイパーフライ 4%との違いを見ていきましょう。
・軽量で通気性に優れたアッパー素材「ヴェイパーウィーブ」
・シューレースを少し中心からずらした位置に配置
・かかと内側に小さなフォーム材を配置
・ナイキ ズームエックス フォームを増量
・オフセットを11mm から8mm に変更
・前足のグリップ性を改善
・アウトソールのパターン変更
小さな改善が目立ちますが、1秒を削り出すレベルになると、このような小さな積み重ねをするしかありません。
この中で重要なのがナイキ ズームエックス フォームの増量です。ヴェイパーフライはカーボンプレートばかり注目されますが、走りの安定性と反発力を生み出しているのは、カーボンプレートだけでなく、この特別なフォーム材が影響しています。
このフォーム材は大量生産するのが難しく、ヴェイパーフライ 4%の品薄が続いた原因のひとつに挙げられます。そしてヴェイパーフライの価格が高くなっている理由のひとつでもあります。
実際にカーボンプレートを採用したズームフライよりも、ナイキ ズームエックス フォームを採用しているペガサスターボのほうが、定価が高く設定されています。
そんなナイキ ズームエックス フォームを15%増量したことで、エネルギーリターンが向上したことが科学的に証明されています。ただし、増量してもシューズの重さは変わりません。ここがネクスト%のポイントでもあります。
4%以上効率良く走れるランニングシューズということで、「ネクスト%」と命名されたこのシューズも、おそらく数年後にはさらにアップデートされることでしょう。変化することに戸惑いがない。これがナイキと他のシューズメーカーとの大きな違いかもしれません。
ナイキ ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%は買いか?
市民ランナーにとって最も気になるのは「これを履いたら自己ベストを更新できるのか」という点にあるかと思います。決して安くないシューズですので、購入には慎重になるのは分かります。
これに関しては「人による」としか言えません。
ナイキ ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%は、速く走るために作られたシューズです。それもキロ3分ジャストというようなレベルです。シューズにはそれぞれ、最も効率良く走れるペースというものがあります。
設計をするときに、どのペースをターゲットにするのかを決めて、それを基準に解析などを行います。例えばナイキ ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%をキロ5分というようなペースで履いても、シューズのポテンシャルは活かされませせん。
そして、MGCを見ていても分かったかと思いますが、ナイキ ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%を履きこなしていたのは大迫選手だけでした(設楽選手は正面からの映像がほとんどで、確認できていません)。
他の選手はヴェイパーフライを履いて日が浅いのか、それとも最適な走り方のレクチャーを受けていないのか、シューズのポテンシャルを活かしきれていないロスを感じる走りをしていました。
シューズには設計上の走り方というものがあります。どこで設置すればいいのかも含めて設計されています。その意図を汲み取って微調整をすることで、最大のポテンシャルを発揮できます。
そういう意味では「ただ履いただけでは速くならない」ランニングシューズがヴェイパーフライなのです。
逆に言えば、きちんとポテンシャルを発揮できれば、過去の自分を超えていくために最高の相棒になることは間違いありません。もちろん、キロ3分台の前半で走ることが大前提ですが。
ナイキ ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%はとても魅力的なシューズですが、魔法のシューズではありません。そのことをきちんと理解した上で購入検討をしてください。