先日開催されたクリールシューズトライアルにおいて、多くのランナーを驚かせたシューズがありました。それがアディダスのアディゼロ ボストン8です。ボストンはアディダスの定番ランニングシューズで、サブ4を狙うシューズという位置づけでした。
ところが、現行モデルのボストン 8は、大幅なモデルチェンジが行われ、サブ3を狙えるほどのレーシングモデルへと進化しています。それでも、まだサブ4シューズという印象が強く残り、あまり注目度が高くありません。
そこで、実際にクリールシューズトライアルで履いて走った感想を元に、アディゼロ ボストン 8の特徴について詳しくご紹介していこうと思います。
従来のモデルとの違いはフィット感の高さにあるというのが、アディダスの発表ですが、実際に足入れをしてみると違いは分かるものの、驚くべき変化というほどではありません。
もっともフィット感というのは高くなればなるほど、そのメリットを感じにくくなるもので、最高のフィット感を追求すると、アッパーの存在感すらなくなってしまいます。
ボストンもそれに近いものがあり、走っていておかしな圧迫感がありませんし、存在がほとんど気になりません。メッシュ素材ですので通気性が高いのは言うまでもありませんが、柔らかくなりすぎず必要な部分はきちんと足を拘束してくれるので、安心感もあります。
27cmで244gですので、レーシングシューズとしては決して軽いわけではありませんが、BOOSTフォームが効いているので重いと感じることはありません。
ただ、特筆すべき点はソール構造にあります。
シューズを履いたときに「こんなにソールが小さくて大丈夫だろうか」と不安になるくらい、コンパクトなソールになっています。軽量化のためかもしれませんが、限界までサイドを削り落とした感じがあり、走り出すまではこれで走れるのか不安が残っていました。
ただし、その不安はスピードに乗った瞬間に消え去ります。確かにシューズの幅は小さく感じますが、足裏全体を無駄なく使えている感じがあります。
ランニングシューズは、サイドの幅が広くなればなるほど着地するときに安定します。初心者向けのランニングシューズの幅が広くなっているのも、着地を安定させてランナーを守るためです。
でも、しっかりと鍛えたランナーは着地でブレることがありませんので、左右の余白が必要なくなります。ボストン 8のターゲットは初心者ランナーではなく、日頃のトレーニングをしっかりとしているランナーですので、思い切ってコンパクトに仕上げているのでしょう。
お金をかけて設計したというのがよく分かります。ここまで無駄を削ぎ落とすには感覚ではなく科学の力が必要です。徹底した解析により理想の形を追求し、そしてたどり着いた答えがアディゼロ ボストン 8です。
このランニングシューズは、アディダスの技術の粋を集めたシューズと言っても過言ではありません。
走り方としては、前足部に幅がありませんので、フォアフットではなくフラットもしくは踵からということになります。ここは好みが分かれるかもしれません。
実際にBOOSTフォームは前足部よりも、踵に多く使われており、しっかりと踵で押し出すことで推進力が生まれる構造になっています。しかもドロップが10mmあるので、フォアフットで走ろうとしても踵が先に着くことになります。
アディダスのランニングシューズはBOOSTフォームを使っているので、それが合わなくてアディダスのシューズを履かなくなった人もいると思いますが、BOOSTフォームの使い方も進化しており、柔らかすぎることなく、さらに反発が遅れてやってくるということもありません。
きちんと押した力がまっすぐに戻ってくるので、それほど力を入れなくても、グイグイと前に進むことができます。
ただし、これはそれなりに走り込みをしているランナーに限られます。筋力がともなっていないランナーの場合には、安定感のないシューズに感じるかもしれませんし、BOOSTフォームが思ったほど反発しない可能性があります。
サブ4を狙うとなると、6分/kmを切る程度のペースですので、正直なところボストンでは思ったほど気持ちよく走れないかもしれません。むしろ4〜5分/kmがシューズのポテンシャルを活かすためには求められます。
そうなってくると、サブ3〜サブ3.5を狙う人に適してることになります。
「ボストンだよ?」とアディダスのシューズを長く履いている人は思うかもしれませんが、少なくとも私が履いた感覚では、アディダスのシューズの中ではサブ3を狙うための最適解のように思えます。
ただ、履く人を選ぶシューズなのは間違いありません。フォアフットでの着地が好きなのであれば、アディゼロ ジャパンのほうが気持ちよく走れるかもしれません。このあたりは好みが別れるかもしれません。
ただ、アディゼロ ジャパンは世界のトップクラスが選ぶシューズでもあるので、ボストン以上に鍛えていないと42.195kmを走り切るのは難しいかと思います。
私はこれまでアディゼロ ジャパンを履いてきたのもあり、アディゼロ ジャパンのほうがしっくり来ましたが、自己ベスト更新を確実に狙うならボストンかなと迷っているところです。
価格が12,000円というのも嬉しいところで、実はすでに値下がりをしていて1万円前後で購入できます。シューズが高額になりつつあるなかで、これだけのスペックを備えたランニングシューズが1万円というのは少し驚きです。
サブ3やサブ3.5を狙うランナーで、アディダスのシューズが足に合うという人は、今シーズンはボストンにも注目してみるといいかもしれません。