すでにナイキから新型が発売されているので、「いまさら」になってしまいましたが、ようやくナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%(NIKE ZOOMX VAPORFLY NEXT%)を履いて走る機会があったので、遅すぎるシューズレビューをしようかと思います。
猫も杓子もピンクシューズという状況になった昨年。アルファフライの登場で、少し存在感が薄れましたが、それでも軽さからネクスト%を選ぶランナーもまだいます。現在は在庫があまりない状態で、それが新型コロナウイルスの影響なのか、それともネクスト%が廃盤になるのかは不明です。
ただ、残り少ない在庫を買っておくかどうかの参考になるかと思いますので、実際に履いて走ったレビューを残しておきます。
ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%は走るためのシューズ
おそらくナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%を履いたランナーのほぼ全員が、立ち上がったときの不安定さに焦るはずです。「こんなシューズで走れそうにない」と思うかもしれません。でも、これは立ったり歩いたりするためのシューズではありません。走ることだけに特化したランニングシューズです。
例えばスケートシューズを履いて「こんなの歩けない」「不安定で立てない」なんて言う人はいませんよね。それは氷の上で滑ることに特化したシューズであることを理解しているからです。ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%も同じです。
わたしたちの既成概念として、ランニングシューズでも歩けるという感覚があるので、ネクスト%の不安定さに驚いてしまうだけのことです。ナイキはシューズを進化させるために、ランニングシューズから歩く機能を取り除きました。そうすることでこれまでにない進化ができるためです。
具体的にはソール形状をこれまでとは違ったものにしています。通常のソールは前足部で薄く、かかと部で厚くなっているものの、ほぼフラットな形状をしています。アーチ部分に多少の凹凸をつけることもありますが、ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%はその概念を変えています。
ソールでより高い反発力を得られるように3Dデザインされています。これは感覚ですが、最初に接地する部分に厚みを持たせてあるように感じます。ソール全体が立体形状でフラットになっていないので、立ったり歩いたときに不安定さをkんじますが、走ったときの接地圧力でフラットになるので、走ると安定するわけです。
ズームXとカーボンプレートの絶妙なバランス
ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%の代名詞とも言えるのがカーボンプレートですが、以前のモデルほどはカーボンプレートが主張せず、むしろ縁の下の力持ち的な役割を果たしているように感じます。
もちろんカーボンプレートがあるので推進力が生まれるのですが、カーボンプレートの役割は従来のスタビライザーに近いものになっています。
どういうことかというと、ランニングの動きによってソールが変形するわけですが、このときキロ3分台にもなるとシューズがねじれてしまいます。このねじれが残った状態で着地するとロスになるので、接地直前には元の形に復元している必要があります。
この復元にカーボンプレートが使われています。それに合わせてテコの原理から踵を持ち上げてくれる効果もあります。これは以前のモデルでも同じことをしていたわけですが、力の配分が従来モデルよりも明らかに洗練されています。
以前のモデルは最高の部品を集めただけ。ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%はそこからチューニングを施したので、これまで以上に走れるシューズに仕上がったわけです。そういう意味でヴェイパーフライはネクスト%で完成品になったとも言えます。
ただ、それはシューズとしての進化が終わったことを意味します。ただナイキは常に進化を追い求めるメーカーですので「完成したから終わった」とはいきません。さらなる進化を求めてエアを入れたアルファフライを発売したわけです。
フィット感のストレスはほとんどなし
ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%は軽量化のために、アッパーは薄くて伸びにくい素材を採用しています。このため履く前はフィット感に不安がありましたが、シューレースの位置をずらしたこともあって違和感なく足を包み込んでくれます。
アッパーが伸びないので走り出したときの即応性も高めです。ソールが振り回されるという感覚もありません。シューズがしっかりと足の一部になっているので思い通りの走りができ、考えに考えて作られたことが伝わってきます。
ただ、アッパーが伸びないので足型が合わない人にはやや不向きかもしれません。ただ、ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%は前足部を固定せずに遊ばせるデザインになっているので、親指が1番長い人でも人差し指が1番長い人でも、きちんとフィットするような形状になっています。
これはかなり画期的な技術で、トップランナーに対してもオーダーメイドしないナイキならではの進化ともいえます。
とはいえ外反母趾のランナーだとやや窮屈に感じるか、人によっては痛みが出る可能性があります。走っていれば馴染むタイプのシューズではありませんので、試し履きで違和感があるならやめておいたほうがいいかもしれません。
ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%は全身で走るシューズ
すでにここに書く必要がないとは思いますが、ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%はランナーのタイムを縮めてくれるシューズです。フルマラソンを歩かずに走りきれるなら、誰が履いても自己ベスト更新できるでしょう。
ただシューズのポテンシャルを活かしたいなら、走り方にはある程度のコツがあります。以前ほどフォアフットを意識する必要はなくなりましたが、それでも前足部から着地することは必須です。ただし、足は置いてくるだけです。
地面を蹴って走るというのはすでに過去のものです。足は地面に置いてきて、膝を伸ばすタイミングで地面から反発力を得る。このときに体の背面のバネを使って一気に前に出ます。言葉にするのは簡単ですが、実際にはいきなりできるわけではありません。
- 背中を軽く反る
- おへそを肩甲骨側に軽く引き上げる
この状態で走ってみてください。背中を軽く反るとお腹が出てしまいますが、そのお腹を引き上げて薄い状態にします。これが基本の形で、あとは全身をバネのようにしてリズムよく足を動かすだけです。きっとほとんどの人が心肺機能がついてこれないほどスピードを出せるはずです。
とにかく地面は蹴らないでください。体の真下よりも後ろ側で押し出せば自然と前に進みますので。スピードが上がりすぎるという人は、1歩を大きくしてください。いつもよりも5cmくらい前に接地するイメージです。
ただし、実際の接地は体の中心かそれよりも後ろです。こうなってくると、意味がわからないかもしれません。伝わらないだろうなと思いながら書いていますので。ただナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%で速く走るにはこういったコツが必要になるということをわかってください。
分かりづらいという人はYouTubeで、大迫選手などナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%を履いているランナーの走りを何度もチェックして、それをなぞるように走ってみましょう。
何のためにナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%を履くか
ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%はどんなランナーだって、ワンランクアップしてくれるランニングシューズです。速く走るつもりがなくてもペースがキロ10秒程度は上がります。だから簡単に自己ベスト更新できます。
歩くときに着用しないように心がければ、ケガのリスクもそれほどありません。ダイナミックな走りになるので、体の可動域も増えますし、スピード感覚も身につけることができます。本当に魔法のシューズと言えるのですが、ここで勘違いしてはいけないのは「自分が成長したわけではない」ということです。
ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%を履いて自己ベスト更新をしても、それを達成できたのはシューズのおかげ。もちろん、きちんとトレーニングを積んだ場合には自分の努力の結果かもしれませんが、実際に何が良かったのかが見えにくくなります。
サブ3やサブ4の壁を超えるためにナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%を履くというのはありです。でも、そのタイムに満足してはいけません。自分の成長という点で大事なのは次のレースです。そこでさらに自己ベスト更新をしてこそ意味があります。
もしナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%の購入を検討しているなら、まずは「何のために買うのか」を明確にしましょう。もちろん他社の最新シューズでも同じですし、どんなランニングシューズを買うときでも同じです。
何を目的にシューズを買うのか。履くだけで速くなるシューズを買う意味はどこにあるのか、自分なりに説明できるなら購入しましょう。自己ベスト更新をしたいというだけなら、すぐにまた記録が伸び悩むことになります。
とはいえ時代はもう完全に厚底シューズです。2〜3年すればそんな難しい理屈抜きで厚底シューズがあたり前の時代になります。ちょっとだけ時代を先取りするだけですので、欲しいという理由だけで買ってしまうのもいいでしょう。
ただしばらくは活躍の場がなさそうですが。