ランニングシューズってリサイクルが難しいって知ってた?

スポーツの世界でもSDGsを意識したプロダクトが増え、着なくなったウェアを回収してリサイクルするスポーツブランドも増えてきましたが、ランニングシューズの回収をしてリサイクルするブランドはありません。なぜなら、ランニングシューズはリサイクルが難しいプロダクトとしてデザインされているためです。

それってかなり意外なことかもしれませんが、思い当たる節があるという人もいますよね。使い古したランニングシューズはリサイクル回収先がほとんどなく、思い入れがあるシューズを捨てるのに心苦しい思いをしたことのある人も多いはず。でも、そんなランニングシューズの終わらせ方について、未来が少しだけ変わろうとしています。

目次

シューズのリサイクルが難しいのは複合素材が原因

使い古したウェアは回収して、新しいウェアの素材として生まれ変わることができます。実際にアシックスは「ASICS REBORN WEAR PROJECT」として、部活やマラソン大会などで着用した思い出の一着を、日本代表選手団の公式スポーツウェアへと再生するプロジェクトを2020年に実施しています。

他にもさまざまなブランドがウェアの回収をして、それを素材として生まれ変わらせるという取り組みをしています。ところが、なぜかランニングシューズは同じようなリサイクル活動が実施されていません。期間限定でシューズの回収をしていることあっても、ビジネスモデルとして循環できている例は限られています。

それは「ランニングシューズがリサイクルに向いていないプロダクトだから」というのが最大の理由になります。まずほとんどのランニングシューズはアッパーとソールを分離できる構造になっていません。仮に分離できたとしても、アッパーの素材が複合素材であるため、素材として再利用できません。

そして、世界では毎年約239億足のシューズが作られており、そのうち95%以上が埋め立てられるか、焼却処分になるといわれています。ランニングシューズに愛着を持っている人からすると、胸が締め付けられるような思いがしますよね。

でも、そんな現状に風穴を開けるランニングシューズがアシックスから発表されました。そのシューズは「NIMBUS MIRAI(ニンバスミライ)」。NIMBUSの名前はついていることからわかりますように、このNIMBUS MIRAIは本格的なランニングシューズとなります。

リサイクルできるランニングシューズ「NIMBUS MIRAI」

「NIMBUS MIRAI(ニンバスミライ)」最大の魅力は、何といってもリサイクル可能であるという点にあります。まずアッパーの素材ですが、複合素材ではリサイクルできないということで、再生可能にするためにポリエステルしか使用していません。

ポリエステルのみで伸縮性のある素材を使わないと、高いフィット感を得られないため、ポリエステルをニット形状にすることで履き心地のよさを作り出しています。そしてアッパーとソールを分離できないという問題を解決するため、アシックスは自社開発した、加熱により簡単に剥がすことができる接着剤を採用しています。

従来の接着剤と同等の強度を持っているということですので、長い時間をかけて経年劣化しないかぎり、日本の酷暑でも走っていてソールとアッパーが分かれてしまうなんてこともありません。ただ、そのあたりもプロダクトとして世に送り出したあとに様々な問題のひとつとして浮かび上がってくる可能性があります。

NIMBUS MIRAIはこれまでになかったことに挑戦しているランニングシューズであり、ランニングシューズを捨てなくて済む未来への第1歩となる1足です。完璧さを求めるというよりも、アシックスの考え方、スタンスに賛同できるというのであれば「買い」のランニングシューズです。

ちなみにリサイクルできるといっても、シューズの購入者がリサイクルしてくれないと、このシューズのリサイクルの輪というものが完成しません。アシックスはリサイクルできるシューズの開発と、リサイクルできるサイクルの構築をしましたが、そこにランナーが加わってシューズをリサイクルに出すという工程が入って始めて完成となります。

そのリサイクルを簡単にできるように、シューズと靴箱に表示されているQRコードを読み取ることで、特設サイト(https://www.asics.com/jp/ja-jp/mk/mirai)にアクセスできるようになっています。あとはランナーがこの流れに乗るかどうか。

ただ、NIMBUS MIRAIはリサイクルできるコンセプトシューズというわけではなく、「未来」を先取りするという位置づけのシューズになります。今後NIMBUS MIRAIから派生したシューズが増え、いずれアシックスの多くのシューズがリサイクル可能になるわけで、その流れはスポーツブランド全体に広がっていく可能性があります。

いま、シューズをリサイクルする流れに乗らなくても、ランナーであればいずれその流れに乗ることになる可能性があります。遅かれ早かれそうなるのであれば、ぜひランニングシューズの未来を誰よりも早く体験するために、NIMBUS MIRAIを手に入れてみてはいかがでしょう。

NIMBUS MIRAIの発売は2024年4月12日から。アシックスラン 東京丸の内、アシックスフラッグシップ原宿、アシックスストア大阪、アシックスオンラインストアで発売されます。価格は22,000円(税込)。数量限定ですのでお早めにお求めください。

アシックス プロジェクトリーダー 上福元 史隆のコメント

「NIMBUS MIRAI」の開発は、2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを目指すアシックスにとって重要なマイルストーンとなります。愛用してきたシューズが新たなものへ生まれ変わる、それが当然でありランナーの誇りでもある、といった未来をみなさまとともに創出していきたいと思います。

NIMBUS MIRAI シューズレビュー

実際にNIMBUS MIRAIを履いて少しだけトレッドミルで走る機会をいただけたので、どのような感触だっったのかを簡単にレビューしていきます。実際に走ってみて強く感じたのは、安定性の高さです。フォアフットで着地しても、踵から着地してもブレることなくしっかり着地できます。

ただ、率直な感想としては驚くようなことはありませんでした。なぜならミッドソールはGEL-NIMBUS 26にも使われているFF BLAST PLUSで、違いはPureGELを使っていないということだけ。そこを大きな差と感じる人もいるかもしれませんが、まぎれもなくこのシューズはNIMBUSでそこに特別感はありません。

アッパーはポリエステルだけを使っているということで、従来モデルのような伸縮性が期待できず、アシックスらしい包み込むような感覚がありません。むしろ肌に貼り付けるような感じで、伸縮が弱い分だけ反応が早いように感じます。

重量は公表されていませんが、FF BLAST PLUSがかなり弾むソール材ですので、走っていて重さを感じることもありません。少し気になったのは踵の包み込みが甘い感じがあるということ。実際にGEL-NIMBUS 26のヒールカップと比較してみましたが、GEL-NIMBUS 26ほどの硬さがありません。

ただ、いずれにしてもキロ5分前後で走るのに気になるほどの違いではありません。リサイクルできるかどうかに関係なく、NIMBUS MIRAIはしっかり走れるシューズで、シューズの機能性についてはまったく問題ありません。もちろんこれからさらに改善されていくはずですが、地球環境に優しいシューズにありがちな、機能面で妥協しているというようなことは一切ありません。

少なくとも「買ったけど使いどころがない」なんてことはなく、間違いなく頼れる相棒になってくれる1足です。シューズの未来を先取りしたいという人や、地球環境に配慮しているけどしっかり走れる1足を手に入れたい人は、そしてなによりもランニングシューズが大好きな人に履いてもらいたい。そう感じた1足です。

NIMBUS MIRAI 商品概要

品名 NIMBUS MIRAI
品番1013A138
価格22,000円(税込)
カラーホワイト×ホワイト
サイズ22.5-29.0cm(0.5㎝刻み)、30.0cm
素材アッパー:合成繊維
アウターソール:ゴム底
発売日2024年4月12日(金)
NIMBUS MIRAI 特設サイトhttps://www.asics.com/jp/ja-jp/mk/mirai
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