世界的にマラソンが記録向上する傾向にありますが、ほとんどの人はその理由がナイキのヴェイパーフライシリーズにあると思っていますよね。でも、実際にはランニングシューズの進化だけでなく、ランニングタイツの進化もありますし、補給食もここ数年で大きな変化があります。
その中でもトップランナーの80%が補給食や給水に使っているモルテンは「魔法の粉」と呼ばれ、勝つための必須アイテムとなっています。以前、モルテンの紹介記事を書きましたが、今回は実際にフルマラソンで使ってみたレビューも含めて、市民ランナーに有効なのかについてお話します。
モルテンはレース後半のエネルギー不足を補う
マラソンで必要なカロリーは簡易的に「体重(kg)×距離(km)」で求められます。体重60kgのランナーが42km走るとすれば、2520kcal必要になります。実際にはもっと複雑な計算がありますが、おおよその数字を求められる計算式として覚えておきましょう。
2000kcal以上あるペヤングが発売されたとき、一般の人は「高カロリー過ぎる」と話題になりましたが、ランナーにしてみれば「フルマラソン後ならまったく問題ないカロリー」ということで、逆の意味で話題になりました。このようにフルマラソンはかなりのカロリーを消費する運動です。
ただ問題なのは、走るのに必要なエネルギー(糖質)は、体の中にそれほど多く蓄えることができません。個人差はありますが糖質量で400g、カロリー計算ですと1600kcalしかエネルギーとして蓄えることができず、トップランナーであってもフルマラソンを無補給で走るのはかなり難しい計算になります。
体脂肪を使うという方法もありますが、トップランナーレベルのスピードと負荷ですと体脂肪を燃やしてエネルギーにするというのは非効率です。なのでトップランナーはスペシャルドリンクを使って糖質を補給します。
そのスペシャルドリンクに使われているのがモルテンですが、モルテンはレース中だけでなく、レース前から糖質の補給ができるアイテムとして注目されています。詳しい説明は省きますが、モルテンを使うと通常よりも多くの糖質を体内に溜め込むことができます。
モルテンを使ったランナーは、より多くのガソリンを積んだレーシングカーのようなものだと考えてください。他のランナーはガス欠を気にしながらエコ運転をしなくてはいけないのに、モルテンランナーはエンジンを高回転で回すことができます。
このため、エネルギー不足を補うモルテンは「必須アイテム」となっているわけです。では、この必須アイテムは私たち市民ランナーでも有効なのでしょうか?
モルテンを飲むことで無給食でゴールを目指せる
モルテンを利用したのは愛媛マラソンで、サブ3を狙うためのアイテムとして用意しました。購入したのは下記の2点です。
- MAURTEN DRINK MIX 320
- MAURTEN GEL 100
MAURTEN DRINK MIX 320はレース前日に1本、レース当日に1本使います。MAURTEN GEL 100はレース中の補給に使いました。いずれも全国のスポーツ店で取り扱いがあり、愛媛マラソンが開催される松山でも2ヶ所のスポーツ店で販売されていました。
MAURTEN GEL 100はカフェイン入りのGEL100 CAF100がお店にあり、どちらにするのかを悩みましたが、カフェインがどう作用するのかが分からなかったので、無難にMAURTEN GEL 100を購入しています。
結果的には自分のコンディショニングが失敗し、サブ3を達成することはできませんでしたし、サブ3を達成できないと判断した時点で、銘菓エイドを堪能したのでモルテンだけで走りきったわけではありません。でも、レース終わってから数日間は、ほとんど空腹感がやってきませんでした。
もちろん個人差があるのでしょうし、空腹感がなくてもしっかり食べていましたが、間違いなくエネルギーとして体内に溜め込まれていました。それを活かしきれなかった自分のミスですが、エネルギー補給という意味では市民ランナーでも効果を実感できるはずです。
体が重たくなるというデメリットもある
エネルギー不足を補うためのモルテンですが、個人的にはひとつだけ大きなデメリットを感じました。それは水分を体に溜め込むので、体が重たくなるという点です。前日に500ml、当日に500mlのドリンクを飲むことになるので、それだけで1kgの体重増です。
この水分は走りながら抜けていきますが、私の場合は普段から水分をほとんど摂らない傾向にあるので、この1kgがやけに重たく感じました。トップランナーでも1kgの増加は決して小さくはないはずですが、それでも彼らは結果を出しているのですから、この部分に関しても個人差があるのかもしれません。
普段のトレーニングから使えているかどうかも大きいかもしれません。スタート時に重たいというのに慣れてしまえば、それほど大きな問題ではなく、むしろオーバーペースを防ぐ効果もあります。それでも、実際にお腹が重たいと感じる人もいるはずですので、やはり事前に使っておくことが重要です。
決して安いものではないのもあって、いきなりレースで使ったのが私の最大のミスだったかもしれません。そして「安くない」というのも市民ランナーにしてみればかなりの負荷です。上記のセットを揃えるには3,000円の投資が必要になります。とてもじゃないですが気軽には試せません。
溶かすのが難しいのでシェイカーが必要
モルテンの効果とは少し違いますが、もうひとつデメリットがあります。それは粉を溶かすのにかなり手間がかかるという点です。1袋に対して500mlちょうどの水が必要になりますが、すべてを溶かし切るのに10分くらいかかりました。
家からシェイカーを持っていくのを忘れたので、100円ショップでシェイカー代わりになるものを購入しましたが、容量がギリギリなのに蓋もあまりしっかりしていないので、シェイカーのように強く振ることができず。初めての利用時には、永遠に溶けないのではないかと思うほど溶けません(最終的には必ず溶けるので粘ってください)。
スポーツドリンクのように、粉をささっと混ぜてというわけにはいかないので、レース当日に利用する分は、できるだけ前夜のうちに溶かしておくことをおすすめします。レース当日の朝は何かと慌ただしいので、なかなか溶けてくれないと焦ってしまいますので(これも事前に慣れておきたいところ)。
シェイカーは必須です。もちろん他社のものでも十分ですが、容量だけは注意してください。少なくとも600ml程度は入るものでないと、MAURTEN DRINK MIX 320を溶かすのに苦労します。シェイカーはプロテインを溶かすのにも役立ちますので、ひとつくらい持っておいたほうがいいかもしれません。
サブ3を狙うのであれば市民ランナーでも効果的
私はサブ3に失敗しましたが、キロ4分台前半で走るなら、モルテンはかなり有効かなと感じています。私は裸足でフルマラソンを走ることもあるのですが、その場合にはゆっくりのペースになるので、ほぼ無補給で走りきります(美味しそうなものがあると誘惑に負けて……)。
このときは体脂肪をエネルギーとして使っているですが、同じことをサブ3のペースでできるかというとそれは無理です。人によってはできるのかもしれませんが、高負荷の状態ではやはり糖質のほうがエネルギーとしては効率的です。
そういう意味ではサブ3を狙うレベル以上の市民ランナーなら、モルテンはかなり有効なアイテムです。特に市民ランナーのほとんどはスペシャルドリンクを用意できないので、もしろモルテンを使ってあらかじめ体内にエネルギーを蓄えておくほうがいいでしょう。
エイドは最低限の水分補給だけにすれば、エイドでのロスを防ぐこともできます。
ただ、私のように「体が重たい」と感じることもあるので、いきなりレースで使うのではなく、事前に何度か試しておくことをおすすめします。重たい感覚を覚えておけばレースで序盤にペースが上がらなくても慌てることはありません。
MAURTEN DRINK MIX 320は1袋1,000円するので、頻繁に試せないという人もいるかと思いますが、せめて調整レースなどで2〜3回使ってみて慣れておくようしましょう。また、かなり甘いので味に慣れるというのも大切です。
慣れてしまえば、あとはプラスにしか作用しませんので、自己ベスト更新のためにできることは何でもしたいというランナーさんは、ぜひモルテンを活用してみましょう。