【シューズレビュー】MEDIFOAM MELOS 2(メディフォーム メロス 2)で3日間250km走ってみた

毎年、年末年始にRUNNING STREET 365主催で東西対抗東海道53次ウルトラマラソンという小規模イベントを開催しています。小規模すぎて主催者なのに走らなくてはいけない年もあり、2020-2021の年末年始も他の参加者に煽られて出場することになりました。

東西対抗東海道53次ウルトラマラソンは東京日本橋と京都三条大橋から同時にスタートして、真ん中にあたる静岡の天竜川にある六所神社を目指すというもの。東軍は東京、西軍は京都がスタートでそれぞれ約250kmを走ります。そのレースを発売されたばかりのMEDIFOAM MELOS 2(メディフォーム メロス 2)で走ってきました。

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シューズが届いたのは出発2日前

そもそも東西対抗東海道53次ウルトラマラソンはまったく別のシューズで走るつもりで、練習も本番で走る予定だったシューズで走っていました。詳細はまだ書けないのですが、ロッカー構造を採用しており、力を入れなくても前に進めるタイプのシューズです。

このシューズなら走れなくなったときにも、それなりのスピードを担保してもらえるので250kmという距離も間違いないだろうと思っていたのですが、やや重たいということだけが気がかかりで、そんなときにアキレスさんからMEDIFOAM MELOS 2をレビュー用に提供してもらえるという話をいただきました。

MEDIFOAM MELOS 2はサブ3を狙うためのシューズであり、本来ならウルトラマラソンには不向きなのですが、不向きな状態で使った方がシューズの本質が見えてくると判断して、試走もそこそこにレースに投入しました。早く走るためのランニングシューズなので250kmでシューズが消耗する前に一応1kmのタイムトライアルをしています。

前日に5kmのタイムトライアルをしているのもあり、そして2020年の練習不足もあって、1kmが3分35秒と平凡な記録でした。過去にMEDIFOAM ITENで3分22秒で走れていることを考えると、平凡どころか悪いタイムですが、1年も追い込む練習をしていないことを考えれば仕方ありません。

タイムは出なかったものの、従来のITENで気になっていた小指がアッパーに当たる感覚が薄く(当たるのは当たる)、ほとんど気にならなかったのも250kmレースで履いてみようと決断した要因でした。新モデルはMELOS 2もITEN 2もアッパーを改良しており、収縮性が上がったのが良かったのかもしれません。

自分の力で走らないと前に進まないランニングシューズ

東西対抗東海道53次ウルトラマラソンは4日間でゴールを目指すレースですが、主催者ということもあり、誰よりも早くゴールしておきたいということで3日でのゴールを目指します。過去に達成していたのもあり、おそらく今回も大丈夫だろうという判断です。

このため初日は日本橋から箱根湯本まで90km走らなくてはいけません。都内は信号が多く、しかもこの日はあいにくの雨。午前8時スタートで、午前中はずっと傘をさして走っている状態です。そもそも腕を大きく振らないタイプなので問題ないと思ったのですが、MEDIFOAM MELOSは走りを助けてくれません。

今どきのランニングシューズは、推進力を生み出すための構造や素材を使っているので「乗る」ことができるのですが、MELOSはその感覚がかなり薄く、自分で地面を押した分しか前に進みません。これは良い悪いという話ではなく、そういうコンセプトなのでしょう。

そもそもMEDIFOAMというソール材は衝撃吸収に優れていて、反発力も高いソール材なのですが、MEDIFOAM MELOSでは前足部に薄く使われているだけなので、他社のシューズのようにグイグイ進めるような強い推進力はありません。それはデメリットのように思えますが、走らされる感覚がなくオーバーペースになりにくいというメリットもあります。

いずれにしてもスタートして感じたのは「前に進まない」ということで、正直焦りましたが、そもそもキロ4分で走るために設計したシューズを、キロ6〜8分で走るほうが間違っているわけです。ただ、私にはMEDIFOAM MELOSに期待していたものが別にありました。

圧倒的な衝撃吸収力で足を守ってくれる

ステージレースにおいて、最も避けなくてはいけないのが疲労の蓄積です。完全に回避することはできませんが、1日がんばりすぎて、翌日まったく走れないというのは避けなくてはいけません。特に1日100km近く走るとなると、足裏や足の甲、膝への負担が大きく、どう乗り切るかが重要なポイントになります。

MEDIFOAM MELOSに期待したのはその部分です。MEDIFOAMは前足部だけに搭載されていますが、私は裸足で走ることもあるのでフォアフット気味のミッドフットを基本としており、少し意識するだけでフォアフットへ移行できます。フォアフット×MEDIFOAM MELOSなら劇的に疲労が少なくなると期待したわけです。

1日の終りくらいになるとさすがに疲労感が出てしまって、ペースが落ちてしまいましたが、いずれの日も5時間程度の睡眠(23〜5時はランニング禁止というルール)で、翌朝には完全にリフレッシュしていました。これは正直驚きでした。箱根峠や薩埵峠といった難所があったにもかかわらずです。

過去のレースや200kmを超える旅ランでは、起きてすぐは足裏などが痛くて体がまったく動かないのですが、今回は2日目も3日目も快適に走り出せます。3日目は強い向かい風もあって「スピードが出ない」と焦りましたが、痛みがあるわけではなく時間とともに回復していきます。

MEDIFOAMはそもそもリカバリーシューズとして注目されたシューズですので、当然の結果ではあるのですが、こういう無理な使い方をしたから実感できたことでもあります。これほど疲れにくいならフルマラソンの後半になっても疲労感がなく、補給さえ失敗しなければ最後まで走りきれることを期待できます。

1歩で体にかかる負担が他のシューズよりも明らかに軽い。だからケガをせずに走り続けることができます。

3日間でシューズの消耗もほとんどなし

写真は3日間250kmを走ったあとのソールです。踵がすり減っていますが、これは超長距離をするときにありがちなすり減り方で、途中でどうしても歩いてしまうため仕方がないことです。キロ4分ペースで走れば、むしろ踵部のゴムはほとんど削れません。

MEDIFOAMのパフォーマンスリカバリーモデルを買うときに、スパイクタイプのMELOS 2とラバータイプのITEN 2のどちらにするか迷い、すり減りやすそうなMELOS 2を避けてITEN 2を選ぶという判断をする人もいるかもしれませんが、少なくとも250km程度ではMELOS 2でも問題ありません。

高いグリップ力が欲しい人やトラックで走る人はMELOS 2、フォアフットランナーのリカバリーランやロング走などで使いたい場合にはITEN 2が向いています。少し言い方を変えれば、グリップ力を活かして力で前に進むタイプはMELOS 2、回転数で前に進むタイプはITEN 2が向いています。

どちらもかなり軽いので、耐久性に不安を感じるかもしれませんが、基本的には足に優しく長く履けるシューズです。他のシューズと使い分けをすれば1シーズンは十分に使えます。ただ、履き心地がいいのでついつい多く履いてしまう可能性が高く、そうなると流石に消耗します。

1つだけ気になったのは、インソールがズレてしまうということです。右足も左足も、踵側にインソールが寄ってしまって、つま先部にインソールがない状態になっています。これは走り方の問題か相性の問題かはわかりません。インソールを交換する予定のない人は、両面テープなどでしっかりと固定しておいたほうがいいかもしれません。

MEDIFOAM MELOSは走力を問わないシューズ

アキレスはMEDIFOAM MELOS 2をパフォーマンスリカバリーモデルという分類にしていますが、個人的には初代からオールラウンダーなシューズだと感じています。ジョグからスピードトレーニングまでをこなすことができ、レースでも履けるタイプのシューズです。クセがないので足に合えば誰でも履けます。

私は足型がジャストではないものの、アッパーの改良もあってか250kmを走ってストレスを感じることはほとんどありません。窮屈だから脱ぎたくなったこともなく、むしろ存在感を完全に消しており、見えない部分で足をしっかりとサポートしてもらえました。

いきなり履いてもそうだったわけですから、徐々に足になじませれば最高の相棒になってくれる1足です。ただ、流行りの厚底シューズのようにゴールまで運んでくれるわけではありません。しっかりとトレーニングをして自分を鍛えた人ほどそのサポートを強く受けることができます。

そこにスピードはそれほど関係なく、サブ3ではなくサブ4でもサブ5でも履いてもらいたいシューズです。MEDIFOAMを採用しているので、フォアフットなら足を守ってくれてケガのリスクも下がります。それでいて軽いのでいつまでも走っていられます。

逆に踵着地の人やロッカー構造のランニングシューズが好きという人とは、それほど相性がよくありません。そういう意味では万能ではありませんが、ランナーとしての走力は問いません。自分を鍛えたいという気持ちがあるなら、MEDIFOAM MELOS 2やMEDIFOAM ITEN 2は「あり」です。

また、ワラーチや裸足などで走っている人も比較的馴染みやすいかもしれません。衝撃吸収力が高さは今回のロング走で強く感じたので、ウルトラマラソンとも相性がいいかもしれません。アキレスはサブ3狙いのシューズとして売り出していますが、このシューズのポテンシャルはもっと高く、幅も広いと感じた250kmでした。

厚底はどうも好きになれないという人は、2021年のメインシューズに選んでみてはいかがでしょう。

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