【シューズレビュー】アディダス「ADIZERO BOSTON 10(アディゼロ ボストン 10)」で35kmの旅ランしてみた

【シューズレビュー】アディダス「ADIZERO BOSTON 10(アディゼロ ボストン 10)」で35kmの旅ランしてみた

アディダス「ADIZERO PRIME X(アディゼロ プライム エックス)」のシューズレビューに引き続き、フルモデルチェンジが行われたADIZERO BOSTON 10(アディゼロ ボストン 10)も提供いただいたので、こちらのレビューもしていきます。

スピード追求モデルのアディゼロ プライム エックスとは違い、アディゼロ ボストン 10は「アディオス プロ 2」のトレーニングモデルという位置付けになるので、今回は長い距離を走ってみようということで、35kmの旅ランを走った内容を元にレビューします。

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耐久性と安定性を高めた万能シューズ

アディゼロ ボストンはこれまでサブ4を狙うランナーのトレーニング兼レースシューズという位置づけにあり、アディダスのランニングシューズの中ではあまり目立たない存在でした。ただ、ここ数年のボストンの完成度はとても高く、アディダスのシューズで迷っている人には「ボストンなら間違いない」と勧めていました。

ところがアディオス プロの登場で状況が大きく変わります。アディダスのランニングシューズのなかで、厚底のアディオス プロだけが突出したラインナップになっており、アディオス プロの特性に慣れるにはアディオス プロを履くしかありませんでした。

ただ、アディオス プロはレース用ですので耐久性がありません。エリートランナーが履いてポテンシャルを発揮できるのは5レース(200km)くらいがいいところ。これを練習で履くにはコストパフォーマンスが悪すぎます。そこで練習用のシューズが望まれていたのですが、このとき白羽の矢が立ったのがボストンでした。

ボストンをフルモデルチェンジして、アディオス プロのトレーニング用シューズという位置付けにするという大改革が行われ、アディゼロ ボストン 10は厚底でENERGYRODSを搭載しつつも、耐久性と安定性を大幅にアップしたモデルに生まれ変わりました。

軽さを手放したことをどう考えるか

ボストンの課題は耐久性を上げることと、価格を下げることにありました。ただしこの2つは方向性が相反します。耐久性を上げるにはパーツ点数を増やさなくてはいけないので、単純に考えるとコストアップに繋がります。でもボストンは手軽に購入できる値段でないといけません。

そこでボストンはアディオス プロに採用したソール材「LIGHTSTRIKE PRO」を減らして「LIGHTSTRIKE EVA」と組み合わせるという道を選びました。「LIGHTSTRIKE PRO」は反発力もクッション性も優れているものの、生産コストが高いので、この使用量を大幅に減らしたわけです。

そしてアウトソールには、CONTINENTAL™ラバーを採用することで1000kmくらいの走行距離でもソールが耐えられるようになっています。その結果、ボストンは軽さを失ってしまいました。重さは25.5cmで272gあり、従来のモデルから40g前後の増量となっています。

これをどう考えるかで、ボストンが買いなのかどうかが決まります。

最近のトレーニング用シューズは、どのメーカーも重量を意図的に重たくしている傾向にあり、27cmで280gみたいなシューズが増えています。かつての初心者用シューズの重さなのですが、レース用シューズは軽すぎてトレーニングするときに履いても足が鍛えられないという問題に対するメーカーの答えなのかもしれません。

シューズを重たくすることでトレーニング効果を上げる。もしくは反発力が高い素材をソールに使っているので、接地したときに反発力をもらってシューズが跳ねるので重さを感じにくいというスタンスなのかもしれません。ただ、はっきりしているのはアディゼロ ボストン 10はスペック上は重たいということです。

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圧倒的な安定感でロスなくまっすぐに進める

今回走ったのは長崎県の天草です。アップダウンが激しく、さらに信号が少ないので天草はランニングトレーニングに最適な場所でしたが、当日の最高気温が30℃を超えるコンディション。ただしイルカウォッチングなどの観光を交えてのランニングでしたので、9時間(実際の移動時間:4:23:55)かけて35kmの旅となりました。

走り出しはソールがかなり硬く感じましたが、これは距離が増えていくにつれてむしろ柔らかく感じたので、シューズが馴染むまでに時間がかかっただけだと考えられます。硬さの違う「LIGHTSTRIKE PRO」と「LIGHTSTRIKE EVA」の2つのソール材と5本の「ENERGYRODS」がポテンシャルを発揮するには10〜20kmくらいのシェイクダウンは必要そうです。

フィッティングはそれほどシビアではありませんが、踵が少し浮く感じがあります。これは足型との相性の問題ですので、人によってはジャストフィットに感じるはずです。また、歩くと踵のズレが気になりますが、走り出したらまったく気にはなりません。

走るペースは5〜7分/km程度のジョグペース。プライム エックスやアディオス プロのような強力な推進力があるわけではなく、自分の意思でスピードをコントロールできる感覚です。BOOSTフォームのような走らされている感じもなく、スピードを出したいときだけ強い反発力をもらえます。

最初に感じたのは安定感の高さです。アウトソール全体で地面を掴む感じがあり、接地したときのブレがまったくありません。地面に吸着しているくらいの安定感があり、ブレがないのでまっすぐに走れる感覚があります。これまで履いたアディダスのランニングシューズで1番安定感があるかもしれません。

BOOSTフォームのランニングシューズだと、接地したときに走り方の癖が影響して偏った変形をする感覚がありますが、「LIGHTSTRIKE PRO」と「LIGHTSTRIKE EVA」の組み合わせだと、そのようなことがなくどっしりとしています。

走り方としてはフォアフットが最も適しています。アディオス プロのトレーニング用シューズということですので、アディオス プロを履いたときと同じフォームで走ることを前提に開発されたのでしょう。ただし、前足部から入って踵もしっかり接地してから足裏をリリース。

アディオス プロのように踵がほとんど触れずに走るのではなく、きちんと足裏全体で体重を受けることができます。このとき接地時間を短くなるような足さばきをすればスピードに乗れて、接地時間を長くすればジョグペースで走れます。

上り坂はグイグイ上がれて、下り坂は衝撃を気にすることなくピッチを上げてスピードに乗れる感覚があります。ただし、暑さに負けて歩きだすとシューズの重さが気になります。走っているうちは重さは気になりませんが、あと40g軽ければと思うことは度々ありました。

とはいえ、程よいクッション性もあるので、長い距離を走ったときの足の疲労感が少なく、走りにロスがないので、ジョグだけでなくロング走でもLSDといったトレーニングにも使えそうです。

スピードを出せるけど維持するのが難しい

35kmを走ってみた感想としては、安定感のあるトレーニングシューズという印象ですが、そうなると気になるのがスピード練習に使えるかとうことです。5〜7分/kmでは5本の「ENERGYRODS」の反発力がそれほど発揮されておらず、その気になれば、もっとスピードにも適応できろうな気がします。

天草から戻って、いつも走っている公園で1kmのタイムトライアルをしてみました。プライム エックスで走ったときには、3分23秒で自己ベストに近いタイムでしたが、結論から言えばボストンでのタイムは3分33秒で10秒ほど遅くなっています。

さらにピッチも190spmとプライム エックスよりも5spmくらい低くなっています。重たくて回転数を上げられなかったのでしょう。

また、自分のコンディションの問題もありますが、プライム エックスほどの加速力が感じられなかったのがタイムに影響しています。ただし、プライムエックスは直角コーナーでの不安定さがありましたが、ボストンはしっかりと地面を掴んでくれるので、コーナーで失速することはありません。

それでいて地面を押した力がきちんとリターンされるので、スピードもそこそこ出すことができます。ただプライム エックスやアディオス プロのようにスピードに乗り続けるのが難しく、自分でしっかりと地面を押さないとスピードが簡単に落ちてしまいます。

そういう面でもやはりトレーニング向きだというのがわかります。ボストンを履いて走り込んだ後にアディオス プロを履いて走ると、羽が生えたかのように走りが軽くなります。しかもボストンと同じフォームで走れるので、後半の苦しいときも最適なフォームを維持できるというわけです。

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結論:アディゼロ ボストン 10は万能型トレーニングシューズ

トレーニング用のシューズと考えたとき、アディゼロ ボストン 10はすべてのレベルのランナーにおすすめできる1足です。万能性という意味で過去のボストンのDNAをしっかりと引き継いでおり、フルモデルチェンジしたとはいえ、ボストンはボストンでした。

ではレースで履けるかというと、個人的には「履かない」と答えます。やはり重たいのがネックです。履いて走れない重さではありませんが、アディオス プロ 2が存在するのにあえてボストンで走る理由がありません。アディオス プロ 2が高いと感じるならアディゼロ ジャパンでもいいでしょう。

レースにおいて「軽いは正義」です。もちろんクッション性があることが大前提ですが、そもそも厚底シューズの存在意義は、「薄底と変わらない重さなのにクッション性が高い」ことにあったはずで、「クッション性がアップして、反発力もあるけど重たい」というのはトレーニングには適していても、レース向きではありません。

逆に言えば アディゼロ ボストン 10 があと50g軽かったら、サブ3を狙うランナーから完走目標の初心者ランナーまで、ほぼすべてのランナーのレース用シューズとしておすすめできる1足になります。ただそうなると耐久性や安定性が失われるので、アディダスはボストンをトレーニング用として売り出したのでしょう。

それに対して「重くてレースには不向き」と言うのは筋違いというもの。しっかりとボストン 10で走り込みをして、アディオス プロ 2で自己ベスト更新に挑む。そんな使い方が理想です。スピードもそれなりに出せて、ロング走もできて安定性に優れている。

マラソン大会の開催が不透明な状況だと考えると、ADIZERO BOSTON 10(アディゼロ ボストン 10)こそが、いま買うべき1足なのかもしれません。

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