「adidas Running / アディゼロ新商品発表会2022」が6月29日に開催されました。ADIZERO ADIOS PRO 3を含むADIZERO最新モデルのお披露目イベントということで、ランニングYouTuberなども参加し、アディダスの勢いを感じられるイベントになっていました。
ADIZERO ADIOS PRO 3を実際に履いて走る機会もあり、4kmとインターバルランを体験。距離が短くシューズの特性はそこまで分かりませんでしたが、まずは履いて走ってみたファーストインプレッションなどを速報としてお伝えします(詳細なシューズレビューは後日アップ予定)。
カーボンロッドがフルレングスに
まずは簡単にADIZERO ADIOS PRO 3について紹介しておきます。詳しくはすでに紹介記事をアップしていますので、そちらをご参照ください。ADIZERO ADIOS PRO 3はアディダスのアスリート向けフルマラソンシューズの3代目にあたり、厚底×カーボンロッドという組み合わせで数々の記録を塗り替えてきました。
過去のモデルはカーボンロッドが前足部から中足部にかけてしか入っており、踵側にはカーボンプレートを搭載していました。このため、カーボンロッドとカーボンプレートの連動性に弱点がありましたが、3代目となったアディオスプロ3はカーボンプレートが廃止され、フルレングス一体型のカーボンロッドを採用しています。
これにより、今まで以上に強い反発率を得られるようになり、さらには軽量化も進められており、厚底ながら片足27cmで、215gしかありません。さらにアッパーも改良されており、2代目モデルからしっかりと進化しており、ADIZERO ADIOS PROの完成形に到達した可能性すらあります。
ただそれらはスペック上の話であり、購入検討している人が知りたいのは「実際のところどうなの?」ということですよね。初代や2代目から買い換える意味があるのか、そこまでの大きなスペックアップになっているかということかと思います。
正直、今回はそこまでは確認できていませんが、ここからは実際に履いて感じたことについて書いていきます。
アディゼロタクミに近いフィット感
仕事柄多くののランニングシューズを履いていますが、ランニングシューズにはそれぞれ人間のように個性があります。優しくサポートしてくれるシューズもあれば、「履きこなせるなら履きこなしてみろ」と挑発してくるシューズもあります。アディオスプロはこれまで、比較的優しい正確の穏やかなシューズでした。
ところが今回は履いた瞬間に「早く走り出せ」と急かすようなところがあり、どことなくAdizero Takumi Sen 8を彷彿させる感覚がありました。Takumi Sen 8ほど好戦的ではありませんが、足を入れたら自然と気持ちが上がるのを感じます。個人的にはそういう攻撃的な性格のシューズは好みです。
ランニングシューズの性格はフィット感が影響するというのが、私の個人的な見解です。ADIZERO ADIOS PRO 3はフルレングスのカーボンロッドが注目されがちですが、もしかしたら1番大きな変化はアッパーのフィット感なのかもしれません。まるで肌の一部になったかのような感覚は、限りなくTakumi Sen 8に似ています。
フィット感の高さはアディゼロの特徴のひとつですが、ここ最近はサステナビリティを意識してか、アッパーの素材をリサイクル素材に切り替えた頃から、アディゼロらしいフィット感が影を潜めていたような感じがあります。ところが今回は素材を使いこなせているようで、まったくストレスがありません。
跳ねるからコントロールする技術が必要
まずはグループ走で、私のグループはペースはキロ4:30が最大とのこと(実際にはキロ4:10くらいまで上がった)。距離は4kmしかなく人のペースに合わせたので、正直シューズの本質が分かる前に終了しました。厚底は長く走ってこそ、そのクッション性の高さがわかるものですが、4kmだとそれを体感できません。
ただその中でも感じたことはいくつかあります。浦野雄平選手も言っていることですが、まず前足部の安定感が増しています。安定感も高くて、左右にブレることもありません。推進力に関しては、純度が増している感じがあり、ノイズのない気持ちのいい推進力で足をサポートしてくれます。
これがフルレングスのカーボンロッドに変更した効果なのでしょう。ただ、シューズに慣れていないので、推進力が上方向に逃げます。これは個人的な技術の問題で、シューズに問題があるわけではありません。私の走り方もしくは集団に合わせた走りだと、ベクトルが前ではなく上を向くのでロスになります。
反発力が高いからこそ、その反発力をいかにして推進力に変えるのかが重要になります。それは、走り方のテクニックで対応すべき点で、人によってはADIZERO ADIOS PRO 3に合わせて、フォームの変更が必要になるかもしれません。
シューズに走り方を合わせるというのが最近のレーシングシューズのトレンドで、ADIZERO ADIOS PRO 3もその傾向があります。
制御しきれないほどの加速力
今回のイベントでは、4kmのランニングに加えて、敷地内のスペースを使いトップランナーのペースに合わせたインターバルも行われました。アディゼロが世界記録を出したときのペースがLEDで示されて、それよりも早く走ろうというもの。1本100mくらいを3往復。すなわち6本のインターバルです。
インターバルタイムは10秒。ペースはキロ3分前後なのでかなりハードで、正直なところ絶対に無理だと思ったのですが、そこはADIZERO ADIOS PRO 3。スタート直後はLEDの表示に遅れを取ってしまいましたが、そこからグングン加速していき、LED表示を簡単に抜いてしまいます。
ただ私の1km自己ベストが3分20秒くらいなので、当然へばってきます。4本目あたりから足がパンパンになって、太ももが上がりませんでしたので完全にオーバーペース。でもそこまで上げられたのも、ADIZERO ADIOS PRO 3を履いていたから。自分のポテンシャルを超えた領域まで突っ込んだ結果です。
フルマラソンで履くとしたら、この加速力は注意が必要です。体が動くから前半に貯金を作って……と思ってオーバーペースになり、後半に失速する。トップアスリートのレースシューズが厚底になってから、マラソン大会の中継でそのような光景を何度も目にしています。
速く走れることと速く走っていいことはイコールではない。
それをきちんと理解している人でないと、せっかくの高機能も宝の持ち腐れになってしまうかもしれません。高額なシューズですので、レースのみに使いたくなるかもしれませんが、20kmくらいのペース走を何度かしておいて、ペースをコントロールできるようになってから本番を迎えるなど多少の工夫が必要です。
ボストン11が最適解かもしれない
今回はADIZERO ADIOS PRO 3の試し履きをしましたが、会場にはADIZERO BOSTON 11も置いてありました。かなり軽量化されたということで、実は気になっているシューズのひとつです。前作のBOSTON 10は万能シューズでしたが、残念ながら重たいという課題を抱えていました。
それが軽くなったということで、実際に持たせてもらったのですが、手にした瞬間笑ってしまいました。ほとんどの一般ランナーにとっての正解はこちらです。サブ3.5までのレベルで、レースも練習も1足で済ませたいなら、BOSTON 11を買っておけば間違いありません(走ってないので絶対とは言えませんが)。
ランニングシューズは適材適所が基本で、さらに走力に適したシューズというものがあります。サブスリーを狙うキロ4分台前半よりも速く走りたいなら、ADIZERO ADIOS PRO 3は最高のパートナーになりうるのですが、それよりも遅い場合には、BOSTON 11が最適解。
もっとも、今回はいきなり履いてみたわけで、ADIZERO ADIOS PRO 3のことをそこまで深く理解していません。もっと長い距離を走ったり、最適な走り方を見つけたりすることで、また違った姿を見せてくれる可能性もありますので、急いで買わなくてもいいという人は、正式なレビューまでお待ちください。
ただADIZERO BOSTON 11最強説はずっと言い続けるかもしれませんが。こちらも履いてみないことにはなんとも言えませんが、持っていて損することはないシューズで、ADIZERO ADIOS PRO 3のトレーニングシューズにもなるので、まずはこちらから買ってみるのもありです。
もしくはさらに軽くなったADIZERO JAPAN 7も良さそうです。今回発表されたモデルは、いずれもしっかりとチューニングされており、適材適所で使い分ければ後悔することはないはずです。かなり高いレベルに仕上がっていますので、まずはアディダスのショップなどで試し履きしてみてください。