
すべてのランナーがフルマラソンを目指す必要はありませんが、マラソン大会に出場しない理由が「走れるか不安だから」というランナーは意外とたくさんいます。そんなランナーがマラソンに挑戦するきっかけとなる「TOKYO ROKUTAI FES 2026」が、東京の味の素スタジアムで開催されました。
「TOKYO ROKUTAI FES 2026」は10月3日、4日の2日間開催され、1マイルや5km、10kmといった個人種目と、大会名にもなっている6時間耐久リレー、ハーフリレーマラソン、リレーマラソンなどが行われました。昨年は初日を取材させていただいたので、今年は2日目に現地取材。その内容をレポートします。
東京マラソンにつながるランニングイベント

TOKYO ROKUTAI FES 2026の主催は一般財団法人東京マラソン財団。東京マラソンと繋がりのあるランニングイベントになります。「いずれ東京マラソンを走りたい」というランナーのために東京レガシーハーフマラソンがあり、「まずはマラソン大会を体験したい」というランナーのためにTOKYO ROKUTAI FES 2026があります。
個人種目は1マイルからあるので、初心者でも気軽に参加できますし、ランニングを始めたばかりのランナーは仲間と一緒にリレーマラソンに出場することで、安心してレースを体験できます。より多くのランナーに参加してもらうため、参加費も抑えられているのがTOKYO ROKUTAI FES 2026の特徴です。
たとえば10kmと5kmは、参加費がたったの3,850円。これなら、マラソン大会を経験したことのない人でも、気軽に参加できますよね。ちなみに、「TOKYO 1MILE 公認の部」のように、本格的なランナー向けの種目も用意されています。

興味深いのは、個人競技とリレーを掛け持ちしているランナーが多かったということです。もしかしたら初日も出場している人がいるかもしれません。私も東京から離れていたとしたら、おそらく1泊して、ラン仲間と2日間楽しんでいたような気がします。
それくらい参加費がリーズナブルというのもありますが、理由はもうひとつあります。
TOKYO ROKUTAI FESの「TOKYO ROKUTAI RELAY」もしくは「TOKYO RELAY MARATHON」に出場すると、抽選でチームメンバー全員に東京マラソンの出走権が当たるチャンスがあります。ちなみに「TOKYO RELAY HALF MARATHON」は東京レガシーハーフマラソンの出走権が当たります。

300チームのうち5チームに当たるので、かなりの高確率。もちろん出走権はおまけのようなものですが、なかなか当選できない東京マラソンに仲間と出場できる、またとないチャンス。だから実際に、この大会に出場するために全国からランナーが集結します。
TOKYO ROKUTAI FESは「東京マラソン0次予選」と言っても過言ではないくらい、これまでに多くのランナーが東京マラソンの出走権を掴んでいます。このように、東京マラソンや東京レガシーハーフマラソンにちゃんと繋がっているのが、TOKYO ROKUTAI FESの最大の魅力です。
笑顔とシリアスさが混じり合う1日

今回もスタートから取材したかったのですが、スケジュールの関係で会場入りしたのは、女子の5kmレース「TOKYO WOMEN’S RUN 5K」の途中からになりました。このためスタートの雰囲気は分かりませんが、走り終えた女子ランナーの達成感に溢れた笑顔が印象に残っています。
女子だけのレースというのもありますし、おそらく初マラソンというランナーも一定数いたのでしょう。友人と一緒に走って、手を繋いでゴールするシーンもありました。最近、歳のせいで涙腺が緩いからか、胸にくるシーンもあり、ここからさらに期待できそうな雰囲気から取材開始。
続く10kmレース「TOKYO 10K」も、同じように笑顔あふれる大会になるのかなと思いきや、こちらは雰囲気がまったく変わり、シリアスな雰囲気が漂っており、参加者もどこか緊張しているように見えます。また、初心者によく見られる、ロングタイツを履いているランナーも少ないように感じました。

「ロクタイってこんな雰囲気だった?」と思うくらい空気感が違います。それぞれが緊張しながらも集中しているので、これはこれで悪くありません。ただこれまでのような「フェス感」が薄まっている感じがします。走り終えたランナーも「もっとできたかも」と、結果に満足していない様子。
それは向上心の表れでもあるので、TOKYO ROKUTAI FESがこれまで開催を積み重ねてきたことにより、ランナーを成長させてきた結果なのかもしれません。
そしてリレーマラソンも、ちょっと表情が硬め。リレーマラソンらしい和気藹々とした雰囲気もありますが、それは表の顔で、走り出したらチームのため、自分のためにベストを尽くす。そのために走りに集中しているように見えました。

ちなみに今回はStePスポーツがスポンサーになっており、ランニングシューズのレンタルを行なっていました。これが過去に見たこともないくらい大規模なもので、アシックスやアディダスはもちろんのこと、いくつものブランドをレースで試し履きできる環境でした。
スポーツショップならではの取り組みですし、買おうかどうか迷っていた人にとっては、レースで試せるというこの上ないチャンス。来年も継続されるなら、シューズトライアルとして、このためだけに参加してもいいくらいの品揃えでした。
そして今年もカレーフェスが開催されました。会場受付のすぐ手前にキッチンカーが並んでいて、レースの前後に気軽に食べられるのもこのイベントの魅力です。個人種目だけという人は、レース後にカレーとビールを楽しむなんてこともできます。
走るだけでなく、グルメも合わせて1日楽しめるのがTOKYO ROKUTAI FES 2026のいいところです。
大幅に改善されたもののキャパオーバーの印象

昨年のレポートでは、参加人数に対してコースが狭すぎるとお伝えしましたが、安全に向けての取り組みは大幅に改善していました。まず、コース幅ですが、追い抜きで危険を感じる場所が改善されていて、基本的には見ていて安心感がありました。
ただ、10kmのコース幅(おそらく5kmも)が狭くなる箇所もあり、そこにキロ3分台のトップランナーが追い越していくので、少しヒヤヒヤしました。その部分に関しては完全にキャパオーバー。走力ごとに完全な別レースにするか、コースレイアウトを変えたほうがいいような気がします。

リレーマラソンでは転倒しているランナーを見かけました。すでに転倒していたので、コース幅やキャパオーバーが原因とは限りませんが、リレーマラソンはコース幅もリレーゾーンも改善して、安全に走れるように声掛けもしていましたが、そのようなシーンを見かけました。
1人でも多くのランナーに参加してもらいたいというのと、予算の関係もあるのかもしれませんが、転倒や衝突は楽しくなるはずの思い出を、すべてなかったことにしてしまいます。そうならないためにも、改善に向けてのさらなる取り組みを期待しています。

あくまでも個人的な感想ですが、昨年までは学生の文化祭のようなフレッシュさがあり、それゆえに未熟なところが目につきました。今回は運営体制が変わったのか、東京マラソンに通ずる「きちんと」をさまざまな部分で感じました。
おそらく、ずっと試行錯誤をしているのでしょう。そういう大会は間違いなくランナーから愛される大会になります。おそらく数年後には、東京マラソンや東京レガシーハーフマラソンと並ぶ、東京を代表するランニングイベントになっているのでしょう。
それゆえに、やはり「誰もが安全に走れる」を、これからも最優先してもらいたいところです。

TOKYO ROKUTAI FESが主役になる時代へ

マラソンは孤独なスポーツであり、自分との戦いになります。それはそれで楽しいものの、日本には駅伝という文化があり、それゆえに駅伝だけでなくリレーマラソンも以前から高い人気がありました。
24時間リレーマラソンがいくつも開催されていた時期もあるほど、国内ではリレーマラソンが人気コンテンツでした。ただ、新型コロナウイルスが連れてきた「ランナーの分断」により、多くのリレーマラソンが消えてしまったという過去があります。
このままリレーマラソンは下火になるのかもと感じていましたが、ランニングコミュニティの広がりとともに、再び注目される存在になっています。「TOKYO ROKUTAI FES 2026」でも、おそらくランニングコミュニティで組まれたであろうチームがいくつもありました。

私自身はランニングコミュニティに参加したことがないため、現在の盛り上がりを外から眺めているだけですが、一緒に街を走るだけでなく、レースに出て襷をつなぐようになると、コミュニティの盛り上がりがこれまで以上のものになると感じています。
これまでのTOKYO ROKUTAI FESは東京レガシーハーフマラソン、東京マラソンへと繋がっていく「スタート地点」のランニングイベントでした。でもこれからは、「TOKYO ROKUTAI FESが好き」「TOKYO ROKUTAI FESを仲間と走りたい」というランナーが増えてくるはずです。
そうなったときに、やはり誰もが安心して参加できる大会であってほしいというのが個人的な願いです。ただ、それで個性を失ってしまうのはもったいないという想いもあります。やはり、このランニングイベントはマラソン大会ではなく「FES」なわけです。

マラソン大会では味わえない高揚感や楽しさを体験できる。仲間とひとつになれる。出場することで走ることをもっと好きになる人がどんどん増えていく。それがランニング業界の活性化にも繋がり、ランニングがブームではなく文化になっていく。
もちろんTOKYO ROKUTAI FESだけで、それを実現できるわけではありません。ただ、今年はさらなる可能性を感じられる1日となりました。それをより深く体感するためにも、来年は取材だけでなくチームを組んで出場してみようかなと。
「東京マラソンが1/60の確率で当たるから」と伝えれば、参加してくれる仲間も多そうですし。
TOKYO ROKUTAI FES:https://tokyo-rokutai-fes.jp
