日本一早いマランレポート「第36回啄木の里ふれあいマラソン大会2026」

ふるさとの山に向ひて
言ふことなし
ふるさとの山はありがたきかな

石川啄木のこの詩がそのまま詰まった大会でした。岩手山と姫神山に見守れながら走る21.0975kmは、都会のマラソン大会では感じることができない「静けさ」がそこにあり、「ただそこに山がある」ことで、走り終えたときには心が満たされていました。

こんな素敵な大会を、短くはないマラソン人生で出会ってこなかったことを少し悔しく感じています。口コミや他人の評価だけではわからない魅力がある。「第36回啄木の里ふれあいマラソン大会2026」は、もっともたくさんの大会を自分の足で走ったほうがいいと教しえてくれました。

目次

岩手山と姫神山に見守られるランナーたち

「第36回啄木の里ふれあいマラソン大会2026」はその名前からもわかりますように、若くしてこの世を去った詩人、石川啄木の故郷を走るマラソン大会です。関東から参加するにあたって、盛岡の友人に「何もないよ」と忠告されましたが、「何もない」は都会人にとって最大のご褒美です。

毎年のように東北の大会を走っており、何もなさそうなところにも必ず胸に響くものがありました。だから、少しは何かあると信じていましたが、何もありませんでした。岩手山と姫神山以外は何も。でも、とても満ち足りています。きっと私が求めていたのがそれだから。

「第36回啄木の里ふれあいマラソン大会2026」を走って感じたのは、どこにいても岩手山が姫神山が見守ってくれているということ。その絶対的な安心感は、どことなく懐かしいものでもあります。

アップダウンのあるコースでしたので、手前の山陰に岩手山や姫神山が隠れる区間もありますが、それでも見えないだけで、ずっとそこにいてくれます。それはまるで親離れをし始めた幼き頃、友人と遊んでいる時間も、遠くから見守ってくれた両親のようでした。

往路は力強い父親のような岩手山が気持ちを奮い立たせてくれて、復路は優しい母親のように姫神山が支えてくれる。無償の愛が間違いなくそこにあって、苦しいと感じることもなく、そして過去の自分と向き合いながら、21.0975kmを走り切りました。

また、田園風景の美しさに、何度も声を出してしまいました。まるでランナーを待っていたかのように、ところどころで稲穂が残っており、石川啄木が暮らしていた頃のことを想像しながら、日本の原風景の中を走る贅沢。

あまりに美しい風景が続くので、レース中に何度も立ち止まって写真を撮ってしまいました。「この1kmはしっかり走ろう」と决めていても、目の前に立止ざるを得ない風景がある。これを見ただけでも盛岡まで来たかいがあるというものです。

都会のマラソン大会では決してできない体験が「第36回啄木の里ふれあいマラソン大会2026」にはあったわけです。何もないからこそ浮かび上がるものがある。削ぎ落とされたことで見えてきた「本当に大切なもの」が間違いなくここにありました。

自分と向き合い支えてくれることを感謝する

「第36回啄木の里ふれあいマラソン大会2026」はハーフマラソンと10km、3kmの種目があります。スタートはハーフマラソンからで、コースは重なっていて、それぞれ折り返し場所が異なります。このため、ハーフマラソンの後半は10kmのランナーと並走します。

こういうスタイルのマラソン大会だと「スピードが違って危ない」という口コミをよく目にしますが、少なくとも私の完走タイム1時間45分くらいのペースであれば、そういうことはありませんでした。参加者数とコース幅のバランスがよく、スピード差はあっても無理なく追い抜きできます。

むしろ、ハーフマラソンの後半は孤立しやすいので、合流した10kmのランナーからはエネルギーをもらえました。合流ポイントのスタッフも手慣れたもので、多くを語るのではなく、スマートに誘導するので事故になることもなさそうでした。

こういうところが、私の知っている「東北らしさ」だったりします。雄弁ではないし、何だったら声もそれほど出さない印象(東北の都市部を除き)。実際にコース上でのランナーの声はあまり多くありません。一方で人数は少ないものの、沿道では地元の方たちが全力で声援を送ってくれました。

そこは私の知っている東北とは少し違っており、驚きでもありました。石川啄木が若い世代に紡いだ「大切なこと」が連綿と受け継がれてきたからなのかもしれません。私はこの大会を「何もない」と表現しましたが、人数は少なくても、ランナーを支えてくれる人たちは間違いなくそこにいます。

エイドはシンプル。水とスポーツドリンクのみ。人によっては「給食が欲しい」となるのかもしれませんが、ハーフマラソンではエネルギー補給は必要ありません。大会によっては地元のグルメを出すことがありますが、開催された地域はそんな規模の町でもありません。

必要ないなら無理して出さない。それも潔く感じましたし、そして走り終えた後にはおにぎりとゆで卵「2個も!」が用意されていました。会場では物販もあり、200円で豚汁も売られています(最終ランナーまで応援していたら、寒さもあって残念ながら売り切れていましたが)。

あえて用意しすぎない。その結果、自分と向き合う時間も必然的に長くなります。自分の体の声を聞き、心を上手くコントロールしながら、その日にできるベストを尽くす。そんなマラソンの基本を思い出させてもらいました。

アップダウンが続く厳しいコースさえも魅力的

レース後の昂りに任せてレポートしてきましたが、ここで少し冷静に振り返るとします。

まずは遠方からのアクセスについて。これはちょっと大変です。選択肢は2つあって、盛岡駅からバスに乗って石川啄木記念館前で下車して、そこから歩くか、IGRいわて銀河鉄道の渋民駅か好魔駅で下車して、シャトルバスで会場に向かいます。

何か難しいかというと、バスも電車も本数が限られているということ。私は夜行バスで東京から盛岡に向かい、到着してすぐに路線バスに乗り換えましたが、夜行バスが遅れていたら、会場入りがギリギリになっていました。前泊すればいいだけなのですが、土曜日のホテルが驚くほど高く……

そして、盛岡に到着したら、想定外の寒さに焦りました。盛岡には毎年秋に来ており、慣れているはずなのに今年は特に寒く、ウェアをどうしようか迷ったほど。完走証に書かれていた気温は13.6℃。到着した時間だと10℃以下だったかもしれません(調べたら4℃でした)。

こうなるとウェア選びが大変。半袖でも行けそうですが、今回は追い込むつもりはなかったので長袖の上に半袖を重ね着。しかも急遽なので長袖はメリノウール。それでも汗だくにはならなかったので、悪くない選択だったのかもしれません。ただアップダウンが厳しいのもあって、汗をかいているランナーも少なくありません。

エイドは水とスポーツドリンクだけとお伝えしましたが、エイドの数はかなりありました。実際に数えてはいませんが、2kmごとくらいに用意されています。昨年まで9月開催にしていた名残かもしれません。ちょっと過剰かなとは思いましたが、エイドは地元の人たちと交流できる場なので、継続してもらいたいところです。

それだけのエイドが必要なのは、とにかくアップダウンが厳しいから。気温が低かったからエイドに立ち寄る回数は少なくなりましたが、20℃を超えていたら大変なことになっていたはずです。ちなみに、私の平均ペースは4分56秒/kmでしたが、SUUNTOによると高度上昇は214m。

普通の条件なら4分49秒/kmになったとのこと。完走タイムが約2分くらい違うわけですから、いかに厳しいコースだったのかがわかります。それに加えて制限時間が2時間30分。景色の美しさに惑わされていましたが、どうやらかなり硬派な大会だったようです。

後方のランナーの中には歩いている方もいましたが、それでもしっかり前を見つめていて、みんなしっかり練習を重ねてきたことが伝わってきます。きっと3時間制限にすれば、もっとランナーが集まるのはわかっているけど、それでは人が育たない。故郷で教鞭をとった啄木先生の理念がここにも生きているようです。

また戻ってきたくなる「啄木の里ふれあいマラソン大会」

制限時間やコースは厳しい「啄木の里ふれあいマラソン大会」でしたが、選手の受け入れや大会を盛り上げようという気持ちが開会式にも表れていて、とても気持ちのいい大会でした。

参加賞Tシャツも「このデザインは……」となったのですが、それを着ている他のランナーを見て、レースで着ればよかったなと後悔。おしゃれではありませんが、歴史と想いが詰まっているような気がして。

ちなみに参加賞Tシャツとは別にRELIVEのプレミアムコットンTシャツ(リカバリーウェア)も配布していました。いやらしいなと思いながら、ホームページで価格を見たら9,900円(大会の参加費が4,000円なのに)。

すでにお伝えしましたように、エイドの給食はありませんが、ゴールしたらおにぎりとゆで卵が用意されていて、さらに石川啄木記念館も無料で見学できます。会場では地元野菜の販売もあり、きれいな道の駅もすぐ近くにあります。

レースはとてもシンプルですが、おもてなしも充実しているし、アフターレースも楽しめます。盛岡駅周辺にまで戻れはホテルも飲食店も多数あって、東京まで新幹線で最短2時間10分。前泊も後泊も楽しめる大会です。

こうなると岩手県の他のマラソン大会も気になりますが、また岩手山と姫神山に守られながら走ってみたい気持ちにもあります。来年はどの大会にするかはまだわかりませんが、「啄木の里ふれあいマラソン大会」も有力な候補です。

それが来年でなくても、必ず戻ってくることになるはずです。こんなに美しいコースを走れる大会は、国内でもそう多くはありませんから。

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