日本一速いマラソンレポート「太郎坊チャレンジ2026」

地域観光の活性化を目指してスタートした太郎坊チャレンジ。滋賀県東近江市に位置する太郎坊宮の379段の階段を駆け上がるだけのシンプルなレースですが、全力疾走をすると途中で動けなくなり、自分の限界と向き合うことになり、フィニッシュしたときの達成感は格別です。

年々大会規模が大きくなっており、今年は晴天に恵まれたのもあってか、会場は大盛況。緊張感のある表情をしている小学生もいれば、数え切れないほどのステアクライミングレースを経験してきた猛者もいて、マラソン大会にはないカラフルさがそこにはありました。

今日はそんな「太郎坊チャレンジ2026」のレースレポートをお届けします。

目次

最高気温28℃の中で開催される熱い戦い

この日の予想最高気温は28℃。屋外のショートステアクライミングとしてはベストコンディション。体がしっかりと温まった状態でスタートできますし、心拍数がある程度上がった状態で走り出せるので、好記録が期待できます。

実際に一発勝負となる一般アスリート男子では、優勝者が48秒82の好記録で、2位も49秒92というタイムを記録しています。ただ、記録よりもとにかく、会場の空気感がすばらしかったことをRUNNING STREET 365の読者にはお伝えしたい。

1レースは1〜2分で終わりますが、第1レースとなるSJC(エリートクラス)は8時半にスタート。最終レースとなる一般チャレンジ男子3は15時終了。フルマラソンの大会と変わらない6時間半の熱戦。参加したのは小学生低学年から、シニアまでの幅広い層。それに加えて愛犬と走る「ドッグ・ペア」の部門も。

部門ごとの正式な人数の変化は把握していませんが、今年は小学生とドッグ・ペアの部門の出場者が多かったように感じました。どちらも会場に活気をもたらしており、それもこれまで以上に会場がカラフルに感じた理由なのかもしれません。

そして興味深いのは、地域のランニング系イベントとしては珍しく、物販や飲食ブースをたくさんの参加者が利用していました。大会のTシャツ販売ブースはいつ見ても、誰かがTシャツを購入していましたし、レースを終えたランナーが飲食ブースで軽く打ち上げする姿も見られました。

どちらもリーズナブルな価格設定(近江牛の焼きそばが400円!)なのもありますが、お祭りのような雰囲気と、ステアクライミングという非日常の相乗効果で財布の紐が緩んだのかもしれません。私も自分のレースを終えて、焼きそばとビール、そして追加でたこ焼きも買ってしまいました。

ちょっと羽目を外してしまいたくなるくらい会場の雰囲気がよく、これまで以上に心地いい空間になっていました。もちろんメインはステアクライミング。379段の石段は、高層ビルとはまったく異なる技術が求められ、そしてこの日までに積み重ねてきたものが結果として表れます。

きちんと積み重ねてきた人は、確実に過去の自分を超えていける。どこかに甘さがあったら、残念な結果になってしまう。それは残酷でもあり、だからこそ挑戦しがいがあります。そして、私は1年間きちんと積み重ねることができず……まぁそんな年もあります。

私のチャレンジは近いうちにRUNNING STREET 365プロデュースのYouTubeチャンネル「ちょっと走ってくる」に公開予定ですので、もしよければチャンネル登録してお待ちください。

マラソンにはない絆が生まれる太郎坊チャレンジ

太郎坊チャレンジは国内のステアクライミングレースの中でも個性的な大会になります。まず屋外での開催であり、しかも階段は石段。上った階段を降りてくるので、他の選手に声援を送ることもできますし、トップレベルの選手の走りを目の前で見ることができます。

そのように人と人が交わりやすく、自然と繋がっていくのが太郎坊チャレンジの魅力のひとつです。しかもドッグ・ペアのように愛犬との絆が強くなる種目もありますし、小学生低学年は保護者と走ることになるので、親子の絆が強まります。

また、チームの部では5人の仲間と一緒に走り、その合計タイムで競うことになるため、仲間との距離がさらに近くなります。階段を駆け上がるのは個人の戦いではありますが、そこに集まった人たちは、同じ戦いに挑む仲間でもあり、仲間意識も湧いてきます。

出走の順番待ちの間に、前後の選手と言葉を交わす。その輪がどんどん大きくなって、会場に一体感が生まれるわけです。今年は800人が参加したとのことですが、800人がひとつになる。いや、ボランティアスタッフも運営も、そして応援に来てくれた人たちも含めてひとつになっていたような気がします。

それを象徴するのが、会場内何度も聞こえてきた「ありがとう」の声でした。走り終えた選手が、ボランティアスタッフや運営の方に「楽しかったです。ありがとうございました」とお礼を伝えているシーンを何度も目撃しました。「また来年」という声も。

そういうマラソン大会もありますが、ここまでの一体感はなかなか経験できるものではありません。ロードのレースとは別物ですし、大会規模も違うのでどこまで参考になるかはわかりませんが、空気感づくりで悩んでいるすべてのマラソン大会の運営者やイベント運営者は、太郎坊チャレンジを視察してもらいたいところ。

ステアクライミングという、日本ではまだまだニッチな競技を活用して、全国からの集客に成功しており、太郎坊宮の知名度も確実に上がっていて、地域の活性化に貢献しています。それでいて大会参加者の満足度も高く、リピーターも大勢います。

ただ階段を駆け上がるだけなのに、プライスレスな体験を与えてくれます。心臓が飛び出し、肺が潰れそうになる経験も付随してきますが、それも含めて太郎坊チャレンジ。いや、その唯一無二の苦しさがベースにあるからこそ、すべてが上手く回っているのですが。

一般の参拝者への影響をどう考えるか

太郎坊チャレンジだけが影響しているわけではないのでしょうが、この数年で太郎坊宮の注目度がかなり高まっているのを今回強く感じました。それこそ晴天が影響したのかもしれませんが、太郎坊宮に参拝する方がとにかく大勢いました。

実際にこの3年間で「太郎坊宮」の検索数は、徐々にではありますが増加傾向にあります。観光スポットとしての認知増加に、太郎坊チャレンジが多少なりとも関与しているはずです。

ただ参拝者の目的は太郎坊宮であり、参道でレースをしているなんて知りませんし、駐車場も満車で不便な思いをすることになった方もいるはずです。屋外でランニング系イベントをする以上、誰かの迷惑になるというのは避けられないことではありますが、このままだといずれ大きな課題になるかもしれません。

階段は真ん中に手すりがあって左右に2列。これにより走者と参拝者が衝突することはありませんが、足腰がそれほど強くない参拝客も、1秒を削りたいステアクライマーも「手すりを使いたい」。応援したい人も階段に留まりますし、階段の途中で休憩する人もいて、上りたい人も降りたい人もいる。

誰が悪いということではなく、階段の幅でできることが限られていて、すべてを丸く収めるのが難しいということです。

  • 走り終えた選手は車道を通って下山してもらう
  • 階段での立ち止まっての応援をNGとする
  • 選手の手すり利用を禁止する

将来的にはこんなことも考えなくてはいけないかもしれません。これらはあくまでも例ですので、太郎坊チャレンジの運営チームなら、時間をかけて検討することでもっといいアイデアが浮かぶはずです。いずれにしても参拝者との共存は今後の課題になる気がします。

私たち参加者も「一般の参拝者が優先」という意識を共有する必要があります。誰が声を上げるのかという話がありますが、「境内を占有しない」「率先して道をあける」など、ルールではなく気遣いの範囲で意識を共有できると、自分に勝つことを目指している人たちの集まりとして美しいのですが。

これはもうアナウンスしていくしかないのでしょう。運営やボランティアスタッフだけでなく、エリート選手もゲストも含めて、太郎坊宮の境内を使わせてもらっているという意識をブリーフィングなどで共有する。

盛り上がっている今だからこそ、そういうことを始めるタイミングのように感じました(外側から勝手なことを言っているだけで申し訳ないのですが)。

あとは細かいことですが、FINSHのマットと計測マットの位置が逆のほうがいいかなと。FINSHのマットが手前にあるから、そこで倒れて計測が遅れるケースなんてことも起きていたのではないかと。

そういうちょっとしたことは、大会後に議論されるのでしょうから何も心配していませんが。

太郎坊チャレンジ2026はステアクライミングの最高の入口になる

一般の参拝者に迷惑をかけないという課題を感じましたが、一方で太郎坊宮の参拝者は興味深くイベントを見てくれていたようにも感じました。軽やかに駆け上がっていく選手を見て、「信じられない」と声に出す人もいましたし、ボランティアスタッフにいろいろ質問している方もいました。

もしかしたら、そんな参拝者も何かのきっかけで来年の参加者募集の告知を目にしたら、参加者として戻ってきてくれるかもしれません。「1年前にレースを見て……」というのはよくある話です。

そして、太郎坊チャレンジはそういう人も含めて、あらゆる人に対して門戸を開いています。運動が得意でなくてもいいんです。普段から運動をほとんどしていなくてもいいんです。太郎坊チャレンジがそのきっかけになればいい。

もし十分な練習を積むことができなければ、思うように走れないという結果に対して、「これからがんばろう」となりますし、最高の準備をできたという人は、その時点でもうステアクライミングの虜になっているはずです。

いずれにしても、1度足を踏み入れたら抜け出せないのが太郎坊チャレンジであり、ステアクライミングでもあります。

そういう意味では、日本国内のステアクライミングレースがひとつにまとまると面白いかもしれません。たとえば太郎坊チャレンジの会場で別レースのエントリーができる。全国のステアクライミングレースのパンフレットを配るとか。

ステアクライミングレースの入口として、太郎坊チャレンジはこれ以上ないくらい最高の大会です。他の大会には他の大会なりの魅力がありますが、楽しい経験ができた初挑戦者が「また走りたい」「他のレースも出てみたい」となりやすいから、そこで別大会を申し込めると広がっていくのかなと。

もちろん、翌年の太郎坊チャレンジの仮申込とかでもいいのですが(予算の関係で難しいのでしょうけど)。

今年は都庁でもステアクライミングレースが開催されるなど、国内のステアクライミングにとって大きな転機になります。2026年から2027年にブレイクスルーして、爆発的な人気イベントになる可能性すらあると考えています。

そして、太郎坊チャレンジ2026に参加して、それは確信へと変わりました。ステアクライミングだからこその世界観。ステアクライミングだからこそ得られる体験や満足感。そのすべてが、今年の太郎坊チャレンジに詰まっていたような気がします。

だからこそ、国内のステアクライミングが力を合わせて「次に繋げる」があるといいなと。

最後に、あくまでも個人的な願望ですが、年2回くらい開催してくれたらいいのになと。マラソン大会やランニングイベントを、年1回しかしてはいけないなんてルールはありませんので。まぁ自分で走りに来ればいいだけなんですけどね。

太郎坊チャレンジ:https://tarobo-challenge.com

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