アディダスのシューズと言えばBOOSTフォームですよね。このBOOST搭載のシューズの誕生により、世界最高記録が何度も塗り替えられ、速く走るためのシューズと認知されてきた一方で、その独特なクッション性の高さから敬遠するランナーさんも出てきました。
実際にadiZERO japan BOOSTの初代を購入した私は、100kmも走らないうちに、シューズをアフリカに送る高橋尚子さんのスマイルアフリカプロジェクトに提供しました。
そしてBOOST機能のないadiZERO Feather RK2(アディゼロ フェザー RK2)を選び、最近ではadiZERO CS11(アディゼロ CS11)を購入しています。あえてBOOSTを選ばないアディダスのシューズ好きというのは一定数いるような気がします。
BOOSTフォームにより世界最高記録が更新され、箱根駅伝では青山学院大学がadiZERO takumi sen(アディゼロ タクミ セン)シリーズで圧巻の3連覇を達成したことで、走れるシューズという印象が高まってはいるものの、そのことでBOOSTシューズはどうも手を出しにくいと印象も高まっているのかもしれません。
そんななか登場したadiZERO japan BOOST 3ですが、先日開催されたアディダスのランイベント『GREEN LIGHT RUN TOKYO』で使用し、フルマラソン以上の距離を走ってきましたので、その使用感をレビューします。
存在感を出さずにランナーをサポートするBOOST
初代adiZERO japan BOOSTは「どうだBOOSTフォームはこんなにもすごいんだ」と言わんばかりに、BOOSTフォームを効かせたシューズでした。このため、ランナーによっては走りづらいという印象を持ったかもしれません。
ショックを吸収するタイミング、踏み込みのタイミングなどが、クッションによりほんのわずかですが遅れる感覚があり、慣れてこないと「気持ち悪い」と感じるランナーも少なくなかったかと思います。
とくに足の感覚がするどいシリアスランナーほど、その傾向が強かったはずです。
ところが、改良を重ねて作られたadiZERO japan BOOST 3ではBOOSTが必要以上に主張することはありません。BOOSTの厚みをできるかぎり薄くセッティングしていることで、これまで感じていた「遅れ」を感じることはありません。
それでいて、足が地面を離れる瞬間に軽く足を送り出してくれます。これまで地面側に逃げていた力を、上手に反発力に変えています。
これまでBOOSTのもつ独特なクッション性や反発力を避けてきた人でも、ほぼ違和感なく走り込むことができるように仕上がっています。そういう意味ではシリアスランナーのレース用シューズとしては非常に優秀なシューズです。
BOOSTの感覚が合わなくて、アディダスのシューズから離れたシリアスランナーにこそ履いてもらいところです。
安定感があり足を運びやすい
adiZERO takumi sen BOOSTくらいのスピードシューズになると、履いて立ったときの安定感はほとんどなく、走り始めて初めていい姿勢になることができます。adiZERO japan BOOST 3はそれよりも安定感があり、無理なスピードは要求されません。
もちろんスピードを出すこともできますが、簡単に3分/kmのスピードが出るというよりは、4〜5分/kmで安定して走り続けられるシューズです。このため、膝のブレがあまりなく、すっと足が前に運ばれます。
これはBOOSTの効果もありますが、裏面に付けられているスタビライザーの効果のほうが大きいかもしれません。
少しスピードを落とせば、フラットに足を接地して体重移動するだけで、オートマチックに足運びをすることができます。ガツガツ攻めて走るよりは、イーブンペースで淡々と走るタイプのシューズです。
踵着地気味のランナーですと、やや強めに反発力を感じるかもしれません。これはBOOSTの厚みが踵側のほうが厚くなっているためです。
速いランナーほどつま先側(フォアフット)で着地する傾向があるため、3時間台の前半のランナーはBOOSTの反発力を活かし、3時間台の後半のランナーにはBOOSTのクッション性を活かそうという意図が感じられます。
そういう意味では、フラット着地が最も適していますが、フラット基準で多少前後にズレても、きれいな反発力とクッション性を感じられるはずです。極端なフォアフットや、踵着地ですと違和感のほうが大きいかもしれません。
状況に応じて使い分けしたいシューズ
残念ながらadiZERO japan BOOST 3は誰にでも合うランニングシューズというわけではありません。クッション性よりも、推進力を出すためのサポート力のほうが強いため、思った以上の負荷が筋肉にかかります。
例えば、後ろからずっと押してもらいながら走っている、もしくは下り坂を走り続けることをイメージしてください。最初はそのスピードで走れても、徐々に足への疲労が溜まっていきます。adiZERO japan BOOST 3を履くというのはそういうことです。
その長時間の負荷に耐えうるランナーでなければ、足の故障を招く可能性があります。できればフルマラソンを3時間30分くらいで走れるランナー。もしくは1kmを4分以内に走れるくらいの筋力が備わっていれば理想です。
そのレベルのランナーでも、フルマラソンや勝負レース直後の、足に疲労があるようなときにはできるだけ他のシューズを履いたほうがいいかもしれません。リカバリーにはもう少し安定感のあるadiZERO CS11のほうがおすすめです。
シリアスランナーであれば、3種類のシューズを使い分けできれば理想的です。
レース用:adiZERO japan BOOST 3
練習用:adiZERO Feather RK2
リカバリー用:adiZERO CS11
サポートのないadiZERO Feather RK2で脚を作り、レースではadiZERO japan BOOST 3で1秒でもタイムを削ります。そして脚の回復をはかる期間にはadiZERO CS11で、回復を目指しながらも緩みすぎないように走る。
もちろんadiZERO japan BOOST 3だけで十分という人もいるかもしれません。何足もシューズを持っていると、家族内で肩身の狭い思いをする人もいるはずです。ですので、無理に3種類揃える必要はありません。
adiZERO japan BOOST 3はスピードが出る反面、それくらい負荷のかかりやすいシューズであること認識してもらえれば十分です。
シリアスランナー向けランニングシューズの完成形
adiZERO japan BOOST 3はアディダスのランニングシューズの中で、シリアスランナー向けとしてはひとつの完成形です。初代adiZERO japan BOOSTは様々なチャレンジが込められていましたが、ここまでの進化で無駄を削ぎ落とし、理想の形に落ち着いています。
これから新しいadiZERO japan BOOSTが発売されても、ここからのマイナーチェンジくらいで、大きな進化はしばらくないように感じます。ですので、これまでBOOST搭載のシューズを避けていたシリアスランナーも、もう一度履いてみることをおすすめします。
非常にバランス良く仕上がっていることを感じられるはずです。以前のようにBOOSTの力で走っているというよりは、自分の力を効率よく使っている感覚で走ることができるはずです。
ちなみに今回のレビューで使用したモデルは『TOKYO EDITION』シリーズ限定モデルadizero Japan boost 3 rising sunです。300足の限定品ですが、東京のアディダス直営店とadidas RUNBASEで入手可能です。
adiZERO japan BOOST商品概要
サイズ | メンズ:24.5-31.0cm レディース:22.5-27.0cm |
価格 | 15,600円 |
ヒール高 | 3.5cm |
アディダスオンライン:http://shop.adidas.jp
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