ナイキのランニングシューズのなかでも人気が高く、今年のモデルで35代目となったナイキ ズーム ペガサス。そのペガサスシリーズをベースにして作られた「ナイキ ズーム ペガサス ターボ」が2018年8月2日に発売になります。
このペガサスターボの発売により、ナイキのズームシリーズは4種類のラインナップとなり、使用用途ごとの使い分けがより細分化できるようになりました。
ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%
ナイキ ズーム フライ
ナイキ ズーム ペガサス ターボ
ナイキ ズーム ペガサス
これまではナイキ ズーム フライの下にペガサスが位置していましたが、ペガサスは汎用性が高いランニングシューズで、ヴェイパーフライ 4%やフライを使用しているランナーのリカバリーラン用に使われてきました。
ただ、少し速いスピードを出そうとすると、トップランナーにとってはややスペック不足な感が否めませんでした。例えばテンポ走をするような場合、ペガサスではスピードが不足し、ズームフライでは足への負担が大きくなります。
そんなペガサスとズームフライの間を埋めるシューズとしてナイキ ズーム ペガサス ターボは誕生しました。毎日のトレーニングに使えるけど、スピードも出すことができるランニングシューズ。ここではそんなペガサスターボの特徴についてご紹介していきます。
速く走れるけど速く走るためのシューズではない
まず大前提としてお伝えしておかなくてはいけないのは、ナイキ ズーム ペガサス ターボはサブ3を狙うようなシューズではないということです。もしかしたらナイキは「速く走れるシューズ」として売り出すかもしれませんが、スピードシューズはズームフライとヴェイパーフライ4%です。
このシューズはもちろん速く走れます。ただ、それは相対的なもので、ノーマルのペガサスと比べればスピードが出るというだけのことです。そしてスピードが出るということと、スピードを出して走ることとは違います。
例えば大迫選手や設楽選手は、このシューズを履いて3時間以内にフルマラソンを走ることができます。キロ4分くらいなら問題なく耐えられるシューズですが、スピードを出すために生まれてきたわけではありません。
100%を出し切って走るのではなく、70〜80%くらいの出力でややリラックスした状態で履くランニングシューズ。それを証明するのがペガサス35と同じようにシューレースホールを1段減らしたデザインにあります。
ズームフライやヴェイパーフライ4%は前足部で走りますので、しっかりとしたホールドが必要ですが、ペガサスやペガサスターボはできるだけ前足部を使わないようにすることをコンセプトにしていますので、前足部の自由度が増すようにシューレースホールが1段だけ少なくなっています。
このことが走り方に影響するのですが、走り方については後ほど説明するとして、次にナイキ ズーム ペガサス ターボの何が優れているのかについてご紹介します。
ナイキ ズーム ペガサス ターボの特徴
ナイキ ズーム ペガサス ターボはその名前から分かりますように、ペガサスのDNAを受け継いでいるランニングシューズです。ただ、ペガサスも常に進化しているシューズですので、現行のペガサス35のコンセプトを踏襲していると考えてください。
ただ、ペガサス35ではスピードに乗りにくいという問題があるため、ソール部を根本から見直しています。ペガサスターボはヴェイパーフライで使われたミッドソールを採用しています。
ヴェイパーフライはカーボンプレートばかりが注目されますが、それ以上の技術としてエネルギーリターンが85%もあるナイキ ズームX フォームを採用しています。通常のフォーム材は押しても35〜40%はエネルギーが逃げてしまいます。ところがナイキ ズームX フォームは15%しか力が逃げません。
押した分だけ返ってくるため、理想的なエネルギー循環が成り立っています。このエネルギーリターンによって、これまでよりも力をかけずに前に進めるため、レース後半になっても失速せずにゴールできるというわけです。
ナイキ ズーム ペガサス ターボではそのナイキ ズームX フォームをミッドソールに使用しています。ただしすべてのフォームをナイキ ズームX フォームにすると、シューズの耐久性が下がってしまうため、エピックなどに採用しているリアクトフォームと組み合わされています。
ナイキ ズーム ペガサス ターボは毎日履くためのランニングシューズですので、耐久性はとても重要です。シューズ寿命は800kmを想定した開発が行われ、実際にそれだけの耐久力をつけてズームシリーズのラインナップに加わりました。
ヴェイパーフライやズームフライのようにプレートを埋め込まなかったのも、毎日使うためのシューズだからです。キプチョゲ選手やフラガナン選手は、カーボンプレートの有効性は認めていますが、日々の練習にはプレートによる跳ねは必要ないとしています。
その結果、ヴェイパーフライの特徴でもあるナイキ ズームX フォームだけがペガサスに組み込まれ、「加速するペガサス=ペガサスターボ」が誕生しました。そして、すでに多くのトップアスリートが長距離練習や軽めの練習で使用しています。
このことからも、このシューズのポテンシャルの高さが伝わってきます。決して初級者や中級者向けのシューズというわけでなく、すべてのランナーにとって最高のトレーニングシューズとなるのがナイキ ズーム ペガサス ターボです。
ナイキ ズーム ペガサス ターボの走り方
すでに説明しましたように、ペガサスターボはガツガツ走るためのランニングシューズではありません。インソールにクッション性を持たせたこともあって、前足部から着地をすると柔らかさだけが強調され、フワフワした感じになります。
ペガサスターボはペガサス35と同じように、基本的にはフラット気味に足を下ろしつつも、ほんの少しだけ踵を先に接地させます。そこで地面をしっかりと押して、その反発力を使って重心を前足部に移していきます。
ポイントは従来の踵着地のようにローリングさせるのではなく、「地面を押して、足を引き上げる」を繰り返すことです。地面を蹴るのではなく、地面を押すというのが履きこなすためのコツになります。
実際に履いて試してみると分かると思いますが、ソールの中で唯一柔らかさを感じずに着地できるポイントが踵部前方(ZOOM Xのロゴあたり)にあります。そこで接地して、そのあとすぐに足を引き上げるようにすれば、前足部の柔らかさも感じることはありません。
むしろ「硬いシューズ」という印象になるはずです。そして、足がしっかりと前に向かっていることに気づくはずです。ペガサスのDNAを引き継いでいるランニングシューズですから、直進性への強いこだわりがあります。
これはペガサス34の頃から感じていたもので、ソールの微妙な形状によって自然と足がまっすぐに抜けるような構造になっています。このため、ペガサス34や35は真っ直ぐに立つのが難しいシューズです。
ペガサスターボはそこまでではないにしても、真っ直ぐに立つのは簡単ではありません。これは片足立ちをしてみれば分かりますが、裸足で片足立ちするときの何倍も集中力と筋力を求められます。
ただ、ペガサスターボは歩くために作られたわけではありません。走ったときに最大の安定感を出すことができます。このため、お店で試し履きしても、不安定で気持ち悪いと感じるかもしれません。
でも、ここでご紹介した正しい接地方法で走れば、これまで以上に安定した走りを手に入れることができるはずです。普段履きにするのでなければ、試し履き時の不安定さは無視してかまいません。
ナイキ ズーム ペガサス ターボのレビュー
ナイキのペガサスターボ発表会で、実際にナイキ ズーム ペガサス ターボを履いて走ることができたので、そのとき感じたことをレビューします。
まずはフィット感。これは足型が人それぞれ違いますのでなんとも言えませんが、かなり足にフィットします。ペガサスと同じ足型を使っていると思うのですが、ペガサス35よりもしっかりと足に吸い付きます。
特別軽いというようなことはありません。軽さでいえばズームフライやヴェイパーフライ4%のほうが快適です。ただ、この重さが走ったときの安定感を作り出しています。毎日履くシューズだからこそ軽量よりも安定性を優先したのでしょう。
まずはスピード練習を行いました。ここでナイキ ズーム ペガサス ターボはナイキ ズームX フォームを使った反発力をいかんなく発揮してくれます。どんどん加速して、一気にトップスピードに到達します。
さらにはしっかりと足に追従してくれますので、足の運びもスムーズに行なえます。これこそ速く走れる最大の理由ですが、やはり速く走るためのシューズでないことには変わりありません。
スピード練習のあとに1マイルのタイムトライアルをしましたが、シューズの安定感とともにシューズの重さを感じます。安定した推進力と反発力はあるものの、ズームフライやヴェイパーフライ4%のようにスピードを後押ししてくれるものとは違います。
ただしトレーニングであればその重さが負荷になり、跳ねるようなサポートがないことが筋力アップに繋がります。ナイキ ズーム ペガサス ターボはあくまでも鍛えるためのシューズという位置づけです。
レースで自己ベスト更新を狙うのであれば、ペガサスターボではなくズームフライやヴェイパーフライ4%を選ぶべきです。ランニングシューズはレース用と練習用の2足体制(もしくはもっと多く)が理想です。
これはナイキのランニングシューズに限ったことではありません。この世の中にオールマイティなランニングシューズはありません。すべてのシューズにコンセプトがあり、それを適材適所で使い分けなくてはいけません。
とはいえ、お小遣い制の市民ランナーがいくつものシューズを揃えるのは簡単ではありませんよね。そういう意味でズームシリーズの中から1足だけを選ぶなら、ペガサスターボが最適解ということになります。
毎日走れて、そこそこスピードも出せる。ヴェイパーフライ4%のように自分のポテンシャルをすべて引き出せるわけではありませんが、トータルバランスに優れている1足だと実際に走ってみて感じました。
NIKE+ RUN CLUBアプリで7/19に先行販売。一般販売は8/2からですので、秋レースに向けての走り込みに絶好のタイミングです。売価は税込で19,440円と決してリーズナブルではありませんが、それだけの価値のある1足です。
ペガサスではやや物足りなさを感じていたランナーさんや、ズームフライやヴェイパーフライ4%の耐久性に不安を感じて練習用のシューズを探しているランナーさんにおすすめしたい1足です。
ボーナスがまだ残っているなら、8月2日まで2万円だけでも確保しておきましょう。
ナイキ ズーム ペガサス ターボ スペック
発売日 | 先行販売:2018年7月19日 一般販売:2018年8月2日 ※先行発売はNIKE+ RUN CLUBアプリ使用 |
サイズ | 未発表 |
重さ | メンズ(28cm):238g ウイメンズ(25cm):195g |
価格 | 19,440円(税込) |