【シューズレビュー】超優等生に進化したオールラウンダー「ADIZERO BOSTON 13」

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先日、アディダス ジャパンの「ADIZERO BOSTON 13 TOUR」に招待いただき、そのときに6月4日に発売される最新モデルのランニングシューズ「ADIZERO BOSTON 13」を提供していただきました。「ADIZERO BOSTON 13 TOUR」の記事でも簡単なレビューをしましたが、今回はさらに深堀りしたレビューを行います。

前作の「ADIZERO BOSTON 12」とどのような違いがあるのか、買い替えるメリットはあるのかなど、進化の方向性や「ADIZERO BOSTON 13」のサイズ感や重さ、走りやすさなどを詳しく解説していきます。これから購入を検討している方はぜひ参考にしてください。

目次

「ADIZERO BOSTON 13」の魅力は安定性にあり

「ADIZERO BOSTON 13 TOUR」のプチレビューでもお伝えしましたが、前モデルの「ADIZERO BOSTON 12」と比較して、足首周りのフィット感が大幅に向上しています。

「ADIZERO BOSTON 12」はシューズ全体のフィット感は高いものの、足首周りのフィット感が低いため、走っていて脱げるのではないかと心配になりますが、「ADIZERO BOSTON 13」は足首周りに吸い付くようなフィット感があり、安心してスピードを出すことができます。

足首周りの感覚としては「ADIZERO SL 2」に近いものがあり、履いていて心地よさも感じます。おそらく、ほとんどの人が、「ADIZERO BOSTON 13」を履いた瞬間に、その安心感を気に入るはずで、これだけでも前モデルから買い替える価値があります。

ただ、本質的な部分での前モデルからの大きな違いは、安定性にあります。前足部の幅が少し広がり、さらに前モデルよりも、Lightstrike Proを多く使っているため、着地したときに足裏全体で地面を受けている感じがあります。

左右へのブレが少なく、それでいて履いていて気持ちいい。

「ADIZERO BOSTON 13」を端的に表すと、そのような表現になります。ただ、あくまでもそれは感覚の部分での比較です。本当に体感できるほどの変化があったのか、「ADIZERO BOSTON 13」と「ADIZERO BOSTON 12」で走り比べたデータを見ながら、前モデルとの違いを見ていきましょう。

「ADIZERO BOSTON 13」と「ADIZERO BOSTON 12」を比較

ADIZERO BOSTON 13ADIZERO BOSTON 12
価格18,700円(税込)18,700円(税込)
重さ255g(27cm片足)270g(27cm片足)
ソールスペックドロップ:6mm
ヒール:36.0mm
前足部:30.0mm
ドロップ:8.5mm
ヒール:39.5mm
前足部:31.0mm

「ADIZERO BOSTON 13」は、前作よりも15gの軽量化しています。ただし、手持ちの「ADIZERO BOSTON 12」で比較してみると、ほぼ誤差の範囲内ではあるものの「ADIZERO BOSTON 12」のほうが軽いという結果になりました。

「ADIZERO BOSTON 12」はサイズが小さくなることで、より軽量化されるデザインになっている可能性があり、結果的に25.5cmでは重さに差がないことがわかります。ちなみに「ADIZERO BOSTON 12」の初期モデルのレビュー記事では25.5cmで「229g」になっていました。

軽くなったことが「ADIZERO BOSTON 13」のアピールポイントのひとつですが、サイズによってはそれほど変わらない可能性があるということを頭に入れておいてください。ただ、重さが変わらないということは購入しない理由にはなりません。

超軽量モデルは軽さを手に入れるために耐久性を犠牲にする必要があります。とはいえ超軽量モデルはレースやポイント練習のみで使うので年間の使用頻度はそれほど高くなく、そもそも耐久性を求められていません。「ADIZERO BOSTON 13」が、それらよりも重たいのは毎日履くことも想定しているというのもあります。

スペックとしてはソールが薄くなり、ドロップも1.5mm低くなっています。特に前足部はスペック以上に低さを感じ、ソールが柔らかいこともあって、しっかりと地面を掴んでいる感覚があります。ただ、この部分に関しては好みが分かれるかもしれません。

ソールの柔軟性としては小指側が硬く、親指側が柔らかく感じます。これは親指側のほうがLightstrike Proの厚みがあることが影響しています。この硬さの違いを活かせるかどうかが、「ADIZERO BOSTON 13」でもスピードを出せるかどうかの分かれ目になるような気がします。

次にRunmetrixを使用して、ジョグペース(キロ6分想定)とレースペース(キロ4分30秒想定)で、走り比べた結果を見ていきましょう。

ジョグペース

スクロールできます
ADIZERO BOSTON 13ADIZERO BOSTON 12
スコア7675
ペース5:50/km5:53/km
ピッチ [step/min]177178174176
ストライド [m]0.970.960.980.96
ストライド身長比0.600.600.610.60
体幹の後傾0.00.00.00.1
上下動 [cm]7.58.57.58.9
上下動身長比 [%]4.65.24.65.5
腰の沈み込み [%]4.13.74.23.8
骨盤の左右の傾き [°]3.85.02.74.2
骨盤の引き上げ [°]1.10.02.51.3
骨盤の回転 [°]9.38.110.08.4
骨盤回転タイミング12111411
左右方向衝撃 [m/s2]27.727.933.533.7
蹴りだし時間 [ms]124135127136
接地時間 [ms]234231238236
接地時間率 [%]69686969
着地衝撃 [m/s2]20.521.818.421.6
蹴り出し加速度 [m/s2]37.237.234.035.8
減衰量 [m/s]0.340.260.380.28
スティフネス [kN/m・kg]0.320.360.380.28

スコアは「ADIZERO BOSTON 13」のほうが高くなっていますが、ほとんど同じ傾向にあることがチャートからもわかります。ただ、細かい数値を見ていくとそれぞれのシューズの個性が見えてきます。

「骨盤の左右の傾き」と「骨盤の引き上げ」は「ADIZERO BOSTON 12」のほうが良い数字が出ており、骨盤周りを上手く使えているのがわかります。一方で「左右方向衝撃」については「ADIZERO BOSTON 13」のほうが良い結果になっており、左右へのブレのない走りになっていると判断できます。

「ADIZERO BOSTON 13」の魅力は安定性にあるとお伝えしましたが、ジョグペースでの計測では、それが数値として顕著に現れるといった結果になりました。

レースペース

スクロールできます
ADIZERO BOSTON 13ADIZERO BOSTON 12
スコア7575
ペース4:30/km4:30/km
ピッチ [step/min]186183184183
ストライド [m]1.191.211.201.21
ストライド身長比0.740.750.750.75
体幹の後傾0.00.00.00.0
上下動 [cm]7.58.47.68.5
上下動身長比 [%]4.65.24.75.3
腰の沈み込み [%]3.43.23.53.2
骨盤の左右の傾き [°]4.24.83.84.1
骨盤の引き上げ [°]2.02.03.02.9
骨盤の回転 [°]11.310.011.410.5
骨盤回転タイミング9977
左右方向衝撃 [m/s2]44.945.951.653.1
蹴りだし時間 [ms]106125108128
接地時間 [ms]200204202206
接地時間率 [%]62626263
着地衝撃 [m/s2]30.439.130.739.5
蹴り出し加速度 [m/s2]45.947.648.349.4
減衰量 [m/s]0.470.370.510.41
スティフネス [kN/m・kg]0.430.460.420.46

レースペースの結果も、ジョグペースとほぼ同じような傾向となりました。骨盤周りは「ADIZERO BOSTON 12」のほうが上手く使えており、ブレのない走りという点では「ADIZERO BOSTON 13」に軍配が上がります。

「骨盤回転タイミング」に関しては、「ADIZERO BOSTON 13」のほうが良い結果になっており、骨盤を軸とした全身の連動が上手くいっていることがわかります。ただし、ジョグペースと比べるといずれも値が低下しており、接地を待てずに骨盤を回し始める傾向にあります。

それが顕著に現れているのが「ADIZERO BOSTON 12」というだけのことで、これについてはシューズの特性もありますが、個人的なランニングフォームの課題のようなものですので、購入するときの決め手になるような計測結果というわけではありません。

進化を止めることがない超優等生ランニングシューズ

ランニングシューズというのは、毎年のようにモデルチェンジが行われますが、毎回フルモデルチェンジすることはなく、革新的な変化が起こるのは数年に1回です。今回発売になった「ADIZERO BOSTON 13」もフルモデルチェンジではなく、「ADIZERO BOSTON 12」を改善したモデルになります。

実際にRunmetrixのデータは、ほとんどの数字が誤差の範囲内の違いとなっており、明確に違いが出たのは「骨盤周りの動き」と「走りの安定性」のみです。このうち「骨盤周りの動き」は狙ったものではなく、Lightstrike Proを増量した結果、発生した変化だと考えられます。

高いクッション性と反発力を搭載した結果、骨盤周りの動きがネガティブなものになったのでしょう。ただし、これはあくまでも「私の場合」の結果であり、ランニングフォームが違えば別の結果になるはずです。

一方で「走りの安定性」は、前足部の幅やアウトソール素材の変更による「狙い通りの変化」です。おそらく前作に対するフィードバックとして、「もっと安定させてほしい」という声が多かったのでしょう。ユーザーの声をベースに改善する。それが「ADIZERO BOSTON 13」の進化へとつながっています。

足首周りのフィット感も同じく、ユーザーの声から改善されたのでしょう。ランナーが求めるものが、モデルチェンジのたびに搭載され、「ADIZERO BOSTON 13」は超優等生ランニングシューズになっています。

正直なところ、ランニングシューズをレビューする側としては、この「超優等生ランニングシューズ」というのは、なかなか厄介なアイテムになります。すべてのバランスがいいから、「ここが素晴らしい」と持ち上げることも難しく、「ここを変えてほしい」という提案もできません。

今回は「安定性に優れている」とお伝えしましたが、それは「前作と比較して」の話であり、ランニングシューズとして優れている点は他にも多々あります。たとえば、「かかと着地でもフォアフットでも対応できる」とか、「スピードを出しやすい」とか、おすすめポイントを挙げるとキリがありません。

そもそもオールラウンダーだったランニングシューズが正統進化。「ADIZERO BOSTON 13」は、より使いやすいシューズになっています。どうしてもネガティブな面を挙げるとすれば、「スクワットやジャンプなどのフィジカルトレーニングは薄底モデルのほうがいい」というくらいでしょうか。

フィジカルトレーニング以外は、ジョグからレースまでこれ1足でまかなえます。安定性が増したことで、フィジカルトレーニングにも使えなくはありませんが、そこは「ADIZERO SL 2」や「ADIZERO BK」などもっと適したシューズがあるということで。

レースで1秒を削り出したいシリアスランナーであれば、レースシューズに「ADIZERO ADIOS PRO 4」をおすすめしますが、サブ3.5までなら「ADIZERO BOSTON 13」で、まったく問題ありません。超優等生ゆえに走っていて物足りなく感じるかもしれませんが、積み重ねた距離にきちんと応えてくれる1足です。

「ADIZERO BOSTON 13」シューズスペック

価格18,700円(税込)
重さ255g(27cm片足)
ソールスペックドロップ:6mm
ヒール:36.0mm / 前足部:30.0mm
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