先週の土曜日に開催されたランニングマガジン・クリールのシューズトライアル。創刊20周年記念イベントのひとつで、いつもとは違って冬開催となりました。気温は低かったものの、太陽が顔を出しており走っていると少し汗ばむという最高のコンディション。
RUNNING STREET 365でも何度か紹介していますが、もっと参加者が集まってもいいイベントなんですが、魅力がまだ伝わりきっていないのかランナーの関心が薄いまま。そこで今回はシューズトライアルの魅力を、今回履いてみたシューズのプチレビューと合わせてご紹介していきます。
発売前のシューズから定番シューズまで揃うイベント
今回のシューズトライアルに参加したメーカーは12社で、そのうちシューズメーカーは8社。シューズトライアルに毎回参加しているメーカーもあれば久しぶりに参加、はじめましてのメーカーもあって色とりどりで、これまで以上に活気を感じました。
参加メーカー
- アディダス
- アルトラ
- アンダーアーマー
- サッカニー
- ジョーニンブル
- ブルックス
- ミズノ
- ヨネックス
- アミノアップ
- カシオ計算機
- バウアーファインド
- マクダビッド
今回注目されていたのが、ミズノから発売されたばかりのリベリオンシリーズ。サブ2.5を狙うランナー向けを含む3タイプすべて試すことができ、シューズトライアル開始から多くの人がミズノのブースに向かっていました。シューズについては後ほどレビューしますのでお待ちください。
シューズトライアルの魅力はなんといっても、全力で試せることにあります。会場となる東京臨海広域防災公園にはフラットな周回コースがあり(わずかにアップダウンはありますが)、そこで限界までスピードを出すこともできますし、ゆっくり長時間履いて試すことも可能です。
1kmのタイムトライアルも3回開催されており、最新の厚底シューズで自己ベスト更新を狙う走りもできます。用意されたシューズはサンダルを除くと24足。約4時間30分履き放題、走り放題で1,500円。こんなコスパのいい遊びはなかなかありません。
そして、運が良ければ抽選会でランニングシューズをもらえます。2万円以上するシューズが当たるわけですから、それだけで参加費と交通費の元が取れます(私は過去に1度も当たったことはありませんが)。こんな素敵なイベントなのに200名の定員が埋まらないなんて信じられません。
シューズトライアルに参加するメリット
抽選会などの魅力もありますが、クリール・シューズトライアル最大の魅力は、自分に最適な1足が見つかるということにあります。ランニングシューズというのは1足ずつ個性があり、同じメーカーのシューズでもすべて違った特性を備えています。
多くのランナーにとって、ランニングシューズを選ぶときにはフィット感だけが頼りになります。だから「◯◯は幅が狭いから合わない」みたいな選び方をします。確かにフィット感は大切ですが、本当に大切なのは走ったときの相性です。自分の走りにしっくりくるかどうか。
ランニングシューズはそれぞれターゲットとする走り方(接地方法)やペースというものを設定して開発します。メーカーがコンセプトで「フォアフット用」として開発していることもあれば、同じメーカーでも1足ずつ違うコンセプトを持たせることも。
そういうことは実際に履き比べてみないとわかりません。とにかくたくさんのシューズを履いて比較し、自分に最適なシューズを見つける。そうやって見つけたシューズは、自分自身のパフォーマンスを最大限に引き出してくれるので、結果も自ずとついてきます。
そしてクリールシューズトライアルではメーカーの担当者から説明をしてもらえます。そのシューズに適した走り方や強みなど、頭で理解出来るした上で走るので、自分自身もシューズのポテンシャルを引き出せます。そうなるとランニングがもっと楽しくなります。
実際に参加者はメーカーの担当者とコミュニケーションをとって、いつもと違ったメーカーのシューズで走る感触を楽しんでいるのが伝わってきます。これだけのシューズがあると個性の違いがはっきりとしますし、自分がどのタイプのシューズが好きなのかもわかってきます。
それだけでもクリール・シューズトライアルに参加する意味があります。
実際に履いてみたランニングシューズのプチレビュー
今回は24足のシューズがありましたが、制限時間内に履けたのは11足だけ(それでもトータル20km走りました)。すべてのシューズのレビューは今月発売になるランニングマガジンクリールにお任せするとして、ここではランニングシューズごとに、どれほど違いがあるか伝わるように履いたシューズを試走した順番にレビューします。
ちなみにシューズは1周700mのコースを2周走り、2周目に息が上がらない程度のペースでタイム計測をしました。シューズごとにかなりの差が出ていますので、そちらも参考にしてください。ただしタイムが出るシューズが必ずしも優れているというわけではないのであくまでも参考程度に。
ジヨーニンブル「アディクト」
人間が本来持つ足の機能を最大限に活かした走りができるシューズで、速さではなくケガをせずに走るための1足です。速さを求めていないのでフィット感はそこまで高くなく、反発も吸収も最小限。時代の流れに逆らっているような1足ですが、シンプルで無駄がなく意外とスピードが出ます。
レースで履くというよりは、ジョグやリカバリーランで足の機能を取り戻すために履くのがいいかもしれません。膝や腰などのケガを誤魔化しながら、走り続けているランナーに取り入れてもらいたいランニングシューズです。デザインがいいので普段履きにもおすすめです。
700mタイム:2分58秒
サッカニー「エンドルフィン プロ 3」
ソール材と補強材のバランスがよく、自然とスピードが上がる1足。反発力がかなり強めで走らされる感覚があるものの、リズミカルに走れるから気持ちが上がってきます。700mタイムがそこまで速くないのは、まだ体が温まってなかったからです。本来ならあと7〜8秒は速いはず。
フィット感は標準的。サッカニーのシューズ全般に言えることですが、中足部から前足部にかけてのフィット感が緩く、人によっては不安に感じるかもしれません。ただ、楽しくスピードを出して走れるシューズなので、フルマラソンで履いてみたい1足です。
700mタイム:2分43秒
サッカニー「エンドルフィン スピード」
エンドルフィンプロ3は走らされる感覚がありましたが、スピードはきちんと自分で走りをコントロールできるので、厚底×カーボンプレート慣れしていない人はこちらの方が好きかもしれません。ただ踵で加速できる構造になっていてスピードは出せます。
こちらも体が温まれば、あと7〜8秒は速く走れそう。そして中足部から前足部にかけて緩いのは同じ。あとはシューズが軽くてやや足が空回りしてました。クセの少ないスタンダードな1足なので、練習からレースまで1足でやりくりしたい人におすすめ。
700mタイム:2分51秒
ヨネックス「セーフラン200X」
絶対にランナーの膝を守るという強い意志を感じるシューズです。どんな走り方をしても必ずミッドフット着地に誘導され、そして膝が全くぶれないので安心感があります。当然スピードを出せないので700mのタイムはかなり遅くなっています。
ただコンセプトが明確で、速く走るためのシューズでもないのでこのタイムは重要ではありません。これからランニングを始めるけど膝が不安というすべての人に、全力でおすすめできるランニングシューズです。すでに膝に故障を抱えている人もヨネックスは要チェクです。
700mタイム:3分6秒
アンダーアーマー「UA フロー ベロシティ エリート」
クリール・シューズトライアル史上最大の驚きがあった1足です。フロー ベロシティにカーボンプレートを搭載した未発表モデルで、アウトソールのゴムがないのも影響してか、シューズの反発スピートがとてつもなく速く着地した瞬間に跳ね返るのでピッチが自然と速くなります。
フィット感も高くて反発力も速さはあるものの強引ではなく、薄底ランニングシューズを履き続けてきた人も、UA フロー ベロシティ エリートなら、違和感なく高速レーシングシューズに移行できるかもしれません。価格が29,700円とネックですが、それでも買って後悔することはない1足です。
700mタイム:2分35秒
ミズノ「ウェーブライダー26」
ミズノの定番中の定番シューズなので、履かなくてもいいかなと思ったのですが、履いてみて正解。前作のもっさりとした感じがなくなり、リズムよく走れるシューズに進化していました。コーナリングの安定性も高く、初心者にとって間違いのない1足。
ただしレースでタイムを出すのが苦しいシューズなのは、700mのタイムからもわかります。安定感がありシューズも重いのでスピードを出したくても出せません。フルマラソン完走が目標というレベルのランナーやシリアスランナーのジョグシューズにおすすめです。
700mタイム:2分54秒
ミズノ「ウェーブ リベリオン プロ」
大胆に踵を削り落とした注目のランニングシューズ。ミッドフット着地にすることで前足部が沈み込み、自然と足を回転させることができます。反発力を使うのではなく、テコの原理に近い作用で推進力を生み出すこれまでにないレーシングシューズです。
とにかく走るのが楽しくなるシューズですが、スピードを出すと体幹が振られる感覚があり、かなりの筋力がないとシューズをコントロールしきれません。サブ2.5用として発売していますが、本当にその走力がないと使いこなすのは難しいかもしれません。
700mタイム:2分36秒
ミズノ「ウェーブ リベリオン フラッシュ」
サブ3を狙うランナーのためのシューズで、ソールはそれほど厚くなく、従来の薄底スピードモデルに近い感覚で走れます。クセもほとんどなく、推進力もナチュラルなので走らされている感覚はありません。ただ、最近のトレンドを考えると個性が弱すぎてちょっと物足りません。
それでも完成度がとても高いシューズでしかも軽量なので、サブ3を狙うランナーでなくても、筋力が十分にあるなら履いてもらいたいところです。厚底が苦手だけど、シューズの力も借りて自己ベスト更新したいなら、十分に選択肢になる1足です。
700mタイム:2分43秒
ミズノ「ウェーブ リベリオン ソニック」
わかりやすく700mのタイムが落ちていますが、これが今後のミズノのスタンダードシューズになります。価格は13,750円と今どきのランニングシューズとしてはお手頃価格で、安定感も高いのにキロ5分は簡単に出せるので人気シューズになるかもしれません。
ただフラッシュと同様に個性が弱いのと、出せるスピードがウェーブライダー26よりも少し速い程度なので、サブ3.5を狙うシューズとして購入するのはやや勇気がいるかもしれません。そういう意味ではまずはジョグシューズとして買ってみるのがいいかもしれません。
700mタイム:2分51秒
アディダス「アディゼロ タクミ セン 9」
アディゼロ タクミ セン 9は以前のモデルからアッパーが変わっただけと聞いていましたが、そのアッパーがとんでもない進化をしていました。キロ3分台でコーナーに突っ込んでも足にしっかりフィットしているので、まったくブレることなくコーナリングできます。
700mのタイムが速いのは、普段からアディゼロシリーズを履いているため、シューズのポテンシャルを引き出しやすかったことが影響しています。やはり慣れたシューズで走るというのは大切ですね。ただ軽くて追従性が高くて個人的にはかなりお気に入りのシューズです。
700mタイム:2分34秒
アルトラ「ヴィア オリンパス」
アルトラのゼロドロップカーボンプレートシューズもありましたが、前回のシューズトライアルで履いていたので、今回はアルトラの厚底シューズ「ヴィア オリンパス」をチョイス。この時点ですでに足が売り切れていたので、スピードに乗ることができませんでした。
もっとも速く走るタイプのシューズではなく、クルージングランを楽しむことを考えればタイムは妥当。安定感がとても高く、足の指が開くのでとても快適に走れます。このためリカバリーランなど体を整えたいときに履くのがおすすめです。
700mタイム:3分5秒
ブルックス「ハイペリオン マックス」
足がすでにボロボロの状態で履きましたが、走り出した瞬間に相性がいいことがわかりました。カーボンプレートなしの高速レーシングモデルですが、私の走力や走り方にぴったりで、疲労が溜まっているにもかかわらず、最後の1足で最速タイムを叩き出しました。こういう1足に出会えるのがシューズトライアルの魅力。
クッション性がやや高すぎる気もしますが、それに見合うだけの反発があり、シューズが軽いのもあってどんどんペースを上げられます。サブ3〜3.5くらいの走力なら、カーボンプレートの入ったシューズよりもハイペリオン マックスのほうがしっくりくるかもしれません。
700mタイム:2分34秒