世界中でマラソンの記録が塗り替えられたとき、注目を浴びたのはナイキの厚底シューズでした。ただ、その記録を支えたのはシューズだけではありません。アフリカ系ランナーを中心に広まっているコンプレッションショーツも、高速化するマラ業界において必須のアイテムになりつつあります。
その中でも注目度が高いのが2XUのコンプレッションショーツで、日本でもすでに多くのランナーが使用しています。ただ、コンプレッションショーツは締め付けがしっかりしているので、ムレてしまって夏の着用には適していないという弱点があります。
そんな問題を解決したのが2XUのランダッシュコンプレッションショーツです。今回は実際に使用することができたので、商品のご紹介と使ってみたレビューをお届けします。従来のコンプレッションショーツと何が違うのか、なぜおすすめなのか詳しくレポートします。
「メッシュ+エアフロー+接触冷感」で涼しく
通常のコンプレッションショーツは、筋肉をしっかりと締め付けるために強度の高い布地を使っています。冬場はそれでも外気によって足を冷やすことができますが、夏場は気温が高くてショーツ内に熱がこもってしまいます。
十分なコンプレッションを得ようと思ったとき、これはどうしようもないことでしたが、2XUは十分なコンプレッションを維持できるメッシュ生地を採用することでその問題を解決しました。
言葉にするのはとても簡単なのですが、実際に「十分なコンプレッション」をメッシュ生地で実現するのは簡単なことではありません。それっぽいものを作ることが可能であっても、どこかコンプレッションが弱くただのタイツに仕上がってしまいます。
ところがランダッシュコンプレッションショーツは強力なコンプレッションメッシュを使ったことで、しっかりと筋肉の疲労を軽減してくれます。
しかもエアフローまで考慮しており、大腿部がしっかりと空気で冷やすことができます。さらには吸水速乾性の高い生地を組み合わせることで、ショーツ内の湿気を吸収して蒸発させているので、肌触りも快適です。
でも気になるのは「それで本当に走りに効果があるの?」ということですよね。実際に使ってみた感じについてもご紹介していきます。
驚くほど足が軽く感じる
ランダッシュコンプレッションショーツを履いて最初に感じたことは、「足が軽い」ということです。非常事態宣言が出ていた期間は毎日6.5kmのジョグと、3日に1回のスクワットだけを続けてきたので、足がかなり太くなっていましたが、その重さを感じません。
2XUのタイツは他にも着用したことがありますが、足が軽いと感じるのはこれが初めてです。この表現が正しいかどうかはわかりませんが、従来のコンプレッションショーツは筋肉が増えたような感覚があります。使える筋肉が増えるから速く走れるというイメージです。
ところがランダッシュコンプレッションショーツの場合には、筋肉が増えたという感覚ではなく、足の表面が取り除かれたような感覚があります。無駄が削ぎ落とされると言えば伝わるでしょうか。
この感覚がメッシュ生地によるものなのか、設計によるものなのかはわかりませんが、気持ちがいいことははっきりしています。戦闘モードになるというよりは、比較的リラックスした状態で走り出すことができます。
スムーズに足の動きをサポートする
問題は走ってみての感覚です。
非常事態宣言明けで、もう数ヶ月も追い込むような走りをしていませんでしたが、いきなり1kmのタイムトライアルをしてみました。2XUのコンプレッションショーツは速く走るためのものですので、スピードを出してみないと本質がわかりません。
結論から言えばこのテストは失敗でした。この数カ月間で1kmを全力で走りきれないほど心肺機能が衰えており、それに加えて動きやすい足がいっきにペースを上げてしまったので1kmに到達する前に潰れてしまいました。
走ってみて感じるのは、まったくストレスのないサポート力です。まっすぐに足が上がり、まっすぐに下がる。足がほとんどブレることなく足がどんどん前に進んでいきます。本当はここでペースを制御すべきなのでしょうが、1kmのベストタイムが3分20秒程度なのにキロ3分10秒まで上がってしまいます。
心拍数もMAX176まで上がってポラールのGPSランニングウォッチではレッドゾーンの上限に達しました。十分に注意をしたつもりだったのですが、あまりにスムーズに足が動きすぎるので力の制御ができませんでした。ただ、ランダッシュコンプレッションショーツは快適そのものです。
完全に潰れてしまった後に、太ももに手を当ててみましたが、太ももの前面は発熱を続けているものの籠もっている感じはなく、ハムストリングスはほとんど熱を帯びていません。走り方の問題もあるのでしょうが、走っていないときと変わりません。
こういうときに赤外線サーモグラフィでもあればいいのですが、残念ながら持っていないので感覚でしか言えませんが、ランニングパンツで走るよりも太ももが冷やされているようにも感じます(失速したせいかもしれませんが)。
夏にしっかりと走り込みたいなら買いのアイテム
秋のマラソン大会が次々に中止になっているので、この夏は追い込むようなトレーニングはしない。距離も踏まないというのであれば、いまランダッシュコンプレッションショーツを買う必要はありません。でも冬に向けてのトレーニングをしたい。マラソン大会に関係なく距離を踏みたいなら、これは間違いなく買いです。
コンプレッションショーツですので、疲労軽減効果も期待できますし、私が潰れてしまったように、スピードを上げて心肺に高い負荷を与えることもできます。そして何よりも、熱がこもりにくいので長い距離を走ることができます。
もちろん日本の夏の暑さは容赦ないので、時間帯を選んで走る必要がありますが、ランダッシュコンプレッションショーツの有無で走れる距離にかなり差が出るはずです。「調子がいいからあと2kmプラス」といった感じで積み重ねていけば、月間走行距離でかなりのアドバンテージになります。
また、秋や春の気温が20℃を超えるような大会、夏場のウルトラマラソンやトレランでも効果を発揮してくれるはずです。熱がこもらないというのは私たちが思った以上に重要なことです。使いどころの多いアイテムですので、マラソン大会が中止になってお財布に余裕があるなら買っておいて損はありません。
もちろん買うだけでなく、きちんと走り込んでくださいね。ないポテンシャルまでは引き出してもらえませんから。わたしは距離を踏むところからやり直すとします。