ランニングシューズは目的別に購入して履き分けるのが最近のトレンドですが、そうはいってもシューズを何足も買える人は限られています。しかも最近のランニングシューズ価格の高騰化もあって、シューズは使い分けせずに練習からレースまで1足でやりくりしたいところですよね。
「FuelCell Propel v4」はニューバランスがトレーニングシューズとして発売しているシューズですが、実際に履いてみたところ「これだけで練習からレースまですべていけるかも」と思えた1足。そこで今回はニューバランスの「FuelCell Propel v4」がどのようなシューズなのか詳しくレビューしていきます。
コンセプトは反発感覚を養うためのトレーニングシューズ
FuelCell Propel v4についてはすでに別記事で紹介していますが、まずはどのようなコンセプトのシューズなのかレビューをする前に簡単に説明しておきましょう。FuelCell Propel v4はカーボンプレートを搭載した厚底レーシングシューズの練習をするための1足になります。
カーボンプレート搭載シューズに近い感覚の反発力を感じられるので、練習ではFuelCell Propel v4を履くことで感覚に慣れることができ、レースで厚底×カーボンプレートシューズを履くことで、レーシングシューズの消耗を防ぎながら、自分のポテンシャルを100%引き出せるというわけです。
このため、ニューバランスとしてはあくまでも「トレーニングのための1足」という位置づけなのですが、実際に履いて走ってみたところ、ほとんどのランナーにとってFuelCell Propel v4がベストシューズになるのではないかという感覚がありました。
片足重量が25.5cmで276g(実測)とレーシングシューズと比べると重たいですし、フィット感もふんわりしていて「攻める」シューズというよりは「守る」シューズというのが走り出す前のインプレッション。なのに実際に走り出したら面白いように足が進みます。
このシューズは飲食関係の仕事で履くことをメインに考えて購入したため、目立たない黒色を選んだのですが、ランニング用にもう1足別の色を買いたいと思うほどの満足度。いったい何がそれほど素晴らしいのかについて、詳しくレビューしていきますので、ぜひ参考にしてください。
安定感が高く着地したときに足がしっかり守られる
足を入れたときにまず感じたのは、ニューバランスらしい優しいシューズであるということ。アッパーのフィット感も締め付けるものではなく足を包み込む感じで、さらに足首周りはクッションがしっかりしているので、安心感があります。
履き心地はいわゆるジョグシューズに近く、レーシングシューズのような履いただけでスピードを出したくなるものではなく、むしろリラックスしてゆっくりと長く走りたくなります。レーシングシューズのように立ったときの不安定感がないのもいいです。
最近のレーシングシューズは「速く走る」ことに特化しており、立ち止まるということはほとんど考慮していません。このため履いて立ったときに足元がグラつくものも多く、普段履きやウォーキングには適していないのですが、FuelCell Propel v4は厚底でも不安定さはまったくありません。
ソール幅が広めにとってあるので、走り出してからもしっかりと足を地面に接地できるので、走りに安定感がでます。クッション性も素晴らしく、沈み込むことがないのに足への衝撃をきちんと和らげてくれます。あまりにナチュラルなのであまり評価されないかもしれませんが、これは素晴らしいテクノロジーです。
もちろん安定感とスピードは相反するものですので、1秒でも速く走りたいというときにはFuelCell Propel v4は適していません。そういう意味ではやはりFuelCell Propel v4はトレーニングシューズという位置づけになるわけですが、あくまでもそれは「シリアスランナーにとっては」の話です。
足が振り回されない反発力でしっかりコントロールできる
FuelCell Propel v4がニューバランスの最高傑作だと感じたのは、安定した走りができるにもかかわらず、TPUプレートを搭載したことでしっかりとスピードを出せることにあります。それを強く感じたのは坂道を走っているときで、それなりの傾斜なのにフラットな道と同じ感覚で走れます。
そして反発力があるので例えばインターバル走のようなスピード練習では、しっかりと足を折りたたむことができます。正確には足を折りたたむ意識なしで、スピードを出したら自然と踵がお尻にあたっていてびっくり。
400mハードル現世界記録保持者であるニューバランス契約アスリートのシドニー・マクラローフリン・レブロン選手も、トレーニングで着用していると聞いていましたが、なるほどこれならトップアスリートも満足できる走りができます。
ただカーボンプレートシューズのような強引さのある反発力ではないので、足が振り回されることもありません。レーシングシューズにありがちな「走らされる」感じがないわけです。自分の意志で走りをコントロールできるからスピードを出しても安心感があります。
シューズそのものは重たいので、長時間スピードを持続するのは難しいのですが、たとえば1kmくらいまでのインターバルならまったく問題ありません。スピードもレーシングシューズよりは劣ります。でもほとんどのランナーはキロ3分台で走らないわけで、むしろFuelCell Propel v4で出せるスピードで満足できるはずです。
FuelCell Propel v4はコストパフォーマンス最強の1足
FuelCell Propel v4が素晴らしいのは、こんなにも走れるシューズでありながらも価格が税込みで12,100円だということです。これくらい価格だと、型遅れになって安売りされるのを待たずに買えるという人も多いのではないでしょうか。
繰り返しになりますが、レーシングシューズよりも重たく、攻めの走りをするのが難しいシューズであるのは事実です。だからニューバランスもFuelCell Propel v4をカーボンプレート搭載シューズの感覚に慣れるためのトレーニングシューズという位置づけにしています。
でも、そんなコンセプトなんて無視して構いません。FuelCell Propel v4はほとんどのランナーにとってオールマイティな1足で、これからの走り込みのシーズンに最高の相棒になってくれます。安定感も高いのでスニーカー感覚の普段履きにも使えます。
それでいてしっかり走れます。サブ4くらいまでなら問題なく対応できる1足ですので、練習用とレース用を分けたくないというランナーやこの春からランニングを始めるという人におすすめです。もちろんシリアスランナーのトレーニングシューズとしても。
個人的には白を追加で衝動買いしてしまいそう……いえ、それでまったく問題ないんですよ。買っても絶対に後悔しませんから。