安定からクッション&推進力へ〜クリールシューズトライアル2017レポート〜

9月最終日、ランニングマガジン・クリールのシューズトライアルに参加してきましたので、その模様と最新シューズの方向性についてレポートします。

今年のシューズトライアルに参加しているシューズメーカーの数は12。アディダスやナイキといった、大手シューズメーカーは参加していません。

Altra(アルトラ)
HOKA ONE ONE(ホカ オネオネ)
KARHU(カルフ)
MBT(エムビーティー)
Reebook(リーボック)
MERRELL(メレル)
On(オン)
Raidlight(レイドライト)
SALOMON(サロモン)
UNDER ARMOUR(アンダーアーマー)
BIRKENSTOCK(ビリケンストック)
SEMUCO(セムコ)

ビリケンストックはサンダルだけで、セムコはコンパクト一本歯下駄。純粋なシューズメーカーは10しかなく、会場が少し寂しい状態でした。参加者も年々減っているように感じます。

ただしイベントでは、ニューハレックスのテープを試せたり、R×Lのゲイターを試し履きできたりと、これまでにない新しい取り組みがいくつもありました。でも、やはりランナーは大手シューズメーカーがいないと参加意欲がわかないのかもしれません。

とはいえ、最近話題のOnやアメリカで表彰されたシューズを持ってきたリーボック、久しぶりにロードシューズの展開を再開したメレルなど、注目すべきシューズが数多く揃っています。

いずれも個性豊かなシューズで、デザイン性もその機能も、大手シューズメーカーに負けていない素晴らしいものです。

昨年のシューズトライアルでは、全体的に「安定性」を重視したシューズが中心でしたが、今年はまた新しい方向性が見られました。多くのシューズが今年のテーマとして次の2点を意識しているように感じました。

・クッション性
・推進力

勘の良い人はすでに気づいたかと思いますが、この2つはナイキが新しいシューズ、ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%の開発で掲げていたものです。十分なクッションと推進力。シューズの力で足を支えることを目的としています。

どのメーカーもこの方針の後追い状態になっています。特にクッション性に関しては、どこも注力している注目点となっています。

ただし、このクッション性というのはとても評価が難しい性能のひとつです。フルマラソンを走るときに、疲労を感じることなく最後までスピードを落とさず走れるということなのですが、これを練習で実感することはできません。

さらに、マラソンはメンタルの部分もとても大きいため、クッション性のおかげで足が軽かったのか、プラシーボ効果で軽かったのかは分かりません。

ただし、ハーフマラソンの日本記録保持者で、先日行われたベルリンマラソンで、6位に入賞した設楽悠太選手によると、「後半でも疲労がなく、翌日以降も疲労が残らなかった」とのことです。

いずれにしてもナイキがこの戦略で成功したことで、他のメーカーも追随するしかなくなってしまいました。いま、ランニングシューズの最大市場である北米ではクッション性のあるシューズでなければ売れないとまで言われています。

さらに、推進力をいかにして作り出すのかというのも、各メーカーのチャレンジ項目になっています。ただし、この点に関しては各メーカーが様々なアイデアを出している状態でかなり個性的な味付けになっています。

ナイキはカーボンプレートを埋め込みましたが、さすがにその二番煎じというわけにはいきません。Onのように反発しやすいソール形状を採用することもあれば、カルフのようにテコの原理を活かしたものもあります。

いずれも、「普通に走って推進力によって前に進みやすくする」ことを目的としています。数年前に流行ったナチュラル系のシューズはいったいなんだったのでしょう?

シューズのトレンドというのは、こうやって作られるのだなということを実感できるようなラインナップになっていました。

ただし、昨年に安定性を求めたシューズづくりを行ったことで、今年は迷走していると感じるシューズも目立ちました。ケガをしないように安定して、さらにクッションも持たせたうえで、推進力を生み出すという無茶なシューズづくりを余儀なくされたシューズメーカー。

ただ、そんな魔法のようなシューズは簡単には作れません。それどころか、根本的にそんなシューズを作るのは無理ではないかとすら思います。ただし、すでに紹介しましたように、ナイキが結果を出したことで、各メーカーは「やらなくてはいけない」課題として抱えているようです。

自分たちの理念よりも、売ることを優先させなくてはいけない現状。そして、あれもこれも詰め込みたいし、過去の資産も活かしたい。そんな思いが複雑に絡み合った結果、そこで生まれたシューズが迷走しています。

そんな中、アンダーアーマーもサロモンは、とても分かりやすいコンセプトを打ち出して、走れるシューズを作ってきました。RUNNING STREET 365が最も注目しているアンダーアーマーは、着実に進化を積み重ねています。

このようにシューズの個性を感じることができ、実際に履いて走ることができるのがクリールシューズトライアルの魅力です。毎年秋に開催されていますので、来年はぜひ、みなさんもシューズトライアルに参加してみましょう。

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