日本一早いマラソンレポート「東北・みやぎ復興マラソン2017」

日本一早いマラソンレポート「東北・みやぎ復興マラソン2017」

先に断っておきますが、東北・みやぎ復興マラソンのRUNNETでの評価はとても低いものになるかと思います。その理由として挙げられるのが次の点です。

1.会場内の動線がわかりづらい
2.コースから見える景色が単調
3.帰りのシャトルバスで待たせすぎ

まず、多くの参加者が会場に入って困ったのが、どこにどう動けばいいのかまったく分からないということです。もちろん案内は出ています。パンフレットにも書かれています。

ただ、実際に会場にいる人すべてが、眼の前にいる景色から地図の内容を把握できるわけではありません。どういうわけか今回は、そのリンクしづらくなっていました。

その最大の原因は、ガイドをするスタッフの少なさにあります。スタッフの数は十分にいます。そしてそれぞれの持ち場で一生懸命に役割を果たしています。でも、選手を誘導する人の数が足りていません。

また、コースはとにかく単調です。そもそも津波で一気に持って行かれてしまうくらフラットな場所に作った道路ですので、基本的にはほとんどアップダウンがありません。

さらに、海岸線を走っているはずなのですが、巨大な防波堤により海は見えません。川を越えるときに少し見えるくらいです。ずっとコンクリートの壁を見ながら走ります。

勝負レースとするならタイムの出やすいコースですが、残念ながら開催日は10月1日。まだ暑さが残り、この日は24℃くらいですので、高速レースにするには10℃近く高すぎます。多くのランナーが脱水状態になっていました。

単純にマラソン大会を走りたいだけの人は、エイド以外はつまらないコースに感じたかもしれません。少なくとも「また走りたい」と思うコースではありません。これは事実です。

そして、RUNNETが炎上するのではないかと思うほど、批判の対象となったのが帰りのシャトルバスの待ち時間です。運営側は増便したのですが、駅周辺の道路が渋滞したことにより、出ていったバスが戻ってこずに、1時間以上待たされた人もいます。

1時間くらいいいじゃないかと思うかもしれませんが、今日のうちに東京に帰らなくてはいけない人もいます。新幹線や飛行機の便をすでに確保している人もいます。

何分待てばいいのかのアナウンスがなく、代替え案もないまま冷たい風の吹くバス停で何百人もの人が待ち続けるというのは、その場で大荒れしなかったのが不思議なくらいです。

以上が、東北・みやぎ復興マラソンの評価が低くなるであろう代表的な理由です。

でもガイドスタッフが少ないというのは、1年目で気づかないことだってあります。間違いなく来年は改善されますし、質のいい大会になるための通過儀礼のひとつです。

コースが単調なのは走る前から分かっていたはず。自分たちが何のために、この大会にやってきたのか。復興マラソンで、それぞれが何をしたかったのかを考えれば、コースに対する残念感はもっと少なくなるはずです。

この大会は普通のマラソン大会とは立ち位置がちょっと違います。東日本大震災で多くの人が映像として目にした、仙台南側地区の復興。ハードの部分では道路が完成し復興は完了したように見えますが、人の心の部分はまだまだ未解決のことがたくさんあります。

ハードは整った。次はそこで暮らす人たちの「またあそこに戻りたい」「あの場所でやり直したい」という気持ちを高めていきたい。

そういう気持ちになってもらい、何年か後には今回のコース周辺に幾つもの住宅やお店が並んでいる状態を作る。そんな未来を作り出すための第一歩が東北・みやぎ復興マラソンです。

被災地に暮らしていた人たちが、この日だけ地元に戻ってランナーに声援を送ります。ランナーはそういう人たちの勇気になる必要があります。ただ走るだけではないというのが、東北・みやぎ復興マラソンに出場する大きな理由という人も多いのではないでしょうか。

そして、シャトルバスの問題は、来年に向けての反省点で、これから必ず議論されることになります。これを改善できないなら、東北・みやぎ復興マラソンに未来はありません。いろいろ思うところはあるはずですが、これに関しては「未来に期待」すべきことです。

東北・みやぎ復興マラソンの最大の魅力は、エイドでの声援の多さです。特にもともと集落があった場所に立てたスペシャルエイドでは、驚くほど多くの声援を受けられます。

東北のマラソンはあまり華やかさがなく、仮装ランナーも少なく感じますが、東北・みやぎ復興マラソンには華やかさがあります。ランナーにもボランティアさんにも、応援をしてくれる人にも個性があります。

沿道の声援は「頑張ってください」というものが圧倒的に多いのですが、それに次ぐくらいの声が「ありがとう」でした。

この大会によって勇気づけられた人がいるということは、とても重要なことです。マラソンにはそんな力があるということ。わたしたちはそのことをもっと自覚すべきです。

ただそのためにしっかりとした練習をこなすこと。今回はかなりのランナーが早い段階から歩きはじめていました。忙しくて走り込みができなかったという人もいるかもしれませんが、1日5kmを毎日でも構いません。フルマラソンを走るための準備が足りていない人が多かったように感じます。

そんな状態で、地元の人たちに喜んでもらることができるのか。

ただし、地元の人に勇気を与えたいなんて考えていたランナーはきっと少数派なのかもしれません。ただマラソン大会があるから出ただけという人もいると思います。

マラソンなんて自由に走ればいいんです。

だから東北・みやぎ復興マラソンを走るための理由をきちんと口にできなくても気にすることはありません。でもこの大会は速さを競う以外にも大事なことがあります。

・東日本大震災という過去を風化させないこと
・そこで暮らしていた人たちの勇気になること

こういう想いを持って走ることができれば、きっと東北・みやぎ復興マラソンを何倍も楽しむことができるはずです。反対に、これらの気持ちがなければ、本当につまらない大会という印象しか残らないかもしれません。

そういう人でも、充実したエイドには満足できたのではないかと思います。みんなの評価ほどは悪くない大会だというのが率直な意見です。もう何年かは多少のトラブルに対して目をつぶって、いい大会に成長していくのを待ってみましょう。

それだけのポテンシャルがある大会です。

低い評価をしている人の意見は、大きすぎた期待の裏返しとも言えます。芸能人も一生懸命に走り、地元の人たちと交流をしていました。ものすごい熱量と温かさがある大会ですが、それをまだうまく活かしきれていないだけ。

この大会は湘南国際マラソンの初期の頃を思い出させます。湘南国際マラソンも最初の数回はひどい評価でしたが、いまではとても人気の高い大会のひとつです。東北・みやぎ復興マラソンも10回の開催を越えるときには、誰もが走りたい大会になっていることを期待しています。

ただし、ひとつだけ大きな懸念事項があります。

今回は天気も良かったのでいいのですが、もしこの大会で雨が降ったらと思うと、とても悲惨な大会になるイメージしか湧きません。会場は芝生広場で、今日も濡れていましたが、これが雨だと滑って転ぶ人も出てきます。そもそも雨をしのげる施設もありません。

仮に雨が降って体が冷えた状態で、今回のように1時間以上もバスを待つとしたら。想像しただけでゾッとします。これも今年開催して見えたことで、運営側も気づいているかとは思います。

ですので、来年以降は先に手を打ってくるはずです。それがされずに雨が降ったら、きっと過去最低の評価が与えられる可能性があります。天気ばかりはどうしようもありませんが、それに対する準備ができるかどうか。

それも含めて、東北・みやぎ復興マラソンが、来年以降にどのような大会になっていくのかを楽しみにしています。

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