
2026年に開催されるサッカー北中米W杯では、て前後半3分ずつクーリングブレイクが設けられます。このようにさまざまスポーツの試合やトレーニングで「クーリングブレイク」が導入されはじめているのですが、ランニングではなぜかその流れがやってきていません。
それどころか、真夏に長時間走り続けることをSNS上で褒め合うというやりとりも毎年のように見られており、暑さに耐えて走り続けることをポジティブにとらえる傾向にあります。ただ、現実として熱中症でランニング中に倒れる人もいて、ランニングにおいても暑熱対策がとても重要になります。
そこで、RUNNING STREET 365スタッフが、「ZAMST」を展開する日本シグマックス株式会社が開催する 『暑熱対策サミット2026』で、「クーリングブレイク」の有効性を学んできましたので、夏のランニングを安全かつ快適に行うための「クーリングブレイク」について提案していきます。
従来の暑熱対策だけでは不足する時代に

私のような昭和時代にスポ根マンガで育ったランナーは、意識のどこかに「夏の暑さは耐えるもの」という考えが根付いています。それが間違った知識だとわかっていても、「暑さに耐えて走る」が美徳だと考えているから、真夏にランニングをしている人のSNS投稿に「すばらしい」なんてコメントしたりしてしまいます。
ただ、この数年の夏の暑さは「耐える」の領域にはありません。昨年の熱中症による救急搬送者数は10万人を超えており、炎天下でのランニングはとてもリスクの高い行為になっています。
それでもマラソンシーズンに結果を出すためには、夏場の走り込みは避けられません。このため、ランナーはそれぞれ暑熱対策を行って走ることになるわけですが、従来の暑熱対策(こまめな水分補給や接触冷感素材のシャツなど)だけでは、体を守るのが難しくなりつつあります。
夏の暑さは年々厳しいものとなっており、現在進行形では猛暑日・酷暑日が急増。今年はさらにそれを上回るのではないかという予想もあります。昭和のスポ根が通じないどころか、最新の暑熱対策ですら翌年には通じなくなるほどの急激な変化と私たちは向き合っているのです。
ランナーが暑熱対策をするためには、まずはその認識を持つ必要があります。少なくとも「暑さを耐えるのはすごい」という考えは綺麗さっぱり消し去ってしまい、誤解を恐れずにお伝えするなら「暑さを耐えるのは愚か」くらいの思考に切り替えましょう。
「百害あって一利なし」これが、真夏の炎天下に走る行為を表す、もっともわかりやすい言葉かもしれません。ただ、ここでポイントになるのは「炎天下」であり、早朝や夜のランニングであれば、まだ工夫次第では安全かつ快適に走ることはできます。その工夫のひとつが「クーリングブレイク」です。
ランニングにおけるクーリングブレイクの有効性

一般的に「クーリングブレイク」は、気温が高い環境下で行われる大会において、一定の気温に達している場合に審判の判断で設けられる給水時間のことを示しまが、ここでは「クーリングブレイク」を「体を冷やすための休憩時間」として解説していきます。
ランニングにおけるクーリングブレイクがもたらす効果は3つあります。
- 深部体温の上昇抑制
- 熱中症の予防
- パフォーマンスの維持
人間の体は体温の上昇により、細胞の破壊、臓器の機能不全などさまざまなダメージを負います。ランニングの途中でクーリングブレイクを入れることで、そのまま走り続けるよりも深部体温の上昇を防ぎやすくなり、ダメージを最小限に抑えることができます。
深部体温の上昇を抑えられるので、発汗量を減らすことができ、熱中症の予防効果も期待できます。また、クーリングブレイクにより水分補給もできるというのも熱中症予防につながります。
そして、最大のメリットと言ってもいいのが、パフォーマンスを維持できるということ。早朝や夜間でも日本の夏は湿度もあるので、クーリングブレイクなしで走り続けると、どうしてもパフォーマンスが下がってしまいます。足運びも雑になり、フォームが崩れるだけでなく、ケガのリスクも上がります。
クーリングブレイクを入れることで、パフォーマンスを落とすことなく、高い集中力でトレーニングできるようになるため、トレーニング効果が高まるといったことも期待できます。
ランニングにおけるクーリングブレイクの方法

クーリングブレイクは「体の熱を冷ます」ための時間ですが、ただ休んでいるだけでは期待するほど熱は下がりません。このため、クーリングブレイクでは積極的に体を冷やすことになります。このとき重要なのが、体の内側と外側の両方から冷やすということです。
内部冷却
体の内側から冷やす方法は「冷たいスポーツドリンクを飲む」ということです。塩分も補給したいので、水ではなく5〜15℃に冷やしたスポーツドリンクを、数口にわけて飲むようにしてください。スポーツドリンクが苦手という人は水でもいいのですが、その場合は塩を舐めるなどして塩分も補給しましょう。
また、シャリシャリに凍らせた飲み物や氷の粒を食べる「アイススラリー」も有効です。
外部冷却
水や氷を首の後ろや両脇の下、足の付け根などに当て、太い血管を冷やします。そうすることで血液が冷やされ、冷やされた血液は体内を巡って、熱を取り去ってくれるというわけです。
『暑熱対策サミット2026』で紹介されたのは、水に濡らして振るだけで冷たくなる「ザムスト COOL SHADER」です。このようなアイテムを使って5〜10分程度の休憩を取るか、15分程度歩きを入れることで、体温上昇を抑えることができます。
「ザムスト COOL SHADER」でクーリングブレイクしてみた

『暑熱対策サミット2026』のお土産として、「ザムスト COOL SHADER」をいただきましたので、さっそく日中にクーリングブレイクのあるランニングを試してみました。
気温は28℃くらいでしたので、夏の夜のランニングと同じような環境ですが、晴れていたので直射日光によるダメージも考えられます。そのような環境でまずはレースペース(キロ5分前後)で4kmほど走ってクーリングブレイクを入れ、そのあと4kmを走りました。
本来のクーリングブレイクは内部冷却も行いますが、今回は外部冷却の効果を知りたかったので、水に濡らして冷やした「ザムスト COOL SHADER」を羽織って1kmほどウォーキングしています。
ステアクライミングレースを走った2日後ということで、最初の4kmはレースペースを維持するのも大変で、ペースは見事な右肩下がり。正直なところ4kmでもかなりきつかったのですが、そこでクーリングブレイク。
「ザムスト COOL SHADER」を公園の水道で濡らして絞り、フードも使って上半身を全体的に冷やしながら1kmほど歩きます。その途中でフードを脱いで、首周りを冷やすのに使いましたが、こちらのほうが心拍数が下がったような気がします。

しっかり体を冷やしてから再スタートしたところ、最初は足が重たく感じましたが、徐々にほぐれていきます。そして気がついたらキロ4分50秒くらいまで上昇。これはまた苦しくなってペースが下がるかなと不安になりましたが、ペースは落ちることなく最後まで走りきれました。
「ザムスト COOL SHADER」で体を冷やしたときに、ウェアが濡れたことが後半の体温上昇を抑えた可能性が高いのですが、前半と後半ではまったく快適さが違いました。前半はただただ苦しいだけでしたが、後半は集中力も高く、フォームを気にしながら走る余裕も。
1回のテストですし、クーリングブレイクの効果も個人差があるはずですので、断言はできませんが、個人的にはクーリングブレイクがかなり有効であると感じました。休みを入れた分だけトレーニング時間が長くなりますが、そこはウォーキングではなく日陰で休むことでブレイク時間を短くすることもできるはずです。
さらに、冷たいドリンクやアイススラリーを組み合わせれば、高い効果を期待できそうです。
ただ、やはりクーリングブレイクを毎回実行するには、暑さに対する認識をアップデートして、しっかりと危機感を持つ必要がありそうです。ブレイクしたことに対して意味なく罪悪感が残っていて、私のスポ根精神の根深さを感じてしまいました。

クーリングブレイクのあるランニングで暑さによる事故を防ごう

私のスポ根精神をどうするかは今後の課題として、クーリングブレイクが有効であることは間違いなく、夏でもしっかり走り込みしたいなら、20〜30分に1回くらいのペースでクーリングブレイクを取り入れることをおすすめします。
もちろん、早朝や夜間などの涼しい時間帯に走ることが大前提で、なおかつ「無理をしない」ことは言うまでもありません。いくらクーリングブレイクが有効だったとしても、真夏の炎天下で高いパフォーマンスを維持できるほど万能な暑熱対策というわけではありません。
また、暑熱対策に対して正しい知識をしっかりと身につけることも大切です。今の日本の夏がどれくらい危険なのかをしっかりと把握し、安全に走れる環境を整えることが大切です。
熱中症になって体調を崩したら、トレーニング復帰まで時間がかかり、本調子にならないままシーズンインなんてことも考えられます。そんな残念なシーズンにしないためにも、これから秋にかけてのトレーニングはクーリングブレイクを入れてみてはいかがでしょう。
