【最大心拍数は個人差がある】「220 – 年齢」を信じてはいけない理由

ランニングウォッチ(スマートウォッチ)を使うことで、ランナーはランニング中にリアルタイムの心拍数を把握できます。さらにゾーン表示も可能で、トレーニングの目的に適した心拍数ゾーンで練習できるようになっています。

とても合理的なトレーニング方法で、多くのランナーは心拍ゾーンを意識したトレーニングを行うことで、走力を効果的に上げていくことができます。ただし、誰にでも有効というわけではありません。今回は、その理由について詳しく開設していきます。

目次

最大心拍数とは

最大心拍数とは、運動によって心拍数を上げていったときに到達できる、1分間あたりの心拍数のほぼ上限のことです。一般的には「最大心拍数180bpm」のように表し、この場合は1分間に心臓が約180回拍動することを意味します。

ランニング中は、筋肉が安静時よりも多くの酸素を必要とします。そこで心臓は、酸素を含んだ血液をより多く筋肉へ送り届けるために、拍動する回数を増やします。ゆっくり走っているときよりもペースを上げたときのほうが心拍数が高くなるのはこのためです。

ただし、ペースを上げれば心拍数がどこまでも上昇するわけではありません。運動強度を高めていくと、やがて心拍数はその人が到達できる上限付近に達します。このときの心拍数が最大心拍数です。

最大心拍数は、ランニングのトレーニング強度を設定するときにも使われます。たとえば最大心拍数が200bpmのランナーなら、160bpmは最大心拍数の80%に相当します。このように最大心拍数を基準にすることで、「今日は軽めに走る」「今日は心肺機能にしっかり刺激を入れる」といった運動強度を数値で管理しやすくなります。

ここで知っておきたいのが、最大心拍数は走力を表す数値ではないということです。

最大心拍数が200bpmの人が、最大心拍数180bpmの人よりも心肺機能に優れているわけではありません。また、トレーニングを積めば最大心拍数が大幅に高くなっていくというものでもありません。

最大心拍数を算出する方法

最大心拍数を知る方法は、大きく分けて「計算式から推定する方法」と「実際に運動して測定する方法」の2通りあります。よく使われる計算式は下記の2種類です。

A. 最大心拍数 = 220 − 年齢
B. 最大心拍数 = 208 − 0.7 × 年齢

最もよく使われるのはAで、ランニングウォッチによっては、Aの式を元にして最大心拍数を算出し、心拍ゾーンを決定しています。ただし、Aは年齢が高くなると実際の最大心拍数から外れやすいということで、より高い精度を求める場合には、Bの計算式が使われます。

それぞれの最大心拍数を年齢ごとに見ていきましょう。

年齢計算式A計算式B
20200194
25195190.5
30190187
35185183.5
40180180
45175176.5
50170173
55165169.5
60160166
65155162.5

たとえば45歳のランナーの場合、計算式Aでは最大心拍数は175になり、計算式Bでは176.5になります。1.5しか違いませんので、ほぼ誤差の範囲内です。それが60歳になると、160と166になるので少し大きな差になります。ランナーだと実感としては計算式Bのほうが近いかもしれません。

ただ、大切なのはどちらの計算式が自分に適しているかということではありません。そもそも、この最大心拍数の計算式でわかるのは、年齢ごとの平均値でしかありません。あなたの最大心拍数を知る方法は、計算式Aでも計算式Bでもなく、実際に運動して測定する以外にありません。

ランニングトレーニングにおける心拍ゾーン

次に心拍ゾーンについて説明します。心拍ゾーンは「最大心拍数に対する心拍数の割合」で决められており、たとえば最大心拍数の75%でトレーニングする場合にはゾーン3になります。

心拍ゾーン最大心拍数に対する割合運動強度の目安ランニングの例
ゾーン150〜60%非常に軽いウォーキング、リカバリー
ゾーン260〜70%軽いイージーラン、ゆっくりしたジョギング
ゾーン370〜80%ややきついペースを上げた有酸素ラン
ゾーン480〜90%きついテンポ走、閾値付近のトレーニング
ゾーン590〜100%非常にきついインターバル走などの高強度トレーニング

実際にはトレーニングメニューから心拍ゾーンを把握し、その心拍数の範囲内でトレーニングすることになります。たとえば、最大心拍数が170bpmの人がテンポ走をする場合には、136〜153bpmで走ります。

このように、トレーニングメニューに最適な心拍ゾーンが明確になっているので、少し勉強すれば、ランナーは最適なトレーニング負荷を自分で計算して実践できるというわけです。

ただし、その大前提となるのが「自分の正しい最大心拍数を把握していること」にあります。

最大心拍数は計算式で求められるのでは?そう思った人もいるかもしれませんが、すでにお伝えしましたように、計算式で算出される最大心拍数は、年齢別の平均値でしかなく、あなたの最大心拍数とは関係ありません。

最大心拍数には個人差がある

最大心拍数というのは計算式があり、「あなたの年齢であれば、最大心拍数は○○bpmです」というような説明を行っているケースが多々あります。でも、すでにお伝えしましたように、計算式で求められる最大心拍数は平均値です。しかも、正確な数値ではなく、その平均値ですら概算でしかありません。

実際の最大心拍数は、計算式から±20bpmの誤差があります。たとえば50歳のランナーの場合、計算式Aでは170bpm、計算式Bでは173bpmが最大心拍数の平均値になりますが、実際の最大心拍数の範囲は下記のようになります。

計算式A:150〜190bpm
計算式B:153〜193bpm

計算式Aを採用したとして、理論上の最大心拍数は170になります。それを基準にテンポ走(ゾーン4)をするとなると、136〜153bpmで走ることになります。でも、実際の最大心拍数が150bpmだったとすると、136〜153bpmはゾーン5に該当するので、オーバーペースになり、最後まで走りきれないことも考えられます。

しかも、±20bpmというのも目安で、人によってはそれよりも誤差が大きいことも考えられます。

さらには、ランニングウォッチに表示される心拍数にも誤差があります。そのうえ、ゾーンにも個人差があります。

基準となる最大心拍数や心拍ゾーンに個人差があり、それでいて表示される心拍数も誤差がある。そうなると、一体何を計測しているのかわかりません。でも、これが心拍数を使ったトレーニングの実態です。

正確な心拍トレーニングを行うために必要なこと

心拍数を基準にトレーニングを行う。ランニング雑誌などでは、あたり前のように語られており、Youtubeなどでも専門家が「心拍数を意識して」とアドバイスしています。

その考え方に間違いはありませんが、心拍トレーニングを行うためには、3つの前提があります。

  1. 最大心拍数を正確に把握している
  2. 計測精度の高い機器を使って計測している
  3. コンディションが安定している

まずは、自分の最大心拍数を正確に把握していることが最重要のポイントになります。正確に把握するためには、専門施設で運動負荷試験を受ける必要があります。そこまで正確でなくてもいいので、簡易的に知りたいという場合には、最大心拍数を自動検出してくれる機能を備えたランニングウォッチを使う方法もあります。

たとえば、Garmin Forerunner 265やその上位機種は、初期設定で「220 – 年齢」の計算式が適用されていますが、設定を変更することで自動検出できます。その他のメーカーでも、自動検出できるモデルがいくつかあります。

ただし、前提2の「計測精度の高い機器を使って計測している」にも通じるところがあるのですが、計測精度が低い場合には、自動検出される最大心拍数の精度も低くなります。このため、計測精度を高くするために、GARMIN HRM 200など、胸部で心拍数を計測できる機器が必要になります。

本格的な心拍トレーニングを行いたいなら、胸部や上腕部で計測できる心拍数センサーは必須になるので、購入することをおすすめします。

そして、心拍数というのは自分自身のコンディションも影響します。仮に計測により最大心拍数が170bpmとなっていても、前日の仕事が忙しくて疲れている場合や、睡眠不足の場合には、その日の最大心拍数が下がってしまいます。このため、心拍数を基準にトレーニングを行う場合、コンディション管理がとても重要になります。

ランニングウォッチに頼るのではなく感覚も大切にする

少しむずかしい話になったので、最後に重要なポイントをまとめておきます。

  1. 計算式では自分の最大心拍数はわからない(最大心拍数には個人差がある)
  2. 心拍ゾーンには個人差がある
  3. 自分の最大心拍数は専門施設で計測する必要がある
  4. 高い精度で心拍数を把握するには腕や胸で心拍数を計測できるセンサーが必須
  5. コンディションによって、その日の最大心拍数は変化する

心拍数を基準にトレーニングを行うというのは、理論的には正しいトレーニング方法になります。ただ、前提となる自分の最大心拍数が間違っていたり、ランニングウォッチなどの計測精度が低い場合には、正しい心拍ゾーンでのトレーニングが行えません。

また、それらが正確であったとしても、その日のコンディションによって、「今日の最適な心拍ゾーン」は日々変化します。このため、ランニングウォッチに表示されている数値にこだわらないことが大切です。

表示されている心拍数はあくまでも参考値で、同じくらい自分の感覚も重視してください。同じ心拍数なのに、いつもよりも走りが重いなら、その要因を考えて、思いつくものがあれば心拍ゾーンを下げたり、トレーニング内容を変更したりすることが大切です。

それに合わせて、コンディションが一定になるように、決まった時間に就寝・起床を行い、十分な睡眠時間を確保する必要もあります。

そして、最も重要なのが、これらの知識を持っておくということです。少なくとも計算上の最大心拍数とあなたの最大心拍数が一致しないということを理解しておくだけで、心拍トレーニングとの向き合い方が変わります。

意味のある心拍トレーニングにするためにも、まずは自分の最大心拍数をできるだけ正確に把握することから始めましょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次