ナイキがカーボンプレート×厚底ランニングシューズを発売してから、各メーカーが次世代ランニングシューズの開発を進めており、ここ最近ではアディダスもニューバランスもカーボンプレートを使ったシューズを発表しています。他のメーカーも従来の薄くて軽いシューズ以外の模索を始めています。
そんな中で、アメリカで圧倒的な人気を誇るブルックスも次世代シューズ争いに参戦してきました。ハイペリオン エリート(HYPERION ELITE)、その名前からも分かりますように、マラソンエリートのために開発された1足です。
すでに2月29日から限定発売されており、入手困難な状況にあるかもしれませんが、せっかく発表されたシューズですので、その方向性などをご紹介しておきます。
目指したのは「速さ×安定感」
次世代シューズとは言っても、厚底と補強プレート(カーボンプレート)という共通点はありますが、必ずしもすべてのシューズが同じ方向を向いているわけではありません。例えば次世代シューズ争いの先頭に立つナイキは、着地時の衝撃吸収力と推進力を重視しています。
それぞれが自社の理念に合わせてコンセプトを決め、それぞれに個性のある次世代シューズの開発を行っています。ブルックスが目指したのは「速さ×安定感」です。「速さ」というのがやや抽象的ですが、これはどのメーカーも目指しているところで、あえて表現するなら推進力でしょうか。
開発されているランニングシューズは、いずれもフルマラソンを2時間以内に走れることを隠れたテーマにしています。すでに非公認ながらキプチョゲがサブ2を達成しており、そこを目指さないのであれば次世代シューズ競争に加わる意味がありません。
だから、どのメーカーもサブ2を達成できるシューズを作るつもりで開発しています。なのでどうやって推進力を生み出すかは、メーカーそれぞれに考え方がありますが、推進力があることは次世代シューズの最低条件になっています。
あとはそれに何を掛け合わせるかということがポイントで、ブルックスは安定感を選びました。そもそもブルックスのランニングシューズは、体重のあるアメリカ人ランナーの足を支えるために、安定感には定評がありました。
ハイペリオン エリートは、そのカラーを全面的に活かしたシューズになります。独自のミッドソール材とカーボンプレートを搭載し、走行中の足首やその付近のブレが競合 品より少なく(BROOKS社データ)、レース後半までの走力を少しでも温存し、より速くより長く走れます。
ハイペリオン エリートは勝てるシューズなのか
ランナーの方からすると、1番気になるのはハイペリオン エリートがナイキのヴェイパーフライに匹敵するランニングシューズなのかという点が気になると思いますが、こればかりは発売されてみないことにはわかりません。そして、トップランナーが履いて結果を出すまでポテンシャルさえもわかりません。
難しいのは、ハイペリオン エリートをブルックスの契約選手以外が選ぶ根拠がないことにあります。仮にものすごいポテンシャルが高いシューズだったとして、それを契約選手が証明できるかどうか。
それはシューズの良し悪しというよりも、マーケティングの問題になります。ブルックスがこのシューズを履いて勝てる選手を抱えているなら、爆発的な人気を期待できますが、そうでないなら数ある次世代シューズの中に埋もれてしまいます。
特に日本では1部のランナーに熱狂的なファンがいるとはいえ、シェアもそれほど高くありません。ヴェイパーフライが入手しやすい環境で、ブルックスを選ぶ理由がどこにあるのか。これをブルックスが示すことができるかどうかで、人気シューズになるかどうかが決まります。
RUNNING STREET 365でいくら「いいシューズです」とアピールしても売れるものではありませんし、RUNNING STREET 365では履いていないシューズを紹介するのにプレスリリース以上のことは語れません。
ですので、現時点ではハイペリオン エリートは未知数のシューズで、期待値は高いけど勝てるシューズかどうかがわからないというのが本音です。
ハイペリオン エリートはどんな人に向いている?
動画を見てもらうとわかりますが、ハイペリオン エリートはフォアフットを意識して開発したランニングシューズです。でも、これまでブルックスは踵着地を得意とするランナー向けにシューズを提供してきました。
これをどう考えるかで、ハイペリオン エリートを買うべきかどうかが決まるかもしれません。従来のブルックスシューズが好きだという人にとって、もしかしたらハイペリオン エリートは違和感があるかもしれません。実際に履いていないので、それは推測に過ぎませんが、そうなることは容易に推定できます。
そうではなく、純粋に速く走れるシューズを手にしたいのであれば、ハイペリオン エリートは選択肢のひとつになるはずです。ただ、動画を見る限りでは着地方法にやや癖があります。フォアフットではありますが、ドロップが大きいので感覚的にはフラットに近い着地になります。
もちろんブルックスが提供する動画の走り方が、このシューズのポテンシャルを最大限に引き出すかどうかはわかりません。ただ、走り方によって感じられるスピード感がまったく違ってくるはずです。このため、人によっては最高のシューズになり、人によってはそうでもないシューズになります。
ただし、そうではないという人もフォームを少し変えれば履きこなすことはできるはずです。次世代シューズのほとんどが「シューズに合わせた走り」を要求されることを思えば、それほど大きな問題ではありません。多少は相性がありますが、むしろそれよりも重要なのはフィット感です。
まずは店舗で履いてみて、ストレスがないかの確認をしてみましょう。2月29日から新宿西口ハルクや主要店舗10店で販売を開始していますので、お近くにブルックスを取り扱っている店舗がない場合を除き、まずは試し履きされることをおすすめします。
ハイペリオン エリート商品概要
価格 | 27,000円(税抜) |
サイズ | 25.0-28.0cm |
ソール厚さ | 35mm-27mm ドロップ:8mm |
重量 | 196g (27.0cm/片足) |