世界陸上の女子マラソンから市民ランナーが学ぶべきこと

カタールのドーハで開催されている世界陸上。女子マラソンで天満屋の谷本観月選手が7位に入賞しました。そして中野円花選手は11位でフィニッシュしています。残念ながら池満綾乃選手は棄権となりましたが、日本の主力選手の多くがMGCを選んだ中で決して悪くない結果です。

しかも、スタート時の気温が32.7℃、湿度が73.3%という悪条件。完走率はなんと60%以下と、近年まれに見る厳しいレースになりました。

そもそも、スタート時間の10時間前に「気温が30℃以下になりそうだ」ということで、ようやく開催が決定されたという経緯があります。ということは、予想の精度がもう少し高ければ、中止となっていた可能性があります。

気温が30℃を超える環境は、マラソンを走るのには適していないというのが、世界の認識であり、これが来年の東京オリンピックにも何らかの影響を及ぼす可能性すら出てきました。

あれだけMGCで盛り上がったのに、気温が高すぎてオリンピックのマラソンは中止なんてことも考えられます。でも、30℃を超える気温の中で走るのは、それだけ選手にとって危険なわけです。

キロ3分で走るようなトップアスリートになると、体への負荷はわたしたちよりも大きくなるのは明らかです。しかも勝ちに行くわけですから、市民ランナーのように、きつかったら歩くなんてことはできません。

言うまでもありませんが、気温が高すぎると、熱中症のリスクが上がります。

心拍数がかなり高い状態になるので、レースとしてもスピードを出すことができません。MGCの設楽選手以外がキロ3分15秒で走っていたのは、いつもよりも1キロで15秒も遅いタイムを「適正」だと判断したからです。

それくらい、ペースを落とさないと走れないのが夏場のフルマラソンです。

では市民ランナーで、気温を考えて走っている人がどれくらいいるのでしょう?しっかり準備をしてきたレースで、例年よりも気温が10℃近く上がったとします。それを考慮して、いつもよりもスピードを抑えることができるか。

日本では市民ランナーであっても「自己ベスト更新至上主義」が根付いています。どんな状況においても、自己ベスト更新するのが最高の結果であり、多くのランナーがそこを目指します。

でも、気温20℃の環境と気温30℃の環境で、同じように走れるわけがありません。なのに、気温30℃でも気温20℃のときと同じようなペースで走り出す人がたくさんいます。

確かに自己ベスト更新は素晴らしいことですが、ランナーに求められるのは過去の自分を超えていくことだけではありません。与えられた環境の中でベストを尽くすことができれば、タイムが悪くてもそれは失敗レースではありません。

だから本当は、タイムなんて気にする必要はありません。

マラソンの完走タイムに影響するのは、自分の走力だけではありません。トレーニングを積み重ねて成長した幅よりも、当日のレースコンディションやコース設定が与える幅のほうが大きいことが多々あります。

もちろん、努力をしても意味がないわけではなく、努力の結果がタイムとして現れるとは限らないのがマラソンです。そこがマラソンの面白いところであり、何度も挑戦したくなる理由でもあります。

レースに挑むにあたって、何ヶ月も前から準備をします。そのときに、目標を決めるのは大事なことです。「サブ3」「サブ4」といった目標を立てて、そのために必要なことを逆算してトレーニングプランを立てる。

そして、当日までコツコツ積み重ねていく。

でも、レース本番での気温が高すぎたり、自分のコンディションがいまいちだったとしたら、目標設定を変更することも大事です。前日に様々な条件を考慮して自分のレースプランを立て、走り出してから微調整をする。

場合によっては「走らない」という選択肢もあります。

レースだけ頑張ればいいのではなく、マラソンはそのプロセスが大切です。レースになったら、その日の条件に合わせて、練習でやってきたことをトレースするだけです。

それで当初の目標を達成できなくても気にする必要はありません。マラソンというのはそういうものです。たった1℃の気温差がタイムに影響を与えます。たった数十メートルの高低差だって影響します。

レースに挑むときには、過去のタイムを1度忘れて見てください。冷静に今の自分、レース条件を考えてプランを立てる。レースではそのプランを遂行するだけ。そういうマラソンができるようになると、失敗レースが減るはずです。

10月に入っていよいよ秋マラソンが始まります。秋マラソンは気温が高くなることも多く、前半に飛ばしすぎて後半バテるということがよくあります。そうならないように、きちんと気温を考慮したペース設定をしてみてください。

おそらくこれまでと違う、マラソンの楽しみ方が見えてくるはずです。

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