日本一早いマラソンレポート「Red Bull 400」THE FINAL

「今年がTHE FINALになる」と発表したRed Bull主催のランニングイベント「Red Bull 400」。あまりにも突然な発表だったこともあり、会場にはそのことを知らずに「来年も頑張ります」とコメントした方もいました。ただ会場の盛り上がりは過去最高。

ファイナルなら大会記録を更新して終えようという猛者もいれば、過去の自分をかならず乗り越えていこうと誓うリピーターも。そしてイベントそのものを全力で楽しもうという参加者や応援者たち。たくさんの想いが詰まったTHE FINAL。そんな最後の大会をレポートしていきます。

目次

Red Bull 400は自分と向き合う人生最長の400m走

Red Bull 400は札幌・大倉山ジャンプ競技場を逆走する究極の400mレースです。その標高差は130m、最大傾斜は37度。実際に目にすると、それは挑む者たちを拒む壁のようであり、とても最後までたどり着ける気がしません。そもそも、なぜここを走ろうと思ったのでしょう。

初見では間違いなく攻略できない。それがRed Bull 400。それでも、どんな結果になったとしてもベストを尽くせば、ジャンプ台の頂点で人生最大級の達成感を得られます。それは他の競技では得られないものであり、振り返った景色は忘れられないものになります。

ただ、Red Bull 400最大の魅力は別のところにあります。達成感を得たその瞬間から湧き上がってくる「もっとやれたはず」という後悔。それは順位やタイムに関係なく、あらゆる参加者にもたらされるご褒美です。悔しさはそのままモチベーションになり、私たちを強くしてくれるから。

レースで感じた限界を1年後に通過点にすること。これがRed Bull 400参加者に科せられる課題。ただ、それを達成しても次の悔しさが湧いてきて、どんどん強くなっていけるわけです。だから今回のRed Bull 400もリピーターが多く、それぞれが自己ベスト更新を目指してスタートラインへ。

天候はTHE FINALにふさわしく、見事なまでの快晴。ジャンプ競技場らしく、地上から拭き上げる風がランナーの背中を押してくれるベストコンディション。しっかり練習を積み重ねてきた者も、思うようなコンディションでスタートラインに立てなかった者も、すべてを出し切って上を目指しました。

競技であるから、そこに勝者は生まれますが、この大会に敗者はいません。リタイアという選択をしたとしても、すべてを絞り出した結果であり、チャレンジし自分と向き合ったことは絶対にムダになることはありません。ただ、それを次回に活かすということはできませんが。

苦しさの共有というリアルが仲間との絆を強くする

Red Bull 400は個人戦だけでなく、仲間と走るチーム戦もあります。100mを4人の仲間でつなぐチーム戦は、回数を重ねるごとにRed Bull 400の中心的存在になっていったように感じます。このイベントの人気を牽引したのは間違いなくチーム戦です。

個人でも上位を狙えそうなレベルのランナーが、4人でチームを組んで優勝を狙うケースもあり、チーム戦はRed Bull 400の花形と言っても過言ではないほど人気があります。少なくとも華やかさという点では、見ている者を惹き付けるものがあります。

さらに今年のチーム戦は高いレベルで競い合っていたので、どこが勝ってもおかしくない状態。だからこそ余計に盛り上がります。個人戦も迫力はありますが、順位に関しては早い段階で決まってしまうレースも多く、そして勝利してもスポーツマンシップの精神から喜びを抑えているようにも感じます。

それはそれで美しさがありますが、Red Bull 400は限界を越えていくための競技。やはり爆発的な喜び方をするチーム戦のほうが相性がいいようです。ただ、自己中心的な喜び方ではなく、きちんと他のチームへのリスペクトも備わったうえでの大喜びであったことだけは付け加えておきます。

そして、チーム戦もタイムや順位だけではない魅力があります。繋ぐのは襷ではなくリングですが、そこに込められる想いは同じ。いや、大倉山ジャンプ競技場の激坂を駆け上がる苦しさは、駅伝やリレーマラソンとは異質のものであり、「たった100m」の途中で心が折れてしまったランナーもいました。

それほどの苦しさを共有する。それはSNSではシェアできないものであり、リアルの苦しさだからこそお互いの絆がさらに強くなります。今回も学生のチーム戦がありましたが、ここで繋がった4名は、きっとこれから何十年とこの日のことを語り合うことになるのかもしれません。

3年間の総括となったTHE FINALでオールアウト

個人的には今回で3回目の出場となります。初めて参加した2年前は右も左も分からず8分7秒。怖すぎて地面しか見えておらず、何も残せないことが悔しくて昨年リベンジ。このときは周りを見る余裕もあって6分22秒。大幅に成長した自分を感じました。

そしてTHE FINALとなる今年は、とにかく結果にこだわりました。これまで、すすきの周辺のホテルから走って会場入りしていたのをやめて、円山公園駅まで電車移動。前日も前々日も回復のために全振り。ただ、Red Bull 400のためのトレーニングはまったくできておらず。

とはいえ、この1年間はステアクライミングで安定した結果を出せており、体の使い方も色々見直したことで、昨年よりは走れるかもという期待はありました。「あわよくば5分台も」なんて根拠もなく思ったり。作戦としては「集中力を高める」というもの。スマホもランニングウォッチも外して、サングラスを着用。

目指すは立ち止まらず、地面に手をつけないこと。スタート前は胸の高鳴りはあるものの、いたって冷静。「すべてを出し切る」ために、飛ばし過ぎないことだけを意識して走り出します。ほぼ最後尾から1人ずつ抜いていき、上り坂が始まったところでスイッチオン。

もう周りの景色も、目の前の地面も目に入らす。向き合うのは自分の内側だけ。何度も手をつきそうになりながらも、四つん這いで上るということだけはせず。「苦しさは永遠に続かない」と1年前に学び、先週のWings for Life World Runで限界の向こう側の景色を見た私には、怖いものは何もありません。

徐々に乳酸が溜まっていく感覚はあるものの、1年前よりは余裕があります。余裕がありすぎて「もしかして、昨年よりは遅いかも」と不安になりつつも淡々と足を進めます。残り100mまでくると流石に走ることができず。そして呼吸も苦しく。残り50mで「もう無理だ」と弱い自分が悲鳴をあげました。

ついに手を使って歩いたり、少し止まって呼吸を整えたり。いつもなら、そこで弱気に飲まれてしまうところですが、今回は次がありません。「絶対後悔したくない!」と胸の奥で強く叫び、力を振り絞った残り5mは2本の足で駆け上がりました。そして、フィニッシュした瞬間、一気に胸が苦しく。

これまでにない達成感と苦しみ。タイムはわからないけど、いま出せるものをすべて出し切れました。THE FINALという舞台に恥じない走りができたかなと思って速報値を確認したら「6分0秒24」。ベストは更新したけど、0.24秒オーバーで5分台に届かず。

ちゃんと悔しさが残ってしまいましたが、それも含めてRed Bull 400。3年間、しっかり楽しませてもらいました。数時間経過した今は、ただただ感謝しかありません。

日本のランイベントに爪痕を残したRed Bull 400

今回のRed Bull 400がTHE FINALになると発表されたのは、大会開催が近づいてから。エントリーの段階ではまだ終了することは発表されていなかったにもかかわらず、参加枠はあっという間に埋まってしまいました。そして、エントリー出来なかった人からは「来年は」の声が多数。

その「来年」は残念ながらやってこないわけですが、会場の盛り上がりは明らかにTHE FINALとなった今回が最大。スタート前から閉会式まで強い日差しに負けないほどの熱量。インフルエンサーもゲストランナーも豪華で、Red Bull 400は間違いなく、日本のランイベントに大きな爪痕を残しました。

スキージャンプ台を逆走する。とてもシンプルなことなのに、こんなにも苦しくて、こんなにも楽しい。それが自分のランニング人生から消えてしまいます。私を含めて多くの参加者が、しばらくはその事実を受け入れることができずにいるかもしれません。

でも、Red Bullはこの大会を通じて私たちに教えてくれました。「挑戦することの楽しさ」と「限界は通過点でしかない」ということを。挑む対象は何でもいい。ランニングでなくても、本気で向き合えるものがあれば、毎日がキラキラするのだと、Red Bull 400を通じて学ぶことができました。

きっとRed Bull 400を1年の糧にしていたランナーもいるのでしょう。たった数分のために何時間もかけて、遠方から札幌まで来ている人も(私もその1人ですが)。たった数分のために1年のすべてを注ぎ込むランナーだっていたはずです。そんな夢中になれる競技がRed Bull 400でした。

期待している自分もいます。またRed Bull 400が再開されることを。それが叶わなくても、Red Bullがまた新しいチャレンジの舞台を用意してくれるということを。それが1年後なのか数年後なのかはわかりません。でも、そのときに準備できている自分でいるとしましょう。

なぜでしょう。走り終えて時間が経つほどに、自分を包む「やる気」が濃くなっている気がします。失っただけでなく、得たもや与えられたのもある。そう感じているのは私だけではないはずです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次