ランニングに関する本は世の中にたくさんありますが、これだけ本音が詰まっている本はなかなかありません。最初のページを開いてから1時間30分、あっという間に読み終えてしまいました。
内容に関してはここでお伝えはしません。ネタバレするのが嫌なのではなく、ここに書かれている1文字1文字がすべて揃ってこそ、「走って、悩んで、見つけたこと。」という本のメッセージが伝わります。
ここでポイントだけを拾って紹介しても、それは意味のないことですし、間違った解釈をする人も出てくるでしょう。
でも、どうしても「走って、悩んで、見つけたこと。」を、1人でも多くのランナーに手にしてもらいたいので、紹介記事を書き始めたわけですが、内容に触れずに本書の魅力をきちんと伝えられるかどうか。
まず本書を手にする前にお伝えしたいのは、この本を手にしたからといって自己ベストを更新できるようになるわけではないということ。でも、停滞していた記録更新の足がかりにはなるかもしれません。
マラソンに関する内容はとても基本的なことで、その基本的なことに大迫傑という選手がどう向き合っているのかについて書かれています。技術的な話ではなく、「大迫傑の心のあり方」が綴られています。
そのあり方というのも特別なことではありません。ただ、実行できる人が極端に少ないというだけのこと。
そして、これは「大迫傑の心のあり方」であって、本書を手にした人の心のあり方とはまた違うということです。参考になる部分もあるかもしれませんし、そうでない部分もあるはずです。
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この手の本が出たときにありがちな行動が、本に書かれている内容をそのまま真似るということ。そして、次に別の人の本が出たら、今度はそっちを真似る。これでは意味がありません。
ランナーには1人ずつ自分なりのランニング哲学があり、その構築の過程で学ぶということがあるのは当然ですが、軸足を整えずにあちこちにフラフラしていたのでは、いつまで経っても自分のランニングにはたどり着きません。
人がマラソンをする理由はそれぞれ違います。ランニングに何を求めるのかも違います。100人いれば100人の走る理由があります。だから自分のランニングは自分で見つけなくてはいけません。
また、部分的に抜き出して真似るというのも、あまり意味のないことだと思います。内容には触れませんが、本書の中で睡眠や食事に関して書かれています。そういう表面的な部分を真似ることは大事ではありません。
自分のスタンスを見直すきっかけにはなります。ただ、なぜ大迫さんがそうするのかという部分を自分で考えて、自分なりにきちんと消化したうえで真似るのでなければ、ランナーとして強くはなれません。
そのようなニュアンスも、「走って、悩んで、見つけたこと。」にメッセージとして込められているのですが、文章というのはどうしても読んだ人が自分に都合のいいように解釈してしまいがちです。
そこに釘を挿すわけではありませんが、この本はノウハウ本ではないということだけは理解してもらいたい。繰り返しになりますが、この本には「大迫傑の心のあり方」が書かれているだけです。
ただ、ランナーとしての原理原則が詰め込まれています。いや、人生を生き抜くための原理原則と言っても過言ではありません。彼のマラソンへの向き合い方は、私たちの仕事への向き合い方、人生との向き合い方にも通じるものがあります。
ここまで書くと、内容に触れたくて触れたくてウズウズしてくるのですが、そこは手にした人だけのお楽しみということで。
ひとつだけはっきりしていることがあります。この本を読んでから9月15日に開催されるMGCを見れば、大迫傑さんから目が離せなくなります。「こんな気持でスタートラインに立っているんだろうな」と想像できるようになります。
陳腐な表現になりますが、「走って、悩んで、見つけたこと。」はMGCが何倍も面白くなる1冊でもあります。
本を読むのが苦手という人がゆっくり読み進めても、3時間もかからないと思います。通勤時に少しずつ読み進めるだけでも、1週間もかからないでしょう。ただ、よくあるノウハウ本のように薄っぺらい内容ではありません。
重要なところに赤線を引いたなら、ページが真っ赤に染まってしまうほど、濃密な内容になっています。感じ方は人それぞれですので、本書から何を得られるかは人それぞれですが、きっと満足できるはずです。