40代から60代くらいのランナーなら、何らかの形でお世話になったことのあるであろう、24時間マラソントレーナーの坂本雄次さん。24時間テレビのマラソンサポートなどもされていたことがあるため、ランナーでない人も知っているほどの方ですが、そんな坂本雄次さんが最愛の妻に送ったラブレターが書籍になりました。
『天国ゆきのラブレター』は、坂本さんと妻・節子さんの61年にわたる愛情あふれる出会いから別れまでを描いた書籍です。この61年の間に2人が紡いだ手紙の数は、なんと339通。多くのランナーを支えた2人がどのようにして出会い、そして見送ったのかが本書には描かれています。
情熱の人、坂本さんらしい逸話の数々
坂本さんと妻・節子さんの出会いは修学旅行。お互いが修学旅行中……というのではなく、坂本さんが中学生で、節子さんが担当バスガイドという関係です。カメラで撮った写真を送るということで住所を聞き出し、そこから文通の関係が始まります。
LINEどころかスマホもない時代。昭和のあの頃を思い出すと、そのエピドードだけでも胸がぎゅっと締め付けられるような感覚になる人もいるかと思います。
そして、そんな人ならわかると思いますが、2人の関係にはいくつもの問題が待ち受けているのですが、それについては本書を読んでのお楽しみということで。ただ、ひとつはっきりしているのは、節子さんはいつだって坂本さんの背中を支え続けてきたということだけ。
節子さんがいなければ、Wellnessが発展することもなかったかもしれませんし、私たちが駆け抜けた圧倒的な美しいコースを持つWellnessのウルトラマラソンもなく、いま世界的な大会へと羽ばたこうとしている湘南国際マラソンや、横浜マラソンだって存在していたかもわかりません。
ただ、そんな節子さんにすい臓がんの病魔が襲い掛かり、トレーナーとしてもディレクターとしても多忙を極めていた坂本さんは10年間節子さんの介護中心の生活へとシフトしていきます。姿を見かけなくなった時期もあり、どうされたのか気にかけていた方も多いはずが、そのような事情があったというわけです。
本書ではそんな2人の物語だけでなく、結婚後に節子さんが坂本さんに書いた338通目のラブレター、そして2024年3月に天に召された節子さんの棺におさめられた339通目のラブレターの全文も紹介されています。
走ることに情熱を燃やし続けて、パートナーを大切にできていなかったなと、心に少し引っかかりがある方も、いつも近くで支えてくれるパートナーがいる方も、そして何よりも坂本さんにお世話になったという自覚のある方は、ぜひ本書を手にとって、2人の物語に触れてみてはいかがでしょう。
書名: 天国ゆきのラブレター
著者:坂本雄次
定価:1,760円(税込)
判型、ページ数:四六判、218P、上製版
ISBN:978-4-07-460010-6
発売日:2024年12月25日(水)
出版社:主婦の友社
坂本雄次さんプロフィール
坂本雄次(さかもと ゆうじ)
1947年、神奈川県生まれ
東京電力陸上部の監督を15年間務め、その間にマラソン未経験者を育成し、2時間30分台で走れるランナーを数多く輩出する。
その後45歳のときにランニング企画・運営専門会社「ランナーズ・ウェルネス」社を起業し、湘南国際マラソン、横浜マラソン、100キロウルトラマラソンを富士五湖、八ヶ岳野辺山高原、丹後、飛騨高山、白山白川郷で、24時間リレーマラソンを夢の島、平塚でプロデュースするなど各地でマラソン大会をゼロから立ち上げる事業を展開。ランニングスポーツを公金に頼らず地域振興として位置づけた第一人者である。
2024年には異ジャンルとなる事業を起業し、日本の歴史・風土・伝統技術、匠を次代に継承するための「日本細見旅づくり」に取り組んでいる。