運動生理学の視点で「ランニングの本当」を学べる『ランナーのカラダのなか』

ランニングの世界には事実かどうかわからないような話がいくつもあり、それが正解であるかのように広がっているけどエビデンスがまったくないという話がいくつもあります。トップアスリートが実践しているけど科学的にはむしろマイナスになるということも。

本書はそんなランニングやマラソンについて、運動生理学という視点で紐解いてくれる1冊です。少し専門的な内容になっていますが、目からウロコな内容も多く、とても参考になります。ランニングをしっかりと取り組みたい、もっと速く走れるようになりたいと考えている人にとてもおすすめの1冊です。

目次

走るときにカラダのなかで起きていることを知っておこう

より上を目指すランナーなら、走っているときに自分の体の中で何が起きているのか、疑問に感じたことがあるはずです。ただ、人間の体の仕組みはとても難しく、理解しきれなくなって挫折した人も多いはず。でも、どこかで「もっと体について知っていれば走りが変わるかも」なんて思ってますよね。

『ランナーのカラダのなか』はそんな思いに応えてくれる1冊です。

たとえば……

●一流ランナーがレース中に飲むドリンクは、なぜ激甘なのか?

→答え:例えばキプチョゲ選手が飲んでいるのは、コーラよりも甘い糖濃度14%のドリンク。理由は、糖質を使って走るほうが効率がよいからです。

●誰もが一度は経験する「差し込み痛」はなぜ起こる?

→答え:運動強度が上がるほど内臓への血流が低下し、腸粘膜のガードが甘くなり、普段は通さないはずのバクテリアなどが体内に侵入し、そのため局所もしくは全身性の炎症反応が引き起こされると考えられます。

●ペースを遅くしてまで人の後ろについて走るメリットってほんとうにあるの?

→答え: マラソンは屋外で行う競技であるため、当然、自然環境の影響を受けます。なかでも風の影響はバカにできず、風が強くなるほどランナーの酸素摂取量は高くなります。この風の影響は前にひとりランナーがいるだけでだいぶ小さくなり、どの位置で走るかで、より影響を少なくすることもできます。ではどの位置で走るのが最適解なのか?

このように、「走る」ときに、カラダのなかでなにが起こり、どう変化し、どう影響するのか? そして、それに対し、長距離を効率よく走りきるために、どのような対策をすべきなのか? の答え(応え)を、150を超える研究データをもとに、著者の藤井直人氏が導きだしています。

何度もマラソンを経験しているのに、なぜか記録が伸びない。ケガが絶えない、レース調整がうまくいかない、トレーニングメニューが自分に合っているのかわからない……。そんな悩める市民ランナーの「もっと走りたい」情熱に、必ず寄り添ってくれる1冊になっています。

内容が少し専門的ですので、最初はわからないところは無視して流し読み、全体をつかんでから何度か読み直してみると、すっと頭に入ってきます。そうなったらもう自分の知識になりランニングに活かされます。ランニングをもっと深く学びたいという人は、ぜひ本書を手にしてみてください。

書誌概要

著者:藤井直人(筑波大学体育系助教)
定価:1,650円(税込)
体裁:A5判・160ページ 
発売日:2023年10月26日  
小学館:https://www.shogakukan.co.jp/books/09311548

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