マラソンの日本記録保持者の大迫選手や、世界記録保持者のキプチョゲ選手がランニングパンツではなくハーフタイツを履いてマラソンに出場するようになり、徐々に日本でもスパッツ着用するランナーが増えてきました。
そうなってくると、これまでランニングパンツで走っていた人でも、本当に意味があるのか気になりますよね。そこで今回は多くのアスリートが注目している2XUコンプレッションタイツを着用し、実際に走ってみて感じたことをレポートしていきます。
トップアスリートがハーフタイツを選ぶ理由
レビューをする前に、まずはなぜ大迫選手やキプチョゲ選手がハーフタイツを選んでいるのかについて説明しておきましょう。彼らがランニングパンツではなく、ハーフタイツを選ぶ理由は大きく分けて2つあります。
- ランニングパンツは風の抵抗を受ける
- ハーフタイツは様々な効果がある
日本ではランニングパンツを履くのは主流で、箱根駅伝などでもほとんどの選手がランニングパンツを着用していました。大迫選手いわく「なぜかはわからない」としています。以前はランニングパンツしか選択肢がなかったわけですが、いまは選択肢のひとつとしてハーフタイツがあります。
単純に考えて、ランニングパンツは風の抵抗を受けます。ハーフタイツは肌に密着するので風の抵抗はありません。私たち市民ランナーのスピード領域では風の抵抗はランニングパンツとハーフタイツでそれほど変わりませんが、キロ3分で走る彼らにとっては、この抵抗がゴールするときのタイム差になります。
仮にそれが数秒であっても、タイムを削れるものは何でも使う。それはプロとしての当然の選択になります。
そして、何よりも最新のランニングパンツを履くことで様々な効果を得ることができます。どのような効果が期待できるのか、2XUのコンプレッションタイツを参考に説明していきます。
2XUのコンプレッションタイツの効果
2XUは自転車やトライアスロンをしているランナーさんの間で、少し前から注目されているメーカーで、「ツータイムズユー」と呼びます。2XUはスポーツに特化したコンプレッションウェアを開発し、300人近いトップアスリートが使用しています。
その2XUのコンプレッションタイツの効果は大きく分けて3つあります。
- 競技パフォーマンスの向上
- ケガのリスクを軽減
- リカバリーの促進
このあたりは他社のコンプレッションタイツと考え方は同じです。タイツで圧力をかけることで、筋肉の振動を減らし、筋肉を最適な位置に保つことで、パワーロスなく推進力を生み出すことができるのが最大の特徴です。血液の流れもサポートするので、より多くの酸素を筋肉に送り届けることもできます。
筋肉の振動を減らすので疲労を減らすことも期待でき、さらには第2の皮膚となるので体を温めやすいというメリットもあります。そうなるとウォームアップの効率が上がるので単純にケガのリスクが下がります。
そして、コンプレッションによってむくみを軽減し、血行を促進するので回復も早くなるということです。レースで履く理由としては、やはりパワーロスが減るということが大きく、練習で履く場合にはケガをしにくくなるというのが、大きなメリットになります。
ちなみに2XUのタイツを着用した場合、5kmのタイムが10.6秒縮まったという実験結果も公表されています。フルマラソンを4〜6時間で走るなら、キロ2秒の短縮というのはあまり意味がないように感じるかもしれませんが、トップレベルであれば、これは大きなアドバンテージになります。
【レビュー】実際に2XUのハーフタイツを履いて走ってみた
それではようやく本題です。実際に2XUのハーフタイツを履いてインターバルトレーニングとペース走をしてみて感じたことをレビューしていきます。着用したのはELITEシリーズのコンプレッション ショートです。
2XUのラインナップについては後ほど説明しますが、レビューするのはおそらく廃盤になっているモデルですが、商品名からもわかりますように最高レベルのコンプレッションタイツになります。
まず悩んだのが下着をどうするかという問題です。これはハーフタイツを履くときにいつも悩ましい問題になります。メーカーのHPではベースレイヤーとしても使えるとなっていますので、「どっちでもいい」という見解なのでしょう。
ということで、まずは下着を履いてからハーフタイツを着用して、インターバルを走ってみました。インターバルは400m×10本で72〜75秒設定です。キロ3分ペースなのでトップランナーの領域ですね。
インターバル前に何本か流しを入れてみましたが、GARMINが一瞬だけキロ2分35秒を示しました。そんなスピードを出したつもりはないのですが、確かにロスが極端に少ないように感じました。実際にインターバルを行ったときも、その感覚は続きます。
最も強く感じたのは、足を引き上げるスピードと可動領域が、ランニングパンツとまったく違うということです。最短距離で太腿が持ち上がり、いつも以上に前に出ています。走り出す前はハーフタイツが動きを阻害するのではないかと心配していましたが、むしろ動きをよくしているのがわかります。
ただ、そういう走り方に慣れていないので違和感はあります。力が入っていないというか1歩1歩がスカスカしている感覚。でも、400mを72〜74秒でまとめていたので、決して走りが悪いわけではありません。むしろ無駄な力が入っていないのでしょう。
実際に走り終えた翌日以降に、思ったほどの筋肉痛が起こりません。いつもよりもリカバリーに時間がかからなかったのは、消耗もしていなかったからでしょう。
次のペース走では、ベースレイヤーとしてランニングパンツの下に下着なしで履きました。ペース走は3分50秒設定で10kmの予定だったので、風の抵抗を気にするようなスピードではなかったのと、下着なしでハーフタイツを履く勇気がなかっただけです。人がたくさんいる公園を走ったので。
この日は2回目の着用ということで、走りがスカスカするのを感じはするものの違和感というほどではありません。ただ、3日前に40kmのLSDをしたこともあって、思った以上に疲労が残っており、まったくスピードに乗れません。
スピードに乗れないから頑張って地面を押し出しますが、そうすると途中で失速するわけです。きっと10kmは無理だなと思っていましたが、徐々にペースは落としつつも、きちんと10kmを走りきれたのは2XU効果でしょうか。
こういうのは履いていたときとそうでないときの比較ができないので、効果があったと断定できないのが悩ましいところです。でも、はっきり言えるのは「気に入った」ということです。これからもポイント練習で履くでしょうし、レースでも着用することにします。
私のペースなら抵抗は気にならないので、ランニングパンツのベースレイヤーという使い方になると思いますが。下着はやっぱりじゃまです。下着の縫い目で圧迫されるのであまり着心地もよくないので。これは人それぞれかと思いますので、自身で判断したほうがいいかもしれません。
2XUのグレード
2XUはハーフタイツ以外にもロングタイツやスリーブも発売しています。グレードとしては下記の5種類があります。
MCS RUNNING:シリアスランナーのレース用
MCS TRAINING:シリアスランナーのトレーニング用
PWX :一般ランナー向けスタンダードモデル
RECOVERY:運動後の回復用
THERMAL:寒冷地などの寒さ対策用
ランナーが走るときに使うモデルとしては、MCSかPWXのいずれかになるかと思います。サブ2.5以上を狙うのであれば、MCS TRAININGとMCS RUNNINGの2種類用意しておきたいところですが、ポイント練習などをしない一般の市民ランナーであればPWXで十分です。
サブ3を狙うレベルのランナーが、1番悩ましいところかもしれません。私がまさにそのレベルなのですが、今回着用したMCS相当であろうELITEを完全に持て余した感じがあります。慣れればもっと履きこなせるとは思いますが。とはいえ、迷ったらMCSを選んで間違いありません。履きこなせるレベルを目指して走り込めばいいだけですので。
まとめ
2XUのハーフタイツを履くまでは、これからハーフタイツが主流になるという話を信じていませんでしたが、今回のレビューでサブ3以上のレベルを望むランナーであれば、ハーフタイツを履くのがあたり前の時代がやってくることを確信しました。
ランニングパンツを使うか使わないかは人によって違いますが、少なくともハーフタイツは着用する。それはトップランナーの多くがヴェイパーフライを選んでいるのと同じで、1秒を削るためにハーフタイツを履かない理由がどこにもありません。
コンプレッションが苦手という人もいるかもしれませんが、コンプレッションが大嫌いな私でもストレスなく履くことができました。買うかどうかで迷っているなら、これは間違いなく買いのアイテムです。ぜひ自分に合ったハーフタイツを導入しておきましょう。