日本一早いマラソンレポート「第22回新宿シティハーフマラソン・区民健康マラソン」

参加費11,000円のハーフマラソン。そう聞くと「高額すぎる」と感じてしまう人がほとんどかもしれません。私も流石に高いというのが最初の感想。でもラン仲間が出場するというので応援に行ってみましたが、いろいろと「これもありなのではないか」という思いが強くりました。

他の大会と比べて、特別待遇を受けられるわけではありません。他の大会よりも参加賞が豪華なわけではありません。でも、参加したランナーは参加費に見合うと思えるような1日になったはずです。そんな第22回新宿シティハーフマラソン・区民健康マラソンをレポートします。

目次

新しいチャレンジを続けている新宿シティハーフマラソン

2年前にも新宿シティハーフマラソンのレポートを書きましたが、今回はラン仲間が走るということで、また違った気づきがあるかなと感じて、大会会場でもある国立競技場へと向かいました。国立競技場をスタートして、新宿の名所を駆け抜けて国立競技場に戻って来る。これが新宿シティハーフマラソンの魅力です。

ハーフマラソンのスタート時間は8時30分。これは道路封鎖による交通網への影響を考えてのことだと思いますが、世界にはもっと早い時間帯にスタートする大会もあります。スタート時間が早いとはいえ、そもそも新宿シティハーフマラソンは区民の健康促進ための大会。区民にとってはそこまで無理のあるスタート時間ではありません。

全国各地からランナーが集まるようになっても、「区民のため」という軸をブラさない。そういうところが新宿シティハーフマラソンが多くのランナーを惹きつけ、かつては壮絶なクリック合戦が行われていた理由なのかもしれません。まずは「区民のため」、そして次に「ランナーのため」を常に考えて、新しいチャレンジを行っています。

今年は新宿アルタ前までコースを伸ばしています。少し前にはコースに「神楽坂」を加えて、今年は「アルタ」が加わりました。ランナーの中心世代にとって、新宿といえばやはり「アルタ」であり、そういうランナーが嬉しくなるような要素を盛り込むことに躊躇しないのが素晴らしいところ。

このままいくと、数年後には歌舞伎町さえコースに組み込まれてしまうかもしれませんが、それを実現してもおかしくないくらい、新宿シティハーフマラソンは現状維持を嫌い、常にこれまでにない取り組みを実施しています。それでいて、ランナーの聖地である国立競技場を拠点としているわけです。

もちろん完璧なマラソン大会というわけではなく、ランナーに対して道が狭いなどのネガティブな評価もあります。参加費も決して安くありません。でも、参加費が高いこともあってか、参加者はどことなく余裕のある人たちが多く、ネガティブな要素すら楽しんでいる用に感じます。

新宿という地の利を活かしたコース設定

マラソンといえばフルマラソンをイメージするランナーも多いかもしれません。ハーフマラソンはあくまでもフルマラソンの調整に走るもの。だから参加費に11,000円も払えない。その気持ちは同じランナーとしてわかりますが、実はハーフマラソンは地域ごとに個性が現れやすく、全国に魅力的な大会がいくつもあります。

たとえば、全エイドで地元のフルーツが出てくるような大会もありますし、フラットであることを活かして記録更新をサポートする大会もあります。新宿シティハーフマラソンは「新宿を走る」を個性とした大会になっています。

国立競技場をスタートして外苑のイチョウ並木、御苑トンネルを経て、新宿区にキャンパスのある早稲田の応援が鳴り響くアルタ前で折り返します。そして、靖国通りを駆け抜けて神楽坂へ。新宿に来たことのない人ですら、耳にしたことのあるスポットがコースに組み込まれています。

面白いのは新宿都庁側はコースに含まれていないという点です。新宿都庁周辺の管轄は「東京都」であり、新宿シティハーフマラソンは「新宿区」の大会だという強い意志を感じます。ちなみに新宿区役所は歌舞伎町にあり、やはりいずれ歌舞伎町も走れるのではないかと期待したくなります(ちなみに新宿アルタは今年で閉店)。

コースそのものは折り返しも多く、急坂がいくつもあります。しかもハーフマラソン定員6,000人に対してコースが狭いなどのネガティブな評価もありますが、それでもとにかくランナーに楽しんでもらいたいという気持ちが、このコース設定からも伝わってきます。

そして、このコースが成立するのは新宿区民の協力があってのこと。多くの人が暮らしている新宿で道路を封鎖して開催される大会ですので、困っている人もいるはずです。ただ、そういう人たちに対しても、見えないところで丁寧に説明をして、協力をお願いしているであろうことは容易に想像がつきます。

ランナーファーストが根付いている大会

新宿シティハーフマラソンの応援に来るのは今回が3回目でしたが、毎回のように驚きがあります。今回、最大の驚きだったのは、スタートエリアで上着を回収し、それをゴールエリアで返却するサービスを行っていたことです。

気づいたのはラン仲間が準備しているときで、新宿シティハーフマラソンのホームページの「よくある質問」を読んでいたら、そのような記載がありました。最初はまったく意味がわかりませんでした。そんなサービスをしているマラソン大会を私は知らなかったので。

この「よくある質問」が本当に上手くできていて、このページだけでも新宿シティハーフマラソンのスタッフの熱意を感じられるので、すでに走ったという方も、走ったことがないという方も、ぜひ1度目を通してもらいたいのですが、それを話すと長くなるので、上着の回収について。

Q14.スタート直前まで防寒着を着ていたいのですが、可能ですか?

A.スタート直前まで上着を着ることが可能です。スタート直前にトラックの周囲に置いていただければ、フィニッシュ後の参加賞配付エリアまで運搬します。
ただし、上着の取り違い等には、主催者は一切の責任を負いません。(大会プログラムP14)

引用:https://www.shinjukucity-halfmarathon.jp/qa/

引用させてもらいましたが、寒さ対策としてスタート直前まで上着を着ることができるようになっています。スタート時間が早いことへの配慮だと思いますが、ランナーのことを思っているからこその発想です。そして、ここでポイントになるのは「上着の取り違い等には、主催者は一切の責任を負いません」と明記している点です。

きっとこのサービスを検討するにあたって、「取り違えることがあるから……」という声もあったのでしょう。それを「主催者は一切の責任を負いません」で一刀両断する潔さ。曖昧さを残さずはっきりとさせる。それによってランナーは迷いがなくなる。新宿シティハーフマラソンは各所にそういうところが感じられます。

何度だって走りたくなるマラソン大会

新宿シティハーフマラソンを応援者として沿道から観ていると、よく考えられている大会だということが伝わってきます。ランナーの視点では見えないような部分でも、ランナーが快適に走れるように配慮しており、地元の人たちにもできるだけ迷惑をかけないように考えられてもいます。

どうしても反対側の歩道に渡れないような場所もあるのですが(そのために何キロも迂回が必要)、渡りたいという地元の方にとても丁寧に説明をして、納得してもらおうというボランティアさんや警備の方の姿勢は、清々しさすら感じました。

ランナーだとそういう部分を知ることはないかもしれませんが、ランナーも他のマラソン大会にない丁寧さを肌で感じているのでしょう。いたるところで笑顔を見ることができ、走れなくなった後方のランナーであって悲壮感もなく、マラソンを楽しんでいるように感じます。

そして、私のラン仲間も含めて「来年も出る」という声がSNSなども含めて、いたるところで聞こえてきました。私もちょっと走ってみたくなりましたが、実は新宿シティハーフマラソンは応援も楽しかったりします。今回はショートカットしながら、走ってアルタ前でも神楽坂でも応援をしました(走行距離13km)。

ラン仲間が出場するなら、きっと来年も応援して回るはずです。走るのも楽しいし、応援も楽しい。そして、早い時間に終わるから打ち上げも満喫できる。これが成立するための参加費だと考えれば、決して高すぎるということもなく、むしろそれに見合うだけの価値が十分にあるように感じます。

とはいえ、東京マラソンも2026年から値上がりすると発表があり、新宿シティハーフマラソンの参加費もさらに上がる可能性もあります。それでも、今年参加したランナーの多くは来年もエントリーするはずです。むしろエントリーしない理由がひとつも見つからない。今年の新宿シティハーフマラソンはそれくらい魅力的な大会になっていました。

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