先週から始まったサブ3を目指す挑戦、連載直後の週末に私は大阪にいた。ハルカススカイランに出場するために。あべのハルカスの1階から60階まで、1610段の階段を駆け上がるクレイジーな大会。
昨年はこの大会でいい結果を残すためにトレーニングを積み重ねていた。ところが今年はロードのことしか考えていなかったので、階段対策をまったく行わないでスタートラインに立つことになった。
それでもインターバルなどをしていたので、心肺機能はなんとかなるだろうとひそかに期待していたのだが、やられたのは呼吸器系。足には余裕があるのに、酸欠状態になって大失速。13分52秒と昨年より40秒遅かったのは、すでに日本一早いマラソンレポートでお伝えしたとおりだ。
ロードを走る筋肉と、階段を駆け上がる筋肉はまったく違う。昨年は下半身の強化を重視していたため、週2回のスクワットやジャンプ、縄跳びなどの週発型の筋トレ中心のトレーニングを行っていた。
その結果、ハルカススカイランでは思ったほどタイムが伸びなかったのだが、思わぬところで結果ついてきた。ちょっとした社会現象にもなったワークマンシューズでのサブ3.5達成や、軽く走っての愛媛マラソンサブ3.5。
ここで気づいたのは、40代にもなると筋トレをしないことにはフルマラソンを速く走ることはできないということ。悲しいかな、30代のようにただ月間走行距離を伸ばせば速く走れるということはない。
老化による筋力低下にいかにして抗うか。その方法は2つあり、ひとつは体重を落とすこと。そしてもう一つがパワーをつけること。物理が苦手だった人も「F=ma」という公式は覚えているだろう。
Fが力、mが質量でaが加速度だ。マラソンのスピードに影響するのが加速度なので公式は次のようになる。
a=F/m
加速度は力に比例し体重に反比例する。思わぬところで学校の授業が役立つだろ?学校で学んだことは無意味なことばかりではないのだ。これからは物理の先生の家の方に足を向けて寝ないように注意して欲しい。
よくわからない?
とても簡単な話だ。マラソンにおけるスピードは筋力がプラスに作用し、体重がマイナスに作用する。筋力をつけるのが面倒なら体重を落とせばいい。体重が5kgくらいになれば風のように走れるだろう。風に飛ばされてしまうかもしれないが。
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私は筋肉がつきやすい体質なので、サブ3を狙うなら筋トレをすればいいことになる。ところがだ、筋肉というやつはもれなく体重を増やしてくる。これが10年以上も私がサブ3を達成できなかった理由のひとつ。
スピードを出せるようになるために、筋トレをすると体重が増えてプラスマイナスゼロということをずっと続けてきた。それを終わらせるために、今シーズンから筋トレは最小限にしている。
その代わりにインターバルやペース走のような、走って体を追い込むトレーニングを増やしている。だからハルカススカイランで40秒も遅くなったことは気にしていない(ほんの少ししか)。
サブ3を達成するには、体重を増やさずに筋力をアップさせなくてはいけない。トップランナーは生まれ持ってそれができる体質だったりする。人はそれを才能と呼ぶのだが、もちろん才能だけでトップアスリートにはなれない。
ただ才能がなければトップアスリートにはなれない。1%の才能がないのに99%の努力をしても天才にはなれないとエジソンは言った。ただ、サブ3の世界は才能がなくても手が届く。カンボジア人がそれを教えてくれたはずだ。
彼が覚醒するまで、私は1度も彼に影を踏ませていない。今では彼の影を踏むどころか影を見ることすらできない存在だが、凡人も正しい努力を積み重ねれば、オリンピアンになれるのだ。
私にとっての正しい努力は、筋肉を肥大させずに筋力をつけるということ。そのためにはハルカススカイランの結果など気にしている場合ではない(思いっきり引きずっているな)。
認めたくないのだよ。老化というやつを。
ハダシスト重松
1975年11月生まれ。高校生まで関西で暮らし、「関東でサッカーをしたい」という想いで関東の大学へ進学。海外チームのプロテストに挑むも玉砕し、社会人となってお腹まわりの肉が気になりだした頃、大学時代の同級生に「マラソン大会に出ないか」と誘われる。
10kmとハーフマラソンを経験し、満を持して初マラソンでサブ3を狙うも30kmの壁に正面衝突して3時間11分6秒。その後、オーバートレーニングにより膝を故障するが裸足ランニングに出会い復活し、いまに至る。
RUNNING STREET 365編集長
万里の長城マラソン日本事務局代表
ワークマンアンバサダー
自己ベスト
フルマラソン:3時間3分55秒
ハーフマラソン:1時間26分25秒
HP:http://shigematsutakashi.com
Twitter:https://twitter.com/tshige07