【連載】ハダシスト重松・サブ3への挑戦 vol.03

10年以上跳ね返されてきたサブ3に、44歳が挑戦するこの連載。実際に始めてみて感じたのは、サブ3だから特別なことをするわけではないということ。劇的に効果のあるトレーニング方法があるわけでもなく、毎週のようにレースが入っているわけでもない。

この1週間は2回のポイント練習とジョグだけ。ただ、マラソンを走るというのはその積み重ねだ。初級者からトップレベルまでやるべきことは変わらない。キプチョゲだって週2〜3回のポイント練習とジョグが基本。筋トレもしているが、ランニング練習は同じ。

では、どこに差が出るのか。才能の違いなのか、それとも才能の他にも同じ練習をしても違う結果が出る理由があるのかについて書いていこう。


マラソンで世界と戦うのであれば、才能は絶対に必要だ。才能がないランナーが、フルマラソンを2時間ちょっとで走れるようになることは絶対にない。どれだけ頑張っても5kmで15分を切れない陸上部員なんて無数にいる。

そういう人がオリンピックに出たければ、猫ひろしのように国籍を変えるしかない。ただし才能がある人でも、すべてを投げ捨てなければ世界に届くことはない。どんなレベルの選手でも厳しいトレーニングを継続しなければ、その地位を維持することは難しい。

マラソンのトレーニングは基本的に超回復理論に基づいて行われる。体に大きな負荷を与えると、そこから回復する過程でトレーニング前よりも筋力や持久力は少し上がり、そのタイミングでまた高負荷のトレーニングを行う。これをひたすら繰り返すだけだ。

1回での成長率は初心者ほど大きくなる。ランニングを始めたばかりは伸び代が大きいので、1回のポイント練習で劇的にレベルアップできる。ところがレベルが上っていくにつれて、成長率は徐々に小さくなり、サブ3くらいになってくると、1回のポイント練習で目に見えてレベルが上がることはない。

ドラクエのレベルアップと同じで、Lv10くらいまでは短時間でレベルアップしていくが、Lv40くらいになると数日プレイしないとレベルが上がらない。

もちろんきちんと成長はしているのだが、1kmを3分30秒で走れてていたのが3分29秒になるくらいの成長率。この1秒というのは、その日の天候や自分のコンディションで変わってくる。なので、ポイント練習をしたのに1kmのタイムが3分31秒になることもありえるのだ。

そうなると、目に見えて成長しないことに焦ってしまう。

ここでやりがちなのが、ポイント練習の量や回数を増やすというミスだ。もちろん私も経験している。頑張れば頑張るだけレベルが上がると、純粋に信じていた時代が私にもあったのだ。あの頃の自分を眩しいと思うこともある。

それはいいとしよう。トップレベルの選手と市民ランナーの最大の違いは、自分の限界を見極めてトレーニングをしているかどうかにある。トップレベルの選手は感覚も鋭いし、さらに最近は血液検査などを行って、科学的に疲労を確認して追い込むトレーニングを行う。

回復していないのにポイント練習を行うこともしない。箱根駅伝に毎年出場しているある大学では、練習前の血液検査で悪い数値が出たらトレーニングさせてもらえないらしい。それくらい徹底して疲労の管理を行い、効率のいいトレーニングを心掛けている。

要するに高いレベルに入ってくると、自分のタイムに一喜一憂するのではなく、成長していると信じて、最高のタイミングに最適な質と量のポイント練習を積み重ねている。これはサブ3を狙う私のようなレベルの選手でも取り入れるべき考え方だ。


ところが私たち市民ランナーは血液検査をするのは現実的ではない。だから疲労具合やコンディションを、感覚で判断するしかないと思うかもしれない。だが、最近は様々なデバイスやサービスで疲労具合を簡易的に確認できるようになっている。

例えばランニングの管理ができるStravaには上のような「Fitness & Freshness」という機能がある。有料オプションを追加しないと使えないのだが、トレーニングの結果から、自分の体の状態を指標化してくれる。この機能があれば、コーチがいなくても血液検査をしなくても、ポイント練習のタイミングを判断できるようになる。

似たようなことはGARMINやPolarなどの、一般的なランニングウォッチでもできる。問題は指標が大事という意識を持てるかどうか。「自分は感覚派だから」「そんな指標はあてにならない」と言いながらも、サブ3の手前で停滞しているランナーが無数にいることを私は知っている。

私はこの考え方をトレーニングに取り入れて「回復してからポイント練習」を心掛けてから、タイムが安定するようになってきた。好不調の波が小さくなり、小さくとも確実に成長しているのを感じている。現代のマラソンにおいて、データや指標はかなり重要な要素になる。それが手軽に手に入る時代なのだから、それを使わない理由はどこにもない。

練習メニュー

午前午後
2019.11.15(金)ペース走:10km(4:05/km)
2019.11.16(土)JOG:6.5kmJOG:12km
2019.11.17(日)JOG:6.5kmトレラン:9km
2019.11.18(月)JOG:6.5kmJOG:12km
2019.11.19(火)JOG:6.5kmインターバル:400m×10本(75秒)
2019.11.20(水)JOG:6.5kmJOG:12km
2019.11.21(木)JOG:6.5kmJOG:12km

ハダシスト重松

1975年11月生まれ。高校生まで関西で暮らし、「関東でサッカーをしたい」という想いで関東の大学へ進学。海外チームのプロテストに挑むも玉砕し、社会人となってお腹まわりの肉が気になりだした頃、大学時代の同級生に「マラソン大会に出ないか」と誘われる。

10kmとハーフマラソンを経験し、満を持して初マラソンでサブ3を狙うも30kmの壁に正面衝突して3時間11分6秒。その後、オーバートレーニングにより膝を故障するが裸足ランニングに出会い復活し、いまに至る。

RUNNING STREET 365編集長
万里の長城マラソン日本事務局代表
ワークマンアンバサダー

自己ベスト
フルマラソン:3時間3分55秒
ハーフマラソン:1時間26分25秒

HP:http://shigematsutakashi.com
Twitter:https://twitter.com/tshige07

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次