
従来の常識にとらわれることなく、これまでにないランニングシューズを発表してきた、スイスのランニングブランド「On」が、トップアスリートが世界で戦うためのランニングシューズ「Cloudboom Strike 2」と「LightSpray Cloudboom Strike 2」を発表しました。
発売日は2026年7月30日ですが、事前に「Cloudboom Strike 2」を提供していただき、実際にさまざまなシーンで走ることができました。その内容を踏まえて、「Cloudboom Strike 2」と「LightSpray Cloudboom Strike 2」の魅力について徹底解剖していきます。
Onの日本市場に対する本気度が伝わってくる価格設定

シューズについての詳しい話の前に、Onが日本市場をどれくらい重視しているかについてお話しておきましょう。それは「Cloudboom Strike 2」から読み取れるのですが、「Cloudboom Strike 2」の価格は35,200円(税込)です。
正直なところ「高い」と感じる人のほうが多いかもしれませんが、実は「Cloudboom Strike 2」のアメリカでの価格は250 USDですので、これを1ドル160円で計算すると、1足40,000円という計算になります。アメリカは税別表示ですので、日本の消費税を乗せると44,000円という計算になります。

44,000円もするランニングシューズが、日本なら35,200円で購入できるわけです。その理由は「1人でも多くの日本人ランナーに手にしてもらいたいから」。
ちなみに「LightSpray Cloudboom Strike 2」は310 USDですので、日本円換算すると税込みで54,560円になりますが、日本での販売価格は44,000円です。なんと1万円も安く買えてしまいます。
日本だけここまで安く価格設定していることに、Onがいかに日本市場を重視しているかが伝わってきます。そして「手にしてもらえばわかってもらえる」自信があるのでしょう。
最大化されたランニングエコノミーでレース終盤の勝負を制する

「Cloudboom Strike 2」と「LightSpray Cloudboom Strike 2」には、「CloudTec Sphere」テクノロジーが搭載されています。これは革新的なフォーム材と緻密に計算された形状の組み合わせによるシステムで、ランニングエコノミーの飛躍的な向上を実現しています。
「LightSpray Cloudboom Strike 2」は競合する他社のレーシングシューズと比較して、ランニングエコノミーが1.6%も向上。3時間のフルマラソンなら、計算上は約2分20秒ものタイム短縮が可能になることがわかっています。
一般的なデイリートレーナーと比較してではなく、ハイスペックなレーシングシューズと比較しての結果であり、大舞台でのレースにおいて、この1.6%が大きなアドバンテージになることは容易に想像がつきます。

さらに、「Cloudboom Strike 2」は191g(26.5cm片足)、「LightSpray Cloudboom Strike 2」は158g(26.5cm片足)と、トレンドとなっているランニングシューズの軽量化も意識しています。
ミッドソールには前モデルから15%の軽量化に成功した「Helion™ HF」を採用しており、カーボンプレートも剛性を高めることで、より薄く軽いものになっています。
これらの機能により、「Cloudboom Strike 2」と「LightSpray Cloudboom Strike 2」はレース終盤になってもスピードを落とすことなく走りきれる1足に仕上がっており、自分史上最高のレースをサポートしてくれるハイパフォーマンスモデルとなっています。
Cloudboom Strike 2 を履いて感じたのは安定性の高さ

今回はメディア向けの説明のあと、実際に「Cloudboom Strike 2」を履いて走りました。このため、走り出す前には「スピードを出すことに全振りしたレーシングシューズ」という印象を持っていましたが、ファーストインプレッションで強く感じたのは「走り出すと安定している」ということ。
ミッドフットで着地することが前提になりますが(ミッドフットがエネルギーリターンを最大化できる)、前足部の安定感が非常に優れていて、どれだけペースを上げても体がまったくブレることがありません。ただし、立ち止まっていると、他のレーシングシューズと同様にかなり不安定さを感じます。
正直なところ、レーシングシューズにここまでの安定性が必要なのだろうかと思うほど。デイリートレーナーカテゴリーのシューズでも、ここまでの安定性を感じるシューズはあまりありません。そういう意味では、シリアスランナー専用モデルではなく、走力を選ばずに履ける1足でもあります。

気になったのは「重さ」です。物理的な重さでいえば十分に軽い1足なのですが、重心がソール側の低い位置にあるためか、少しだけ慣性によりシューズに振り回される感覚があります。ただ、そこも含めて最適化がされているはずですので、Onとしては「速く走るにはそれでいい」と判断したのでしょう。
設計者やトップアスリートの正解が、自分にとっても「気持ちよさ」に繋がらないことはよくある話です。ただ、個人的には重心がもう少し高いほうが、重さを気にせずに走れそうだなと。
着地時にミッドソールが大きく変形して、それにより強い反発力が生まれる「CloudTec Sphere」も走りながら感じられます。ただし、この季節は長い距離を走るのが難しいため、ランニングエコノミーに優れているという点に関しては検証できませんでした。とはいえ、データとしてそうなっているなら、そこは信じてもいいのかなと。
Runmetrixによるフォーム解析と「Cloudmonster 3」との比較

自分の感覚としては「Cloudboom Strike 2」は安定性も高く、スピードも出しやすいシューズという判断になりましたが、実際にRunmetrixを使ったランニングフォーム分析で、その感覚が正しかったのかを確認していきます。
比較対象として、Onの人気モデル「Cloudmonster 3」を履いて、同じコースを走っています。
ジョグペース


「Cloudboom Strike 2」と「Cloudmonster 3」をジョグペースで比較した場合、走りやすいのは「Cloudmonster 3」でした。
「Cloudboom Strike 2」はそもそもジョグペースで走るのが難しく、かなりペースを抑えるために弾むようにして走っています。その結果、接地の負担が大きくなっており、スコアで比較しても「Cloudmonster 3」が適していることがわかります。
ここで興味深いのは、「Cloudboom Strike 2」の安定した姿勢が飛び抜けて高い点です。すでにお伝えしましたように、ファーストインプレッションで安定性に優れているとお伝えしましたが、それが数値にもはっきり出ています。
レーシングシューズの場合、ゆっくり走ると安定性がなくなりがちなのですが、「Cloudboom Strike 2」はその傾向には一致せず、ゆっくりでも安定しているのがわかります。
レースペース


レースペースにおいても、ランニングフォームのスコアが高かったのは「Cloudmonster 3」ですが、心拍数は同じくらいだったのに、平均ペースが大きく変わっています。「Cloudmonster 3」は苦しみながらの4分34秒/kmだったのに、「Cloudboom Strike 2」は4分11秒/kmです。
スピードが出すぎて、重心移動する余裕がなかったのかもしれません。それでも安定性は優れていますし、走っていて不安に感じることもありませんでした。もっとも「Cloudmonster 3」も安定感が高く、ペースは上がりませんでしたが気持ちよく走れました。
このことからわかるのは、自分の走りには「Cloudmonster 3」のほうが適しているということですが、1秒を削りたいなら、最適なのは「Cloudboom Strike 2」ということです。ただ、「Cloudboom Strike 2」のポテンシャルをまだ自分が引き出しきれていないという感覚もあります。
本来ならもっとペースを上げられるのに、心肺機能や筋力が「Cloudboom Strike 2」の求める水準まで達していない。だから「Cloudboom Strike 2」のポテンシャルも引き出せていないのでしょう。
それでも、タイムを狙うレースで履くなら、間違いなく「Cloudboom Strike 2」を選ぶことになりますが。

自己ベスト更新に「Cloudboom Strike 2」はベストチョイス

私がレース用のランニングシューズを選ぶときに、最も重視するポイントが「軽さ」です。厚底化にともない、ランニングシューズは重たくなってしまいましたが、最近は軽量化を意識したモデルが主流となっています。
目安としているのは200gを切ることで、提供していただいた25.5cmの実測値が187gですので、この点は余裕でクリアしています。ただ、重量バランスが現時点では好みではありません。この点は走っていれば慣れるのかもしれませんし、個人差があるので、十分に軽いことを考えれば大きな問題ではありません。
スピードを出せば出すほど高い推進力を受けられるので、サブ3やサブ2.5を狙うようなランナーにもおすすめ。それでいて、ジョグペースでも安定しているため、フルマラソンで歩かずに走り切ることが目標というレベルのランナーも、自己ベスト更新を狙うならベストチョイスになります。

「自分は脚力が足りないから…⋯」そんな心配はいりません。脚力が足りないなら、足りないなりにサポートしてくれるのがCloudboom Strike 2」の魅力です。
あえて課題があるとすれば、カラーリングが好きかどうかでしょうか。もちろん自分の足に合うことが大前提ですが、自分の足に合うなら、あとはこのエヴァンゲリオンのようなカラーリングを受け入れられるかどうか(むしろそこが好きというランナーもいそうですが)。
アメリカなら4万円以上の価値があるハイエンドモデルが、日本なら3万円台で購入できてしまう。そんなコストパフォーマンスの高さも「Cloudboom Strike 2」の魅力。迷っているなら、間違いなく「買い」の1足です。今シーズンの相棒として向かい入れてみてはいかがでしょう。
