ランニングフォームのクセを直す必要があるのか

多くのランナーにとって悩みのタネのひとつが、ランニングフォームではないでしょうか。ランニング雑誌を見てみると、フォームチェックの連載があったり、マラソン大会のEXPOではフォームチェックをできるサービスもあります。

ほとんどのランナーが自分のフォームに自信がなく、それどころか変なクセがついていることを悩んでいたりします。ランニングコーチなどに「直したほうがいい」と指摘された人もいるかと思います。

でも、本当にそのランニングフォームを直す必要があるのでしょうか?クセを直したら速く走れるようになったり、ケガをしなくなったりするなら、やってみる価値はありますが、むしろクセを直した結果、ケガをするというケースがあります。

まず、大前提として知っておいてもらいたいのは、人間の体は1人1人みんな違うということです。両足の長さがまったく一緒というランナーはほとんどいませんし、若い頃にやっていたスポーツによって筋肉の付き方も違います。

シドニーオリンピックで金メダルをとった高橋尚子さんの、右足と左足で長さが違うというのは有名な話です。これは特別なことではなく、どんな人でも起こる当たり前のことです。

足の長さが違うわけですから、当然それが走りのクセになって現れます。でも、それは自分の体がアライメントを行った結果です。どうすれば無理なくフルマラソンを走りきれるかを、体が自然に調整した結果がクセなわけです。

このクセを矯正して直したらどうなるか?

当然これまでのように走れなくなります。だから、左右の足の長さが違う場合にはインソールを使います。でも、これまで何十年も左右の足の長さが違う状態でやってきたわけですので、足の長さが揃うようにしたら、今度は筋肉をつけ直さなくてはいけません。

右足が短いから右足のシューズを高くしたら、左右のバランスは良くなっても、走るための体は1から作り直さなくてはいけません。お医者さんなどは「当然そうすべき」と言うかもしれません。西洋医学的にはそれが正しい考え方です。

でも、現実問題として体を作り直すには少なく見積もっても3年はかかります。人間の体はそう簡単には変わりません。それだけ体づくりの時間に割くことができるのか。本当にそれでいいのかというのは自分なりにしっかり考えておく必要があります。

ここで提案したいのは、クセを取り除くのではなく、クセと共存するという選択肢です。走り方にクセがあるのは仕方のないことと考えて、それがケガに繋がらないようにケアや、弱い部分を補強します。

例えば膝に負担がかかりやすいなら、スクワットなどの筋トレをすることで、膝のトラブルから足を守れることもあります。ストレッチなどで体に柔軟性をつけることで回避できることもあります。

もちろん、それを素人判断で行うのは難しいかもしれません。でも、それも含めて試行錯誤するのがマラソンの面白さのひとつです。自分のクセを受け入れて、その中で自分ができるベストを尽くしてみてください。

ただし、絶対にインソールがダメというわけではありません。例えば足底筋膜炎のようなトラブルを抱えたときには、インソールなしで走るのは無謀です。でも、本当はそうなったときには走るのをやめるべきです。

基本的にケガをするのはフォームに問題があるのではなく、オーバートレーニングに原因があります。体が出来ていないのに、走り込みをしすぎて体の弱い部分が被害にあっているのがケガの正体です。もしくは体重が重すぎるか。

実業団ランナーやプロランナーなら勝つために、命を削るようなことも必要になりますが、私たち市民ランナーは命を削って走る必要はありません。体のどこかがおかしければ休むべきですし、ゆっくりと時間をかけて体を作っていくのが理想です。

カラダづくりに何年もかかっても、クビになることはありませんし。

そのクセによって完走できないというのであれば、見直しをする必要がありますが、もし42.195kmを走れるのであればそのフォームが正しいとも考えられます。フルマラソンを完走できるのに、それを直さなければいけない理由はどこにもありません。

ランニングフォームのクセを直して、少しでも速く走れるようになりたいという考え方も間違っているとは言いません。でも、ランニングフォームを変えると、それが原因で不調になることもあるのだということだけ覚えておいてください。

そのうえでクセを直すか、クセと共存するするかは自分自身で決めましょう。