
ランニングを続けていると、知らず知らずのうちに疲労が溜まり、脚が重くなったりモチベーションが下がったりすることがあります。そんなときに効果的なのが「疲労抜きジョグ(リカバリージョグ)」です。疲労感を残さずに回復を早めるだけでなく、走る習慣をキープできる効果を期待できます。
でも「どれくらいのペースや距離で走ればいいの?」「いつ行うのがベスト?」と迷っている人も多いはず。この記事では、疲労抜きジョグの基本から、効果を最大化するためのペース・距離・頻度まで詳しく解説します。正しい方法を知って、疲れを溜めずに走り続けるためのヒントを見つけてください。
疲労抜きジョグとは?

疲労抜きジョグとは、ランニングで溜まった疲労を回復することを目的に、ゆっくりとしたペースで行うジョギングのことです。通常のトレーニングのように心肺機能や筋力を鍛えるのではなく、あくまで疲れを抜くためにゆっくりペースで行います。
走ることで血流が促進され、筋肉に溜まった疲労物質が効率的に排出されるため、休養だけでは取りきれないだるさや張りを和らげる効果があることが論文などにも記載されています(参考論文)。また、体を軽く動かすことになるため関節や筋肉がほぐれ、ケガの予防につなげることができます。
回復を促すだけで、劇的に回復するというわけではないため、「完全休養」と「疲労抜きジョグ」のどちらがいいかは個人差や体調によります。ただし、身体的回復だけでなくメンタル面の回復も期待できるため、痛みなどがあるのでなければ、疲労抜きジョグを実施することをおすすめします。
疲労抜きジョグに期待できる効果やメリット

疲労抜きジョグには、ただ休むだけでは得られないさまざまな効果があります。代表的なメリットは以下の通りです。
- 筋肉の疲労回復を促進する
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ゆっくりとしたジョグを行うことで血流が活発になり、筋肉にたまった乳酸や老廃物が効率的に排出されます。その結果、脚の重だるさや筋肉痛の回復が早まります。
- 柔軟性の維持・向上
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疲労が溜まっていると筋肉や関節がこわばりやすくなりますが、軽い運動で体を動かすことで柔軟性を保つことができます。これにより、回復期におけるケガの予防にもつながります。
- メンタルリフレッシュ
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完全休養だと「何もしない不安」や罪悪感を感じるランナーも少なくありません。疲労抜きジョグで軽く汗を流すことで「何もしない不安」から解放されるため、気分転換やストレス解消といった効果も期待できます。
- 走る習慣を崩さない
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休む日を増やすと「走るのが面倒になる」ことがあります。疲労抜きジョグはトレーニングを中断せず、毎日走るという習慣を維持できるのも大きなメリットです。
- 月間走行距離を増やせる
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ポイント練習を週2回して、その翌日に5kmほど疲労抜きジョグをするとします。その結果、週2回×4週×5kmとなり、完全休養する場合と比較して、月間走行距離が40kmも増やすことができます。月間走行距離はそのままマラソンのタイムにつながりますので、レースにおけるよりよい結果も期待できます。
疲労抜きジョグの適正ペース

疲労抜きジョグは、その名の通り「疲労を抜くこと」が目的なので、普段のジョグよりもさらにゆっくりしたペースで走るのが基本です。ペースの目安は最大心拍数の60〜70%程度、もしくは「会話しながら走れるくらいの楽なスピード」です。
具体的には、普段キロ6分で走っている人ならキロ7分30秒〜8分程度に落とすくらいが理想です。心拍数で管理する場合は、以下を参考にしてください。
最大心拍数の目安
→「220−年齢」で計算(例:40歳なら180)
→ その60〜70%(例:108〜126bpm)
ポイントは「遅すぎるかな?」と思うくらいのペースに抑えること。息が上がるほど速く走ると、筋肉に余計な負担がかかり、疲労抜きどころか逆に疲れが溜まり、本末転倒になってしまいます。
また、慣れないうちはペースにこだわりすぎず、「呼吸が乱れずリラックスできること」を優先しましょう。ランニングウォッチがある人は、心拍数を目安にするのもおすすめです。
距離と時間の目安

疲労抜きジョグは、あくまで回復が目的なので、長時間走る必要はありません。むしろ、走りすぎると疲労が溜まりやすくなるため注意が必要です。
目安となる距離と時間は以下を参考にしてください。
初心者 | 中級者〜上級者 | フルマラソン練習中 | |
---|---|---|---|
時間 | 20〜30分程度 | 30〜45分程度 | 40〜60分程度 |
距離 | 2〜4km程度 | 4〜6km程度 | 5〜8km程度 |
長く走れば疲労が抜けるわけではないので、「今日は余裕があるな」と感じても走りすぎないことが大切です。目安は「走った後に気持ちが軽くなるくらいの距離」です。
また、疲労感が強いときや睡眠不足のときは、距離をさらに短くしたり、ウォーキングに切り替えたりするのもOKです。体調に合わせて柔軟に調整しましょう。
疲労抜きジョグの頻度とタイミング

疲労抜きジョグを効果的に取り入れるには、走る頻度とタイミングがとても重要です。回復を促すためには、適度な頻度とタイミングで行い、休養とバランスを取ることがポイントです。
- 頻度の目安
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一般的には週1〜2回程度がおすすめです。特に、次のようなタイミングに行うと効果を感じやすいです。
- おすすめのタイミング
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- インターバル走やロング走など、負荷の高い練習をした翌日
- マラソン大会翌日
- 筋肉に張りや疲労感が残っているとき
- 体をほぐしたいと感じたとき
疲労抜きジョグも万能ではなく、自分のコンディションによっては上記のタイミングや頻度でも逆効果になることもあります。走り前に自分のコンディションを確認し、「走ったほうが楽になりそう」と感じるタイミングでじししてください。

疲労抜きジョグで気をつけるポイント

疲労抜きジョグは簡単にできる反面、やり方を間違えると逆効果になることもあります。以下のポイントを意識して、回復を優先しましょう。
ペースを上げすぎない
「今日は軽めに走ろう」と決めても、走り出すとついペースが上がってしまうことがあります。心拍数が上がったり、息が切れたりすると疲労抜きジョグの効果が薄れてしまいますので、終始リラックスできるペースを保ちましょう。
距離を伸ばしすぎない
気持ちよく走れるとついつ距離を伸ばしたくなります。特に月間走行距離を重視している人は、疲労抜きジョグでも普段と同じ距離を走りがちです。疲労をしっかり抜くためには距離を短めに抑え、「少し物足りない」くらいで終えましょう。
痛みを感じたら中止する
筋肉痛程度なら問題ありませんが、膝や足首などに鋭い痛みが感じた場合はすぐに走るのをやめ、休養に切り替えましょう。疲労抜きジョグはケガの治療ではなく、回復を助けるものです。ケガをしているなら、完全休養にして回復を待ちましょう。
ウォームアップとクールダウンを丁寧に
疲労抜きジョグでも急に走り出すのはNGです。最初の1kmくらはウォーキングで体を温め、走り終わった後も少し歩いてや水分補給を行いましょう。リラックスするためにストレッチやセルフマッサージを行うのも効果的です。
体調に合わせて柔軟に調整する
「今日は調子が悪い」と感じたら、無理せずウォーキングにしたり、完全休養を選ぶことも大切です。ランニングにおいて「真面目さ」は強みにもなりますが、弱みになることもあります。頑張ることだけが正解ではないことをしっかり頭に入れておきましょう。
最優先すべきは睡眠
負荷の高いトレーニングやマラソン大会の翌日に疲労抜きジョグをすることで、回復を促すことができますが、リカバリーの本質は「睡眠」にあります。このため絶対にNGなのが「睡眠時間を削って疲労抜きジョグをする」ことです。これは百害あって一利なしで、故障の原因になるだけでなく、自身のパフォーマンスも下げてしまいます。
まずは十分な睡眠時間を確保しつつ、それでも走る時間を確保できるなら疲労抜きジョグを実施してください。

よくある疑問Q&A

- 疲労抜きジョグは意味がないって聞いたけど本当?
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意味がないと言われるのは「走りすぎて疲労が溜まる場合」です。適切なペースと距離を守れば、血流促進や筋肉の回復を助ける効果があります。負荷を抑えてリラックスした状態で走りましょう。
- ウォーキングではダメですか?
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ウォーキングでも十分効果があります。特に疲れが強い日や体調が優れない日は、無理に走らずウォーキングのほうがおすすめです。ポイントは「体を軽く動かして血流を良くすること」です。
- どうしても心拍数が上がってしまうのですが?
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疲れていると心拍数が普段より上がりやすくなります。会話ができる程度の強度を目安にし、息が上がるようならペースを落とすか歩きに切り替えましょう。心拍計を使って最大心拍数の60〜70%を超えないよう調整し、それでも心拍数が上がりすぎる場合はウォーキングに切り替えましょう。
- どれくらいのペースで走ればいいの?
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普段のジョグより1〜2分遅いペースが目安です。例えば普段キロ6分で走るなら、疲労抜きジョグはキロ7分30秒〜8分程度に設定しましょう。走りながら会話ができるくらいの余裕があるスピードが理想です。
最適なペースは個人差があります。上記ペースを参考に、自分にとっての理想のペースを探しましょう。
- 疲労抜きジョグをしたのに疲れが取れません……
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体調や睡眠不足、トレーニングの負荷によっては回復に時間がかかることもあります。疲労抜きジョグは万能なリカバリー方法ではりませんので、無理に続けず完全休養や睡眠、栄養補給を優先するのも大切です。体調に合わせて調整しましょう。
- 毎日やっても大丈夫ですか?
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毎日行うとそれはもう「疲労抜き」ではなくなります。負荷の高いトレーニングと組み合わせて週1〜2回を目安に実施してください。
- フォームは意識したほうがいい?
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疲労抜きジョグでもフォームを意識することは大切です。ただし、ゆっくりペースで走るため、どうしてもフォームがコンパクトになってしまいます。また、過度に姿勢を気にしすぎると疲れてしまうので、「リラックスして自然に走る」ことを心がけましょう。
まとめ|疲労抜きジョグを習慣にして回復力を高めよう
疲労抜きジョグは、ただ休むだけでは取りきれない疲労をリセットし、筋肉の回復や気分転換にもつながる大切なリカバリー方法のひとつです。適切なペース・距離・頻度を守ることで、体への負担を抑えながらコンディションを整えられます。
ポイントは「頑張らないこと」。走力アップを目指すハードな練習と同じくらい、疲労抜きジョグのような回復ランも重要です。無理をせず、自分の体調に合わせて取り入れていくことで、ケガを防ぎながら走る楽しさを長く続けられます。
ぜひ、疲労抜きジョグを日々のランニング習慣に加えて、毎回のトレーニングをもっと充実させてください。