フルマラソンでリタイアを決断することの重要性と心構え

3月になり各地のマラソン大会の気温が20℃を上回るようになって来ました。気温が高い春マラソンの走り方については先日記事にしましたが、鹿児島マラソンであまりにも多くの人々が途中から歩くことになり、そして何台もの救急車が出動しましたので、今回はリタイアの仕方について書いておこうと思います。

「勇気あるリタイア」と言われるように、マラソンでリタイアを決断するのは簡単ではありませんよね。高いお金を払って遠征して、途中でリタイアするのはとても辛いことです。危ないかなと感じても「なんとかなるかも」と思って頑張ってしまいますよね。

日本人は勤勉なところがあり、苦しさに耐えて前に進むことを美徳とする文化があります。すぐに諦めるのを恥ずかしいこととする風潮もあります。でも、フルマラソンにおいては我慢こそ避けるべきことだと考えてください。

トップアスリートなら、もちろん我慢しなくてはいけません。彼らは1番になることが仕事です。命を削って1歩を踏み出しています。走る目的が私たち市民ランナーとは違います。

市民ランナーに求められるのは

1.無事家に帰ること
2.レース翌日も素知らぬ顔で仕事ができること
3.家族に心配をかけないこと

この3点です。

この3点を守った上で、自分の限界を追い求めたり、苦しさの中に身を置くのは自由です。反対にひとつでも守れないような走りはするべきではありません。いや、絶対に避けるべきことだと思ってください。

100歩譲って残り5キロくらいを無理して頑張るならいいと思いますが、そもそもフルマラソンで30キロもいかないうちに苦しかったり辛かったりするのは、すでに自分の限界を超えている状態です。

10〜20km地点のような、早い段階で頑張らなきゃいけないというのは、レースの走り方として決して良い状態とはいえません。

全体の2/3である28キロまでは、基本的には頑張ってはいけません。そこまではオートクルーズのように、流れるように走る必要があります。その手前で歯を食いしばらないと走れないのであれば、リタイアは時間の問題です。

ただ、関門に引っかかってリタイアする。自分の判断でリタイアするというのは、決して恥ずかしいことではありません。それは「また頑張ろう」という糧にすればいいだけですし、周りに迷惑をかけたわけでもありません。

避けべきなのは、コース上で動けなくなること。リタイア後に救護のお世話になることです。

もちろん、急な体調不良というのはあります。お腹が痛くなることもあれば、膝などの関節がロックして動けなくなることもあります。マラソンですので、心不全になることもあります。東京マラソンでは3人のランナーが心不全で倒れました。

このように不可抗力による救護が必要になることはあります。でも、熱中症によって倒れたり動けなくなったり、膝の痛みを無理して走れなくなったりするのは、ランナー自身の問題です。そうなる前に止まって回復をはかるか、自己申請でリタイアを選ぶようにしてください。

ギリギリまで粘ってリタイアするのと、早い段階で見切りをつけてリタイアするのとでは、その後の回復に必要な時間が全く違ってきます。粘り過ぎた結果、熱中症による後遺症が残る可能性もあります。そこまでして走る必要があるのか、普段からしっかりと考えておく必要があります。

その決断が簡単なことではないのは百も承知です。でも、厳しいことを言うなら、その決断ができないのであれば、ランナーはスタートラインに立つべきではありません。

失敗はランナーを成長させてくれます。失敗を認めない気持ちはランナーを弱くします。最初は良くても、いずれ大きなトラブルを招いてしまう可能性があります。

ただ何もマラソンで頑張るなと言っているわけではありません。

・その日の天候などのコンディションを考えてペースを決める
・その日までの体のコンディションを考えてペースを決める
・走り出してからの体調の変化に合わせてスピードを調整する

まずはこの3点を意識してください。「前回キロ○分で走れたから、今日はそれよりも速く」みたいにその日のペースを決める人が多いと思いますが、レースコンディションは生き物のようなもので、前回の走りは参考程度にしかなりません。

前回の走りをベースに、上記の3点を考慮して、その日の走りを決める。そして走りながら調整をしてください。そうすれば、レース中盤までに走れなくなることは回避できるはずです。そこまで余裕を持って走れば、残りの1/3で歯をくいしばるのはありです。

そこまでやったにもかかわらず、どうもいつもと違うと感じて、大幅にスピードを落としても走れそうにないなら、リタイアを選んでください。それがマラソン大会に出るランナーの義務でもあります。

繰り返しになりますが、体調を考慮してリタイアすることは、ほんの少しも恥ずかしいことではありません。練習不足で関門に引っかかることも含め、次の糧にすればいいだけのことです。

マラソン人生はまだまだ長いのですから。引くべきところはきちんと引いて、また新しい気持ちでスタートラインに立つ準備をしてくださいね。

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