日本一早いマラソンレポート「ハルカススカイラン2017」

2年目を向かえたハルカススカイラン。昨年はワールドサーキットのエキシビションでしたが、今年はワールドサーキットに正式に含まれた1年目。ところがこの1年目に思わぬトラブルが発生しました。

コンピュータが計測途中で止まってしまい、上位陣の計測ができなくなるというとても残念な結果になりました。運営側の頑張りによってエリートの部だけは当日中に順位を発表できましたが、一般の部は翌日以降の発表となってしまいました。

ただし、イベントそのものは昨年を上回る盛り上がりと規模で開催され、動線に対するアナウンスが少し弱かったのを除けば、昨年からの改善点を踏まえて、とてもうまく流れたように感じています。

ハルカススカイランはあべのハルカス、1610段、60階300mを駆け上がるレースです。階段垂直マラソンは世界各地で開催されていて、今年はドバイや北京など10ヶ所で開催され、そのひとつとして今年からあべのハルカスが組み込まれました。

ハルカススカイランはトップランナーで8分台で走りきるレースですが、一般ランナーでは15分を切ればそれなりにすごいと言われるレースです。

ただ、順位を気にするのはトップランナーだけです。一般ランナーのライバルは自分自身です。苦しくなっても足を止めない。苦しいからこそ一歩を踏み出す勇気。それを試されるのがハルカススカイランです。

ただひたすら上り続ける競技。単純に考えると、トレイルランナーに向いているレースですが、10分以上も上り続けることはめったにありません。60階のあべのハルカスで、40階を超えた世界は、トレイルランナーであってもほとんど経験のない感覚です。

誰もが自分の限界と向き合っていかなくてはいけない。それがハルカススカイランです。エリートランナーでさえも「もう無理」という壁を乗り越えて、ゴールを目指します。それができるかどうかがハルカススカイランで結果を出せるかどうかのすべてです。

ほとんどのランナーが、60階を駆け上がる10階で苦しさを味わいます、あと50階も残っているという絶望感。でも休んでいては前に進めません。苦しいけれども、そこで諦めない強さを求められます。

これはハルカススカイランだけではありません。フルマラソンの30kmを超えたところで、苦しさに負けるのか、それとも乗り越えて自己ベストを更新できるのか。たった15分程度の競技の中で現れます。自分の強さ、自分の弱さがすべて出てしまうのが階段垂直マラソンです。

そういう意味では、マラソンランナーにも注目してもらいたいレースでもあります。

フルマラソンを走るランナーの中では「階段は苦手」「自分には向いていない」という理由で、参加を見送った人も多いかと思います。でもハルカススカイランは精神力を問われます。走力や筋力も重要ですが大事なのはハートの強さです。

これはタイムだけではわからない、自分だけしか分からない部分です。もし思ったよりもいいタイムで走れたとしても、自分に負けた人たちは満足できないはずです。思い通り走れても、トップランナーを見ると「もっと頑張れたかも」と思ってしまいます。

おそらく今回のレースで、たくさんのランナーが「なぜ自分は10分を切れないのか」という点で、頭を悩ましているでしょう。何度も何度もシミュレーションを行って、10分以下で走れそうなのに、結果的には10分を超えてしまう。

なぜなのか?

この思いが、時間とともに「来年また走ろう」「来年は自分を超えていこう」そういう思いにつながります。そして、その思いがランナーを強くします。

今回走ったランナーの多くが、階段レースのために1年間費やしたら、エリートランナーに肉薄できるのではないかと思ったのではないでしょうか。世界のトップランナーの背中に触れられるのではないかと思ってしまう。それがハルカススカイランの魅力でもあります。

ただ、その世界は近いようでとても遠い。1秒を縮めることの難しさも実際に走っている人は感じています。全力を出し切ったからこそ見える世界の背中と、その背中の遠さ。背中に半歩でも近づくことができるのか、それを追い続けるためにランナーはまた1年間練習を積み重ねます。

おそらくハルカススカイランが5年、10年続いたときには、階段垂直マラソン専門のランナーが出ているかもしれません。昨年に引き続き今回エリートランナーの女子の部で優勝した吉住さんは階段垂直マラソン専門ではありませんが、上り坂では圧倒的な結果を出しています。

 

男性ランナーでも同じような上りだけなら世界の誰にも負けないというランナーが、ハルカススカイランに出てくるようになると、この大会はさらに面白いものになります。

フルマラソンやトレイルランニングで結果を出せなくても、階段垂直マラソンで世界を狙えるというランナーは間違いなくいます。日本人の中でもワールドサーキットのエリートランナーとして参加する人が出てくることを期待しています。

ランニングというと、どうしてもフルマラソンやトレイルランニング、ウルトラマラソンなどに注目されがちですが、階段を駆け上がるというのも、世界に誇れるレースのひとつです。

 

そのレースで世界が驚くような結果を出すには、ハルカススカイランの裾野が広がっていくことが重要になります。まだ2年目ですが、ここからもっと多くのランナーが注目される大会に成長し、日本人ランナーの強さを引き出す大会であって欲しいと願っています。

ただし、このレースの本当の魅力は、スタートラインに立った人でないと、100%の理解をすることは難しいかと思います。少なくとも日本では唯一無二のイベントです。

ただここで世界に誇れる大会となった暁には、ワールドサーキットではなくジャパンサーキットが開催されるようのなっていくのでしょう。日本人向けの階段垂直マラソンがこれから全国各地で開催され、その上位ランナーがワールドサーキットを駆け抜ける。

そんな未来がやってくる。わたしはそれを期待しています。

計測でトラブルが発生したという不運がありましたが、少なくとも国内のランナーにおいては、「来年は自分を超えていこう」と強く思った人も多いはずです。

記録がなかなか出なかったランナーは、走った後に結果が出ないことに対して苛立ったかもしれません。でも運営側は誰1人として手を抜いているわけではありません。みんなが全力だったときに発生するハプニングは避けがありません。

ですので、今回のトラブルをまた行わないために、ハルカススカイランの事務局がどのような対応をするのか、来年以降の楽しみでもあります。

そして、そんなトラブルを吹き飛ばすくらいに楽しいのが、ハルカススカイランです。自分自身への挑戦。これまで苦しいことから目を背けていた人の挑戦。どんな形であれ、ここを駆け上がった経験は、長い人生において決してマイナスにはなりません。

海外では階段垂直マラソンは、あっという間に参加者が埋まってしまうくらいの、注目度が高い大会です。ワールドサーキットのレベルにはなかなか到達するのは大変ですが、ライバルは自分自身です。そのライバルを一歩一歩確実に超えてみませんか。

来年以降のハルカススカイランは、必ず今年以上の大会に成長します。

この大会の参加券がプラチナチケットになる前に、ぜひハルカススカイランに出てみませんか?苦しくても、その苦しみは必ず報われます。ゴールテープを切ったときの充実感。他のマラソン大会にはない魅力がハルカススカイランには詰まっています。

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