
本州最東端、岩手県宮古市で開催される宮古サーモン・ハーフマラソン。昨年のRUNNETでの評価が90点を超えており、口コミを見ると「サンマの塩焼き」とのキーワードがいくつも出てきます。サーモンの大会でサンマとは如何に?サンマだけで90点はいかないだろうと気になることだらけ。
これはもう実際に乗り込むしかないということで、東京から約590km離れた秋の宮古路へと向かいました。そしてそこで待っていたのは、「宮古を走ってくれてありがとう」という言葉。コースのあちこちで送られる声援と拍手。そして2011年3月11日の記憶でした。
肌寒くも大量の汗をかくコンディション

今回はスケジュールの都合もあって宮古までは夜行バスで向かい、大会当日の朝に到着しました。宮古市へは盛岡経由で東京駅から夜行バスが出ており、タイミングによっては片道8,000円台でアクセスできます。夜行バス以外のアクセスとなると盛岡からバスもしくは電車移動になります。
電車はかなり本数が少ないため、盛岡からはバス移動がおすすめです。もちろん車がある場合には車で移動することも可能です。ただ、本州最東端ということもあって、アクセスの難しさがあります。ただ、宝物というのはそういうところに隠されているのもです。

ちなみに、盛岡からの始発バスに乗れば、8時に宮古駅に到着するので、スタート時間に間に合います。突然ですが、満席だと乗ることができないので、事前に予約して座席を確保しておきましょう。バスを予約できない場合、レンタカーを借りるしかありません。
宮古駅でバスを降りたら、とにかく寒い。さすがに東北の11月。地元の人たちはダウンコートを着ていたので5℃くらいだったのかもしれません。そして曇り空ということもあって、ハーフマラソンのスタート会場に移動する時間になっても肌寒さを感じます。

ハーフマラソンは大会会場からシャトルバスが10分毎に出ており、開会式を少し見てからスタート地点の宮古運動公園行きのバスに乗り込みました。この時点で寒かったので長袖インナー+BUFFという服装を選びましたがこれが大失敗。
毎年のように吹く、強い風もなく、走り出したら1kmもしないうちにじんわり汗をかき始めました。これは完全に想定外。Tシャツ1枚で走ればベストコンディションだったのに、過剰に「東北の寒さ」に備えてしまいました。おかげで走り終えたときにはウェアが重く感じるほど汗をかきました。
自然を感じられる宮古路と震災の記憶

宮古駅から大会会場に向かう途中で感じたのが、想像していたよりも立派な街ということです。地方のマラソン大会に行くと「思っていたよりも何もない」ということがよくあるのですが、宮古はその反対。最東端ということで、小さな漁村をイメージしていましたが、建物も道路も新しく、大手コンビニが無数にあります。
そのときから予感はあったのですが、ハーフマラソンのスタート会場に到着して確信しました。いや、思い出したというほうが正しいかもしれません。宮古は2011年3月11日のあの日に、津波によって甚大な被害を受けた場所だということを。

宮古運動公園は湾岸にある運動公園なのですが、そこから海を見ることはできません。巨大なコンクリートの壁が津波の遡上を食い止めるようになっており、その存在感からとてつもない被害があったことが伝わって来ます。同じ被害を起こさせないための壁。
このようなコンクリートの壁は、コース序盤にいくつも見かけました。コンクリートの壁の先には民家があり、門を閉じることでそこで暮らす人たちを守っています。それについてはここで語ることではないので深掘りしませんが、大きな課題を突きつけられたような気持ちになってしまいました。

とはいえ、序盤の海沿いコースは美しく、曇り空だというのがただただもったいない。青空と海と紅葉という風景があれば100点満点でしたが、それは次回以降のお楽しみということで。今回はカメラを持って走りましたが、あまりの美しさに、何度も立ち止まってしまいました。
後半は風景が大きく変わり、今度は住宅地を縫うようにして走ります。急なカーブなども多く、前半とは打って変わってのテクニカルなコースになります。コースそのものは全体的に小さなアップダウンが繰り返され、気づかないうちに体力を削られていきます。
本州最東端で守り続ける人たちの声援

都市マラソンのように途切れない声援というわけではありませんが、スタート直後から何度も「頑張って」の声に力をもらいました。1人ひとりの顔を見て声援を送ってくれるので、疲れてきてペースを落としたくなっても、「恥ずかしいところは見せられない」と踏ん張れるきっかけに。
この大会は駒澤大学、青山学院大学、中央大学の選手がゲストランナーとして参加しています。1週間前に全日本選手権で1〜3位となった大学ですが、もちろんその前に招待は決まっていて、宮古サーモン・ハーフマラソン運営陣の先見の明たるや。

そんなトップレベルの選手がしのぎを削るわけで、それも沿道に出て応援しようという気持ちにさせているのかもしれません。東北はいま、どこでも熊が出没するリスクがあり、家の前に出るのも不安な人だっているはずです。それでも、ずっと声を送り続けてくれました。
途中で「宮古を走ってくれてありがとう」という声援を受けて、目の前が開けたような気持ちになりました。正直なところ、なぜこのような津波のリスクが高いところに、これだけ多くの人が暮らしているのか疑問に感じている部分もありました。

安全な場所に移動すればコンクリートの壁は必要ありません。でも、そういうことではないんだと声援に気付かされました。ここで暮らす人たちは、守り続けるいる人たち。先祖から受け継いだものを守り、次の世代に受け継ぐ。彼らは守り人で、その地を走らせてもらっている。
そう気づいたときに胸に込み上げるものがありましたが、グッと我慢して走り続けました。私には全力を尽くすくらいしかお返しできないけど、とにかくすべてを出し切る。残り3kmくらいから足が思うように動かなくなっていましたが、とにかく耐えて走り続けました。

完走後が宮古サーモン・ハーフマラソンの本番

残り1kmの商店街から沿道の声援が力強いものになり、そこはもう笑顔ではなく必死の表情でしたが、それを見てさらに声援が力強くなる。マラソンは1人で走るものですが、そこには間違いなく一体感がありました。もうそれだけで宮古を好きにならずにいられません。
そしてなんとかフィニッシュしたわけですが、いつもならそこからすぐに後方のランナーの撮影に向かうのですが、宮古サーモン・ハーフマラソンはそういうわけにはいきません。この大会は完走後にメインイベント「サンマの塩焼き・鮭汁・鮭ご飯」が待っています。

コース上のエイドは約5km毎に用意されていますが、基本的には水とスポーツドリンクのみ。1箇所だけ宮古の銘菓が並んでいるエイドがありましたが、ほとんどのランナーがスルーしていきます。なぜなら、空腹でゴールしないともったいないから。
私がゴールした時点で、鮭汁と鮭ご飯には大行列。だからまずはサンマの塩焼きから。贅沢にもサンマの塩焼きを1人1本丸ごと。しかもその場で炭火焼きしてくれます。ハーフマラソンを走った上にお昼時なので、あっという間に平らげてしまいました。

そして、鮭汁と鮭ご飯。こちらもレース後にピッタリ。ちょっと行儀が悪いなと思いながら、「鮭ご飯を鮭汁に入れたら絶品じゃない?」という衝動を止められず、半分食べたところで鮭ご飯を鮭汁にIN。行儀が悪いのでおすすめはしませんが、最高のランチになりました。
問題はお腹を満たしてしまったので海鮮丼とかお寿司のランチを計画してたけど無理だったこと。すぐ近くの宮古市魚菜市場で生牡蠣だけいただきました。記念すべき第40回となる来年は前後泊して宮古のグルメも観光も楽しみたいところです。
マラソンシーズンなので、なかなか選択肢に入れるのが難しいかと思いますが、それでも遠方から参加する価値のある大会でした。RUNNET 評価90点以上は伊達ではありません。ぜひ来年の遠征候補に入れておくことを「強く」お勧めします。
