ランナーにとってランニングシューズは、大切な相棒ではあるものの、その一方で消耗品でもありますよね。シリアスランナーの場合には、2〜3ヶ月に1足の割合で買い替えているかと思います。買い替えは仕方ないことですが、消耗したランニングシューズを捨てるのってストレスになりませんか?
捨てられなくて、履くことのないランニングシューズが玄関に山積みになっている人もいるかと思います。実は近い未来、そういうストレスから開放されるかもしれません。「ランニングシューズを捨てない未来」って聞くと少しワクワクしませんか?ここではそんな未来の話を少し語っていきます。
スポーツブランドに広がるサスティナブルの動き
現在、世界の流れは「環境に優しく生きる」に向かっています。環境対策ができるまで、プロモーションツアーを一時休止すると発表したイギリスのロックバンドが話題になり、16歳の環境活動家が何度もメディアに取り上げられました。
最近、スーパーでは買物袋が有料になっているのも、地球環境を守るための活動の一環になります。プラスチックごみを減らすことで、排出されるCO2の量を減らそうという考えが広まった結果、「買物はエコバッグで」という流れが形成されつつあります。
この流れに乗った形で、数年前からほとんどのスポーツブランドが環境対策を始めています。リサイクル素材を使ったウェアを作ったり、店舗にウェアやシューズの回収ボックスを設置したりと、その方向性は違えど、地球の環境を守るためにメーカーは動き始めています。
これまでは、大量に作って大量に売るというスタンスでやってきたスポーツブランドも、自社の提供するサービスを「サスティナブル(持続可能)」させるために、環境問題に取り組むようになっています。
その中でもアディダスは、とても面白い取り組みを始めています。どのような取り組みなのか、次章で詳しくご紹介していきます。
アディダスが描くランニングシューズを捨てない未来
アディダスが2019年の春に発表した1足のランニングシューズ。日本ではあまり話題になりませんでしたが、それは「なぜそれが必要なのか」が、この時点では誰も理解できなかったからかもしれません。
そのランニングシューズは、たった1つの素材で作られています。アッパーもミッドソールもアウトソールも、すべて同じ素材で作られたランニングシューズ「FUTURECRAFT.LOOP」。こう聞いても、なぜそんなことをするのかわかりませんよね。
実はこのランニングシューズは、使い終わったあと利用者から回収をします。そして回収したシューズは裁断され、様々な工程を経て元の原材料へと戻り、また新しいランニングシューズに生まれ変わります。
そう、「FUTURECRAFT.LOOP」は捨てることなく、次世代に100%リサイクルされる、世界で初めてのランニングシューズだったわけです。
現時点では原材料に戻すときに、100%同じ質の状態にまでできていないということなので、実際に第2世代の「FUTURECRAFT.LOOP」の原材料のうち10%だけが、第1世代から作られたリサイクル素材を使っています。
ただ、数年のうちに技術が確立し、100%リサイクル素材を使ったランニングシューズを作るとアディダスが発表しています。ランニングシューズを捨てる時代からリサイクルする時代へ、大きな一歩を踏み出したわけです。
ランナーだからできる環境対策
現在はまだ、スポーツブランドが様々な取り組みをしているだけで、消費者である私たちがそれに関わることはあまりありません。できることといったら、ランニングウェアをリサイクルするくらいのことですよね。
最近はアディダスのようにランニングシューズの回収をしているお店も増えてきたので、直営店が近くにある人なら、捨てずにリサイクルという取り組みに参加することもできるようになっていますが、それは都会で暮らす1部の人だけですよね。
いずれ、ランニングシューズのリサイクル活動に加わるとして、いまランナーとして地球環境にできることについて、少し考えてみましょう。
- マラソン大会でマイカップを使う
- エコバッグを持って走る
- ウェアは資源ごみではなく回収ボックスを使う
- ゴミ袋を防寒用に使わない
- シャワーを出しっぱなしにしない
他にもあるかと思いますが、この5つについて少し解説していきます。
マラソン大会でマイカップを使う
マラソン大会ではマイカップを使うようにしましょう。すべての大会がマイカップに対応しているわけではありませんので、持っていっても無駄になるかもしれませんが、マイカップが定着すればコップのゴミが激減します。
タイムロスにはなりますので、自己ベスト更新を狙うようなときには使えないかもしれませんが、地球に優しくするための数秒と思って、ぜひマイカップを持って走るようにしましょう。マイカップがあればエイドでコップがなくなっても、給水を受けられるというメリットもあります。
エコバッグを持って走る
普段の練習帰りに、スーパーやコンビニに行くという人も多いかと思います。そういう人はエコバッグを持って走りましょう。エコバッグもコンパクトに収納できるものも多く、ポケットに入れて走っても邪魔になりません。
最近はほとんどのスーパーで買物袋の有料化が進んでおり、コンビニもいずれそうなる可能性があります。エコバックがあればそれだけ節約にもなりますので、ランニングに出かけるときには持って走るように習慣づけておきましょう。
ウェアは資源ごみではなく回収ボックスを使う
衣類を資源ごみで捨てている人もいるかと思いますが、回収された服はリサイクルされるとはいえ、他の国に送られたり、ウェスとして使われたりして、結局はゴミとして捨てられてしまいます。
そうではなく、リサイクル素材として使うための回収ボックスで回収してもらいましょう。アディダスやアシックス(直営店、スーパースポーツゼビオ、スポーツデポ)などでウェアの回収を行っています。
アシックスは回収したウェアをオリンピック選手のウェアに生まれ変わらせるプロジェクトの一環で行っているので期間限定ですが、スポーツブランドの店舗では資源として再利用するための回収を行っていますので、そちらの利用をおすすめします。
ゴミ袋を防寒用に使わない
RUNNING STREET 365でも防寒対策として、大型ごみの袋やアシックスのビニール製防寒着を紹介してきましたが、これも時代の流れを考えるとやめるべきタイミングになってきたように感じます。東京マラソンのスタート地点には無数のビニール袋が捨てられており、見た目も悪くエコでもありません。
防寒着が必要なら、最初から1枚ウェアを重ね着しておきましょう。暑くなったら邪魔になるという人は、ミズノのポーチジャケットがおすすめです。脱いだあとはウエストポーチ型に折り畳めるので、腰に巻いて走ることができます。
スタート地点のゴミ問題はランナー全員で取り組むしかありません。「みんながやっているから自分も」ではなく、少し高い意識を持ってゴミ袋を防寒着として使わないようにしませんか。
シャワーを出しっぱなしにしない
走った後にランステなどでシャワーを浴びることがあるかと思いますが、水も限りある資源です。お湯を沸かすのにも電気やガスが必要ですので、必要以上に出しっぱなしにしないように心がけましょう。
ほんのちょっとのことですが、走っていないければ発生しない資源の消費です。神経質になる必要はありませんが、ほんの少しだけでも地球に優しくするために、こういったムダはなくしていきましょう。
100%リサイクル可能なシューズは2021年から展開
アディダスの100%リサイクル可能なランニングシューズは、残念ながらまだ私たちが入手することはできません。アディダスの発表では2021年から市販されるということですので、それまでは小さなエコを心がけていきましょう。
どのようなシューズになるかはわかりませんが、それに合わせて既存のランニングシューズも、すべて100%リサイクル素材で作るようにするということですので、このような環境に優しいランニングシューズを選ぶというのも、ランナーにできることのひとつです。
いきなり環境問題に取り組むのは難しことですので、まずは自分たちにできることから始めていきましょう。四六時中環境について考えなくてもいいのですが、頭の片隅に置いておき、時々「これは地球に優しいかな?」と自分に問いかけてみてください。
そして、ランナーみんなで協力して、あたり前のように走れるこの環境を次世代につないでいきましょう。