全国各地でマラソン大会が戻ってきており、山陰地方で注目度が高い国宝松江城マラソンも、2022年大会が開催されました。第1回大会が開催されたのが2018年、2019年には2回目が開催され、ここからというときにコロナ禍に入ってしまい事務局のスタッフも忸怩たる思いだったことでしょう。
ただ、このコロナ禍の間にしっかりと準備していることが伝わってくる内容で、約3,000人の参加者は久しぶりのマラソン大会を楽しんでいたように感じます。私も第1回に続き出場しましたので、その内容をレポートします。
午前8時30分曇り空のベストコンディションでスタート
事前の天気予報では、マラソン大会当日の天気は雨。多くの人が神頼みをしたことでしょう。さすが神様が集まる出雲国、前夜に少し雨が降ったようですが、スタートするときには弱い風が吹く程度の曇り空。気温はおそらく12℃くらい。
マラソン大会としては申し分ないコンディションです。寒すぎることなく、それでいて暑くもないので低体温症も脱水症のリスクもありません。程よく体が冷やされるので、多少無理をしてもしっかりと放熱できるので、記録を狙いやすい気温です。
2時間くらい経過したところで、上空に青空が広がりはじめましたが、その時点では太陽は厚い雲の向う側にあるので、空は明るいけど気温が上がる気配はありません。3時間を経過するくらいから、ところどころで太陽が顔を出してきましたが、3時間以上かけて走るランナーには、いい気分転換になったかもしれません。
毎年同じコンディションというわけではありませんが、12月初旬の松江は、すでに雪がちらつく日もあるようで、曇り空なら自己ベスト更新も狙えるコンディションになります。ただ、雨が降ったら苦行になってしまいますが。
コースはフラットで走りやすいけど山場が2ヶ所
国宝松江城マラソンの最大の魅力は、スタート直後の道路が広いことにあります。このため、都市マラソンにありがちなスタート渋滞が起きず、最初の1kmから全体のペースが上がります。松江城を右手に左折したあと、宍道湖大橋を渡るときに多少の渋滞は発生しますが、気にするほどでもありません。
基本的には湖の周りを走ることになるので、コースはベタフラットなのですが、松江から中海に出るときと、中海から松江に戻るときにどうしても小さな峠を越えなくてはいけないので、1〜2kmで30mくらい上ることになります。
ただ、上ったら下ることになるので、ロスはそこまで大きくありません。下りも激坂ではないので走力がない人でも、きっちりと上り分のペースダウンを取り戻せます。ただし、後半の坂は33kmくらいにあるので、走力が残っていればということになりますが。
私はサブ3.5(キロ5分ペース)で走りましたが、そのレベルでも後半の上りを歩いていた人がいたのは、久しぶりのフルマラソンでペース配分ができなかったからかもしれません。しかもスタート直後にスピードを出せるので、簡単にオーバーペースになってしまうので。
逆に言えば、走力が高い選手がサブ3やサブ3.5、自己ベスト更新を狙うにはおすすめの大会です。厚底ランニングシューズの力を最大限に発揮でき、練習をきちんとしていれば思ったよりもあっけなく自己ベスト更新ができてしまうかもしれません。
沿道から地元の人たちの温かい声援が届く
松江は島根県の県庁所在地ですが、人口がそこまで多いわけではありません。このため、東京マラソンや大阪マラソンのような途切れない応援というのは期待できません。むしろ、沿道に出てきている人数は少なく、賑やかなマラソン大会が好きな人は、満足できないかもしれません。
でも、家族みんなで沿道に出て、知り合い以外のランナーにも一生懸命声援を送ってくれたり、手拍子で盛り上げようとしたりと、しっかりとランナーの背中を支えてくれます。エイドでもみんな優しく、マラソン大会というお祭りを心から楽しんでいることがわかります。
マラソン大会というのはランナーだけのものでなく、それを支える人や応援する人のものでもあるということを思い出させてくる温かさ。そして、今回はエリック・ワイナイナさんと加納由理さんがゲストランナーで、2人ともフルマラソンを走りながらランナーをサポートしてくれます。
残念ながら加納由理さんには会うことがありませんでしたが、エリック・ワイナイナさんは周りのランナー全員に声をかけたり、肩を叩いたりして、ランナーのモチベーションを高めてくれます。それもペースをあえて抑えているので、抜かれた人も一生懸命ついていこうとしたり。
一体感がある大会というのが、実際に走ってみて感じたことです。決してランナーが孤立することなく、みんなでゴールを目指している一体感。みんなで大会を成功させようという一体感。「走りに来てくれてありがとう」という声を何度も耳にしましたが、神の国のホスピタリティは想像以上に心地いいものです。
残り1kmが3回もある表示など課題もあり
満足度がかなり高い国宝松江城マラソンでしたが、コロナ禍での開催ということもあり、エイドのフードは松江らしさがなく、ゼリーやバナナ、パンなどが中心。個包装されていないといけないので仕方ありませんが、出雲蕎麦とかあると面白いのですが、それは世の中が落ち着いたらきっと実現するはず。
コースに地元の食べ物がない代わりに、マラソン会場では地元ならではのグルメが充実しているので、美味しいものは帰ってきてからの楽しみということなのでしょう。個人的には出雲ねぎのねぎ焼きが最高でした。事情があってビールを飲めなかったのが悔しい……
あとは、距離表示が5kmの計測ごとだったのですが、1kmごとのほうがランナーには親切。もっとも、それだけスタッフを用意しなくてはいけないので、今回は現実的ではなかったのかもしれません。困ったのは、手持ちで距離表示していたスタッフの距離が間違っていたこと。
残り3.4km(3.6kmだったかもしれません)の表示は明らかに残り3.4kmではありませんでしたし、残り1kmの手持ち表示が2回あって、そのあと正式な残り1kmが出てきて、これは心が折れるかと思いました。サブ3.5ギリギリのペースで走っていたので。
これも1kmごとの表示にすればなくなることなので、やっぱり1kmごとの表示があると嬉しいですね。必須ではありませんけど。逆に言えばそれくらいしか課題もなく、後になれば笑い話になる程度なので、あまり気にしなくてもいいかもしれません。
地元グルメも観光スポットも多い旅ランにおすすめ
松江というと東日本のランナーにとっては遠い場所に感じるかもしれませんが、JALもANAも使えますし、サンライズ出雲や夜行バスを使えば、寝ている間に現地入りできます。思った以上にアクセスしやすく、それでいて魅力がたっぷりの街です。
松江城は江戸時代からの姿がそのまま残っており、戦争での空爆被害がほとんどなかったので古い町並みがそのまま残っています。それでいて、出雲大社もすぐ近くにあって、ちょっと足を伸ばせば大山の紅葉を楽しめます。
そして何よりも地酒の種類が多く、それにあう日本海の魚介類も豊富。国宝松江城マラソンの時期ならカニも楽しめます。カニ鍋と日本酒なんてあったら、マラソンどころではなくなりそうですが、隠れた名店が無数にあります。
出雲蕎麦や和菓子といった、歴史をつないできたグルメもありますし、由緒ある寺院も豊富。こんなに旅ランとして最適な場所はそう多くありません。もちろん、コースは走りやすくて初マラソンにも、自己ベスト更新を狙うにもおすすめ。
今回は天候の都合で見れませんでしたが、宍道湖の夕焼けは人生で1度は見たほうがいい美しさ。このように参加しない理由が見つからないほど、充実な時間を過ごせます。エントリーを迷っているなら、ぜひ出場してみてください。後泊も含めて遠征する価値のある大会です。