【短期連載】私たちの東京マラソン2026 Vol.1

日本国内だけでなく世界中のランナーにとって憧れになっている東京マラソン。存在そのものがキラキラしていて、他のどのマラソン大会とも比べることができない唯一無二の存在ですが、スタートラインに立つことが難しいのもあって「自分には縁のない大会」と最初から出場を諦めている方もいますよね。

でも、東京マラソンを走るランナーのほとんどは、インフルエンサーでもなければ芸能人でもなく、どこにでもいる普通のランナー。そこで、RUNNING STREET 365では運良くスタートラインに立てることになった、特別ではない3人の普通のランナーがどのようなモチベーションで東京マラソンと向き合い、東京マラソン2026をどう感じながら走ったのかを短期連載コラムとして紹介していきます。

目次

それぞれにとっての東京マラソン

東京マラソンを走ることは特別。多くのランナーにとって、その想いは共通していますが、それぞれの背景やランニングとの向き合い方などによって、「特別」の意味が異なります。それが人生を賭けた挑戦になる人もいれば、仲間との絆を楽しむためのレースになる人もいます。

38,500名のランナーが38,500の物語があります。ただし、それは壮大な物語ばかりとは限りません。むしろ、多くの参加者にとって楽しみではあるものの、東京マラソンで何かを成し遂げたいと考えているランナーのほうが限られています。

ただ、取り上げられるのはやはり壮大な物語を背負っているランナーだったり、影響力の高いランナーだったりすることがほとんど。ときどき、「そんなすごい人じゃないと東京マラソンは走れないの?」と思ってしまいそうになりますが、もちろんそんなことはありません。

ここでご紹介する3人のランナーは、壮大な物語を背負っているわけでもなければ、特別な存在でもありません。

須藤彩花さんの場合

須藤彩花さんがランニングを始めたのは2024年9月。まだまだ走り始めたばかりのランナーですが、2025年には名古屋ウィメンズマラソン、北海道マラソン、横浜マラソンと3つのフルマラソンを走っています。

自己ベストは横浜マラソンの4時間38分58秒。あと少しでサブ4.5を達成できる走力があり、東京マラソンでは4時間15分を狙って走るとのこと。

ただ、東京マラソンは今回が初めてで、そもそもエントリーしたのも初。初めての東京マラソンエントリーで当選するという強運の持ち主で、当選したときはちょっと驚いたものの、東京マラソンを走ることがいかに難しいことなのかに徐々に気付くことになります。

ちょっと前まで、東京マラソンについて「寒い中、42kmもよく走るなぁ」と思っていたのに、まさか自分が走ることになるなんて想像もしていなかったとのこと。それでも、マラソン大会といえば東京マラソンなので、不安はあるもののしっかり走りたいと伝えてくれました。

前川房子さんの場合

前川房子さんのラン歴は長く、フルマラソンもハーフマラソンもそれぞれ20回以上走っています。東京マラソンも今回で3回目になります。ただ、これまでのマラソン人生は「みんなで走ることを楽しむ」ものであり、タイムにはそれほどこだわりがなかったそうです。

だから普段のトレーニングも休みがち。そんな彼女もランニングイベントに参加したりしているうちに、ちょっとしたきっかけからランニングチームに加入。この1〜2年で、定期的にトレーニングする生活へとシフトし、その矢先に東京マラソン2026に当選となりました。

すでに3回目ということですが、特別なことをしているわけではなく、本当に「幸運」に恵まれての当選。今回も当選しなかったら、ラン仲間と私設エイドをしようと考えていたそうです。

そんな彼女にとっての東京マラソンは「沿道に知人がたくさんいる大会」。ラン仲間だけでなく、走らない知人や職場の同僚など、多くの人が沿道にいて応援してくれるのが楽しいとのこと。今回はそれも楽しみつつも、4時間30分を目指して準備すると気合いが入っています。

重松貴志さんの場合

重松貴志さん(私のことで「さん」を付けるのは恥ずかしくおかしいのですが、体裁としてバランスが悪いのでお許しください)は、今回で2回目の東京マラソンになります。前回走ったのがちょうど10年前の東京マラソン2016です。

万里の長城マラソンの運営とランニングの情報発信をするために、それまで勤めていた会社をやめて、フリーランスになった年でもあります。そのときの感想は「東京マラソンといえども42.195kmであることには変わりない」と少し冷めたものでした。

そして、翌年からは「自分よりも東京マラソンを走りたい人がいるはず」ということで、エントリーすらしておらず、同日開催の別の大会に出場していた時期もあります。ただ、ここ数年はラン仲間が走る大会では沿道で応援をしたり、昨年は取材したりと、東京マラソンを身近に感じつつありました。

2025年の愛媛マラソンで、本気で走るフルマラソンはこれが最後としており、タイムを追わなくなったタイミングでの10年ぶりの東京マラソン。以前とはコースも違っており、ランニングとの向き合い方も変化しているので、前回とは違った楽しさを見つけられるのではないかと期待しています。

目標を持って東京マラソンを走る意味

今回フィーチャーする須藤さんと前川さんに共通しているのは、最近になってランニングを習いはじめたということ。それと東京マラソン当選は関係ありませんが、ランニングに対して前向きで、向上心を持ってスタートラインに立つという共通点があります。

私はすでにタイムを追うことをやめており、その点については2人とは違うのですが、パーソナルトレーニングも行っており、ランニングへの探求心は今も持ち続けています。教える側に立つことで、ランニングを学ぶことの大切さを強く感じており、この連載を通じて、それも合わせて伝えていきたいと考えています。

東京マラソンは誰にでも門戸が開かれている大会です。年齢などによる制限はありますが、「走歴◯年」というような縛りもありません(他のマラソン大会もそうですが)。だから、注目度が高いマラソン大会という理由で、ランニングをしたことがない人もエントリーします。

最近は減ってきましたが、東京マラソン熱が暑かった2010年代の前半は、東京マラソン当選をきっかけに走り始めたというランナーも大勢いました。そういう意味では、東京マラソンはランニング人口の底上げという役割もになっているわけですが、練習不足や走力不足でマラソン大会に挑むランナーも生み出しています。

それも含めて「東京マラソン」なのですが、マラソンは準備のスポーツ。スタートラインに立ったときには、少なくとも出せるタイムの上限が決まります。日々のトレーニングは、この上限を引き上げるためにあり、その過程こそが「マラソン」というスポーツなのです。

上限を引き上げるためにどうするか。須藤さんと前川さんが選んだのが「ランニングを学ぶ」です。須藤さんはパーソナルトレーニング、前川さんはランニングチームという違いはありますが、2人とも「もっと成長したい」という想いがあふれており、東京マラソンもただ楽しむだけでなく、チャレンジの場として捉えているように感じます。

この「チャレンジ」というのが、東京マラソンを楽しいものにするかどうか、大きく影響するのではないかと私は考えています。すぐに手が届きそうな目標ではなく、少し高い目標を立てることで、自分に対する甘さを取り除き、大会当日も気持ちを切らさずに走り切ることができ、完走したときにより高い達成感を得られます。

東京マラソンを走るための壮大な物語はなくても、そこに向けてストーリーにならないような小さな努力も積み重ねていく。それにより、東京マラソンをより特別なものに感じられ、自分にとって忘れられない42.195kmにできる。その積み重ねの前ではタイムや順位は些細なことであり、積み重ね続けるために目標を持つことはとても重要。

彼女たちの話を聞きながら、そんなことを感じました。

自分だけの東京マラソンを綴るためにスタートラインへ

ただ、取材をした時点では東京マラソンまでまだ時間があり、初めて東京マラソンを走る須藤さんにとっては、不安要素もたくさんあります。これまで大きな大会を走っていますが、東京マラソンほどの規模の大会は初めてで、自分のペースで走り出せるのかという不安を抱えています。

須藤さんも前川さんも、レース中のジェルに何を選ぶのか迷っているとのこと。私はこれまで何十回とマラソン大会を走っていますが、1度もジェルを使ったことがないと言ったら驚かれました。私は補給はエイドでするので、それが普通だと思っていたのですが、須藤さんはエイドの給食は食べられないとのこと。

そこだけでも、ランナーごとに考え方や準備することが違います。もちろん、抱えている悩みも。

だから「みんなと違っていい」わけで、どんなランナーも受け入れてくれるのが東京マラソンの魅力でもあります。「自分には縁のない大会」なんて決めつける必要もなく、むしろ強い想いや個性がなくても、準備期間を経て自分だけの東京マラソンを作り上げていくことができます。

RUNNING STREET 365では、特別ではない3人がそれぞれどのようにして自分だけの東京マラソンを綴っていくのか、「私たちの東京マラソン2026」というタイトルでお伝えしていきます。短い期間で不定期ではありますが。続きを楽しみにしていてください。

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