
フルマラソンとは42.195kmという途方もない距離を自分の脚で駆け抜けていくスポーツです。多くのランナーが、まずは完走を目指して競技と向き合い、「まずは5km走れるようになる」ことを目標とし、そこからステップアップして距離を伸ばしていきます。
面白いことにフルマラソンを完走できるようになると「もっとスピードをつけたい」となって、再び5kmに戻ってくることになります。だから5kmは初心者から上級者まで、それぞれのスタイルで楽しめる種目。そんな5kmに特化したレース「Tokyo : Speed : Race」が、東京外苑で開催されました。
「Tokyo : Speed : Race」の目指すところ

「Tokyo : Speed : Race」は、トップアスリートから子どもまで、あらゆる人がそれぞれの楽しみ方で参加し、走ることで得られる充実感や喜びを体験していただきたい、という思いで企画されたレースイベントです。
メインとなるレースは5kmですが、1.3kmのファミリーランやU15レース、ハーフマラソンリレーなども開催されるので、家族で参加できるGWのランニングイベントとして、早くも注目されつつあります。
会場は明治神宮外苑で、一般的なレースと違うところがあるとすれば、最終種目として日本記録更新を狙うエリートレースが開催されるという点にあります。一般的なマラソン大会の場合、初心者もトップアスリートも同時にスタートします。

そこがマラソンの魅力ではありますが、「Tokyo : Speed : Race」は限られたスペースでの開催となるため、安全面も考慮して一般の部の5kmも走力に合わせて3組に組み分けされています。そしてエリートはその3組とは別に開催されるので、自分のレースを終えたあとに、日本のトップレベルの走りを見ることができます。
実際に今回はエリート女子で、男女混合5kmの日本記録が誕生しました。
また、この大会は東京マラソンとも繋がりがあるため、東京マラソンと同じように「応援する楽しみ」を大切にしているのも、エリート部門が用意されている理由のひとつとなります。ちなみに、「Tokyo : Speed : Race」の参加者の中から抽選で10名に、東京マラソン2027の出走権が当たる抽選会も実施されました。
これ以上ないコンディションで開催

RUNNING STREET 365スタッフは現地で取材してきたのですが、スケジュールの関係で途中から会場入りになりました。そもそも日本にいなかってので後になって知りましたが、「Tokyo : Speed : Race」の当日の天候がかなり荒れていたのだとか(午前中は小田急線が止まっていたとか)。
もしかしたら、人によっては参加を見合わせたかもしれませんが、私が会場に到着した17時前後は、多少の湿度の高さはありましたが、GWにありがちな、肌が焼けるような暑さでもなく、5kmを走るのに適したコンディションとなっていました。
フルマラソンは気温が10℃くらいが理想とされていますが、5kmはスタートから心拍数を上げて、フルスロットルで駆け出すので、気温はむしろ高いくらいがちょうど。実際に日本新記録が出たことからも、いかに走りやすいコンディションであったかがよくわかります。

さらにコースはほぼフラット。コース上にペーシングライト「WaveLight」が設置されており、選手はそのライトに合わせて走ることで、目標とするレースペースを維持できます。最高のコンディションだけでなく、テクノロジーでも選手をサポートしているのが「Tokyo : Speed : Race」の面白いところです。
誰でも参加できるイベントですが、タイトルに「Speed」とあるように、あくまでもスピードにこだわることを軸としている大会です。明確な方向性を示しているので、会場に集まった参加者がみんな、同じベクトルになっていたのも他の大会と違うポイントのひとつです。
ただ、走り終えたらのんびり過ごせるように、フードエリアも用意されていました。シリアスでありながらも、お堅くならない。フェスのような雰囲気と真剣さが入り混じっているのも、このイベントの魅力。
走っているときの真剣な表情と、走り終えてビールを買うために列に並んでいる表情のギャップ。「Tokyo : Speed : Race」だからこそ見られた光景のひとつです。
速さの追求こそがランニングの本質

走り始めた頃は、5km走れただけでも嬉しかったのに、いつの間にか10kmやハーフマラソンを経験し、あっという間にフルマラソンすら完走するようになる。それに飽き足らず、今度は「もっと速く走れるようになりたい」となります。
それは人間の本能なのではないかと私は考えています。私たちの祖先は、獰猛な動物から走って逃げ切り、走って獲物を捕まえてきた人たちで、人間には「走ることは生きること」というDNAが引き継がれています。そして、速ければ速いほど生き残れる可能性が高くなる。
昆虫が明るいところへ寄っていくように、ランナーは速さを求めてしまう。ただ、フルマラソンのような長い距離でスピードを追求すると走りきれないため、自分を制御することになります。それゆえに、走りきったときの達成感はあっても、どこか物足りなさを感じてしまうのでしょう。

そういう意味で、5kmがメイン種目となる「Tokyo : Speed : Race」は、ランナーのスピード欲を満たしてくれるランニングイベントともいえます。体内の糖エネルギーが枯渇する心配もなく、乳酸が溜まって足が使い物にならなくなる心配もありません。
「Tokyo : Speed : Race」のフィニッシュラインを超えたランナーにとって大切なのは、心臓が飛び出しそうなくらい追い込んだという事実。ランニングウォッチに刻まれたタイムではありません。そして「もっとできたかも」という想い。ランニングにおける楽しさの本質はそこにあります。
多くの達成感や高揚感を得られるけど、そこには必ず悔しさも伴うから、息が整った頃には「もっと練習しなくては」となって、日々のトレーニングのモチベーションが上がっていく。「Tokyo : Speed : Race」ではそんなポジティブなスパイラルが生まれているようでした。

GWに東京遠征する価値があるイベント

「Tokyo : Speed : Race」は昨年もGWに開催されており、おそらくこれからもGWに開催されるランニングイベントとなっていくのでしょう。なぜ、この時期に開催すると決めたのかはわかりませんが、GWでホテル代が高いことを除けば、地方のランナーにとって参加しやすい大会です。
ただ「たった5kmのために遠征するのはもったいない」と考えて、申し込みをやめてしまった方もいるかと思います。でも、断言しますが「Tokyo : Speed : Race」は、遠征してでも参加する価値があるランニングイベントです。
自分自身が限界に挑戦できるだけでなく、日本のトップアスリートの走りを目の前で見ることができます。ゴール前で待っていれば、日本記録誕生の瞬間に立ち会える可能性だってあります。また、人気のインフルエンサーや高橋尚子さんや有森裕子さんといったレジェンドにも会えます(運が良ければコミュニケーションを取ることも)。

さらに会場はマラソン大会とは違って、音楽が流れていたりして、まるでフェスのような環境で、美味しいグルメも楽しめます。それでいて、5kmだから疲労もそこまで溜まらないので、翌日も観光を楽しめてしまいます。
関東圏のランナーも、遠くに遠征しなくても、まるっと1日楽しめます。ラン仲間とリレーに参加するのもいいですし、ストイックに自己ベスト更新を狙うのもいいでしょう。日本中のランナーが自分のスタイルでGWに楽しめる。それが「Tokyo : Speed : Race」です。
マラソンといえばどうしてもフルマラソンばかり注目してしまいますが、5kmには5kmにしかない魅力や楽しさがあります。最近スピードが足りてないなと感じる人や、もっと自分を追い込んでみたいと感じているランナーは、次回の「Tokyo : Speed : Race」に参加してみてはいかがでしょう。
