
「Suunto Race 3S」は、まだそのポテンシャルの半分も発揮できていない。これが「Suunto Race 3S」を使用してみた率直な感想です。最大の魅力はAIコーチ「Suunto AI Coach」に対応したことですが、役立つシーンがある一方で、まだ未完成に感じるシーンもありました。
また、「Race Planner」機能がまだ搭載されていないため、現状では入門モデルの「Suunto Run 2」のほうが魅力的なランニングウォッチになっています。ただ、予想でしかありませんが「Race Planner」機能が搭載されれば、その評価は逆転するはずです。
なぜそう感じたのか、現状の「Suunto Race 3S」をレースやトレーニングで使ってわかったことを、詳しくレビューしていきます。
軽量コンパクトで女性ランナーでも使える「Suunto Race 3S」

まずは「Suunto Race 3S」のファーストインプレッションから。
「Suunto Race 3S」はバンド付きの重さが約56gということで、約53gの入門モデル「Suunto Run 2」とそれほど重さが変わりません。最近は軽量なランニングウォッチが増えているので、圧倒的な軽さというわけではありませんが、比較的小柄な私でも重さによるストレスを感じることはありませんでした。
フィット感はかなり高いものの、少し前にSamsung「Galaxy Watch9」を使ったこともあって、あの吸い付くようなフィット感を知ってしまうと、どこか物足りなく感じている自分がいます。

ただ、走っているときに揺れるようなことはありませんし、ケースとの接触面に煩わしさを感じることもありません。
ディスプレイ表示もシンプルで鮮明。こちらは2,000nitということで、最近増えつつある3,000nit対応モデルではないことは残念に感じるものの、実用上はほんの少しも困ることはありません。直射日光下でもはっきり読み取れるので、むしろ満足しています。
ウォッチデザインもUIもシンプルで、ムダを削ぎ落としている点も気に入っています。ムダを削ぎ落としているから、どのようなファッションにも合いますし、遊び心のあるバンドに交換することで、ファッションアイテムとしても使えるのがおすすめポイントです。
コンパクトサイズなので、手首が細い女性ランナーでも使いやすいのが「Suunto Race 3S」の魅力。コンパクトということは、ディスプレイが小さくなるわけですが、それによって視認性が落ちると感じることは1度もありませんでした。
専属コーチのように頼りになる「Suunto AI Coach」だけど……

最近はAIに悩みや課題を相談する人が増えてきましたが、そういう人にとって「Suunto AI Coach」は、この機能だけのために「Suunto Race 3S」を購入してもいいのではないかと思うほど、頼りになる存在でした。
すでにChatGPTなどにトレーニングメニューについて相談している人もいるかと思いますが、「Suunto AI Coach」はそれを、より高い精度で行ってくれます。
同じようなことをChatGPTなどでもできますが、精度の高い提案をしてもらうためには、自分の現在の情報を伝えなくてはいけません。睡眠時間がどれくらいあるとか、疲労がどれくらい溜まっているかとか。

でも「Suunto AI Coach」には、「Suunto Race 3S」がそれらの情報を計測して把握している前提で相談できます。
私の場合は、トレーニングメニューは自分で立てたいタイプですが、たとえば1kmのタイムトライアルをしようとしたときに、「どれくらいのペースで走れる?」と質問したところ、「疲労が溜まっているからやめておきなさい」と注意されました。
同じ回答をChatGPTにしてもらうには、かなり多くの情報を事前に用意しなくてはいけませんが、「Suunto AI Coach」は何も必要ありません。トレーニングの目的や希望を伝えるだけで、目的に合わせたワークアウトを作成してくれます。

ただ、ひとつ気になったことがあります。「Suunto AI Coach」にランニングコースを作ってもらい、ターンバイターンでガイドしてもらおうと思ったら、何度試しても曲がり角でのガイドがありません。スマホでルートを作るとガイドされるので、ターンバイターン機能そのものは使えています。
コースアウトしたときには、きちんとアナウンスしてくれますが、地図を表示させながらでないとルートを辿れないので現時点ではちょっと不便に感じます。ただ、SUUNTOに確認したところ、対応時期は未定ですが今後のアップデートで対応される見込みとのことですので、AIコーチの進化を待ちましょう。
「Race Planner」機能の実装が待ち遠しい

「Suunto Race 3S」はポテンシャルを発揮できていないとお伝えしましたが、その理由のひとつとして挙げた「Race Planner」についても触れておきましょう。
「Race Planner」はルート、天候、レース目標などをもとに、ユーザーに合わせたペースプランを作成し、レース中のリアルタイムなペース管理をサポートする機能です。
「Suunto Run 2」には、走りながらマラソンの完走タイムを予想してくれる「Marathon Time」がありましたが、「Race Planner」はその上位互換機能だと予想しています。
いずれもリアルタイムにペース管理ができますが、「Race Planner」は当日のコンディションなども含めて提案してくれるので、より高い精度でレースの伴走をしてくれます。これにより、オーバーペースによる失速を防ぎやすくなるだけでなく、自己ベストも更新しやすくなります。
それゆえに「Race Planner」をまだ使えないというのは残念。しかも現在の運動負荷と残りの余力の目安をリアルタイムで確認できる「EnergySense」も、ボタンを数回押さないと表示できません。「Suunto Run 2」と比べて、操作性も少し弱いかなというのが実感です。
ただ、それらは「Race Planner」を搭載することですべて解決する可能性があります。11月下旬のアップデートで実装予定ということで、搭載されれば「Suunto Race 3S」が唯一無二のランニングウォッチになります。もちろん、使ってみないとわかりませんが、「Race Planner」にはかなり期待しています。
「Suunto Race 3S」をハーフマラソンで使ってみた

「Race Planner」は搭載されていないものの、計測精度に優れており、ランニングウォッチとしては現状でもクオリティの高さを感じます。実際に「啄木の里ふれあいマラソン」と「天童ラ・フランスマラソン」の2つの大会で使ってみましたが、ペースも心拍数も体感と大きな差がありませんでした。
いずれも、撮影のため途中で何度か足を止めましたが、きちんと追従してくれています。また、「啄木の里ふれあいマラソン」では、心拍ベルトを使って「ZoneSense」でリアルタイムの運動強度を確認しながら走ってみました。

序盤はVO2maxの領域に入らないように注意しつつ、途中でシューズのテストのためにあえてVO2maxの領域で走り続けたりしました。こういう実験的なことができるのも「Suunto Race 3S」の魅力のひとつです。
ただ、「ZoneSense」は「Suunto Run 2」でも使えます。正直なところ「Suunto Run 2」が優秀すぎて、「Suunto Race 3S」の魅力がどうしても霞んでしまうところが多々あります。オフラインマップもどちらも使えますし、計測精度も変わりません。
「Suunto Race 3S」のほうがバッテリーの持ちがいいので、遠征前に充電しておけば充電器を遠征先に持っていかなくてもいいというメリットはあります。「Suunto Run 2」でも24時間稼働できるのでロングバッテリーではありますが、38時間も稼働できるとなると「絶対に大丈夫」という安心感があります。
逆にいえば、レースやトレーニングで使う上での「Suunto Race 3S」の優位性はそれくらいです。

「Suunto Race 3S」はアップデートに期待

「Suunto Race 3S」を例えるなら、初期装備の勇者といったところでしょうか。ポテンシャルもステータスも高いのに、それを活かすための武器を持っていない状態にあります。
「Suunto AI Coach」に対応していますが、それも「期間限定で先行無料利用できる」というだけのことで、いずれ他の機種も対応するはずですので、「Suunto Race 3S」だけの強みではありません。
その「Suunto AI Coach」も、私が使ってみた範囲だけでも、ルート作成時にターンバイターンに対応ししておらず、まだ未完成の状態のように感じました。おそらく他にも、「惜しい!」となるようなところがあるはずです。
ただ、それらの評価はアップデートによって簡単に覆ります。「Race Planner」機能が搭載されれば、それだけで「Suunto Race 3S」を選ぶ理由になる可能性があります。AIコーチも進化していくはずですので、いずれもっと信頼できるパーソナルコーチになってくれます。
もっとも個人的には38時間稼働というのが魅力的で、「Race Planner」機能が11月下旬に搭載される予定であることを考えると、おすすめは「Suunto Race 3S」です。反対に、初心者にどちらがいいか質問されたら「Suunto Run 2」と答えます。
それくらい「Suunto Run 2」は優れており、現時点では隙のないランニングウォッチになっています。でも、やっぱり「Race Planner」の搭載と「Suunto AI Coach」の進化に期待しているわけです。だから自分用として選ぶなら「Suunto Race 3S」かなと。
